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第8部 晴れた空の下手を繋いで…

STAGE.3ー18 魔人たる者達の父

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「あ、みんな戻って来…」
『子供増えましたね…』
「あーう??」
ニトが戻って来たトイたちを出迎えようし増えている事に固まり、タイタンが冷静に感想を言い遊ばせていたヒヨコやおりがみの子達や、クラークラックと治療した小動物もわらわら集まってくる。
「なんだここは」
「うん?」
「うー?」
「きゃはは!」
「この赤ちゃんどうして転がっているの?」
「抱き上げようとしたら動いて抱っこ出来ない…」
「風魔法は勝手に魔力を増幅させたぞ」
「ええーでもすごい土だらけだけど、お風呂入れてあげないと」
「カルンと孤児院の赤ちゃんは静かだけど、元気な赤ちゃんも可愛いね!」
「魔人だからなのか?」
「で、こいつらどうする?」
「あ、ホテルに戻ります。転移しますね」
「ああ」
転移をしても驚かないウォルソガが両脇に抱えたまま、ニト達に任せた。

「ここがホテルか…?異界人は面白い物を作るな」
「はい、えと俺達と同じ部屋で良い?」
「ああ、構わないが…来る」
「え?」
イシュターを連れてホテルに戻った詠斗達、興味深そうにイシュターがホテルを見ていると気配を感じた方を見る。
「転移に干渉しているぞ!」
「なんかくにゃくにゃしてる」
「良かった無事着いた!」
「うぷ…酔ったかも…」
「トイーだいじょうぶー?」
「きゃはは!!」
「みんなどうしたんですか?え?増えた?」
「うん?」
「う?」
転移で戻ったベルン達が床に倒れ込んだので綴と崇幸が慌てて駆けよれば、子供が3人と男が1人増えていた。
「おーいグリ、魔人が増えたぞー」
「………??魔人…」
ゴーシュが他人事のように見ているグローリーは首を傾げ、イザラも首を傾げた。
「えーとまずは風呂かな?」
「ですね…」
「他のお客様もいますし、《アタラクシア号》に…転移大丈夫ですかね?」
「微妙だな…この赤子が魔力操作しているから…グリの転移ならいけるかもな」
土塗れの床に転がる赤ん坊を綴が抱き上げようとすると、ジタバタと暴れ転がる。
「グリー《アタラクシア号》に転移してくれー」
「分かった…」
「おとたん!」
「ぱぱー」
「アンタの息子か?」
「……違う…」
ウォルゾガがグローリーの無機質な瞳を見つめ、グローリーがピクリと反応して首を振る、子供を地面に降ろすとグローリーの長い足にしがみついて離れない。
「おとたん」
「ぱぱ」
「離して…」
「……ふえた?」
「イザラ…動けない…」
グローリーが隣で首を傾げるイザラに助けを求める、イザラが2人の首根っ子を掴んで剥がすとパタパタ手足を動かしグローリーを求めている。
「ありがとう…優しくして」
「…………」
返事はしないがグローリーに2人を無言で渡す、受け取り抱っこされて嬉しそうにしている2人にグローリーは全く表情に出ないがとても困っていた。
「神々から電話だ……ああ…何で笑っている?そうか…それは…ああ、そうか分かった。イシュターにもだな、分かった」
子供2人に抱きつかれ途方に暮れた無表情でいるグローリーに、大河が神々の伝言を気の毒そうに伝える。
「グリ…イザラ、良いか悪いかはお前達次第の話しだ。神々からこれから出現する魔人は全て幼く、お前を父親だと認識するそうだ。コイツらもどうして3人でいたのかは分からんが兄弟ではないらしい、これから出現する魔人は全てお前の近くに現れるとの事だ」
『え?』
「神々からは育てるか側に置いて様子を見て欲しいとの事だ、追って養育費等は検討するらしいぞ」
「よういくひ………」
「おとたん!」
「ぱぱ」
「俺も父さんと呼ぼ」
グローリーが呆然としている、イザラはどさくさに紛れ自分もグローリーの事を父と呼ぶ事に決める、おそらく本能と言うものなのだろう。
「それと、イザラはこれから出現する全ての魔人達の兄…長男だな。弟達を頼むと神々からだ」
「兄?」
「うん?」
「うー」
「…………………」
グローリーとイザラ互いに顔を見合せ、何でこうなったと目線で訴え同時に目を反らした。
「後、そっちの赤ん坊はまだ魔人か聖者か決まってないようだから出来ればベルン達に預けて欲しいそうだ」
「いいですよー」
「いいよぉ」
「いいだろう」
転がる赤ん坊を漸く綴が掴まえ抱き上げる、ベルン、カタン、ラピスが笑顔で受け入れた。
「こっちもみんないるしね、よろしく。赤ちゃん」
「きゃは」
舵がニコニコ笑う赤ちゃんの頭を撫でればはしゃいでいる、バタバタしているがなんとか綴の腕の中にいた。
「やー、連れて行けなんて無責任な事言って悪かったなー俺はウォルゾガってしがない旅人だ。アンタが親になってコイツらの面倒見るのなら俺も手伝うよ、コイツらすごいすばっしこいしな。人手はいるだろう?金とか家とかは適当にやるし、長い独り身だから料理や家事は得意だ。家はどこだ?この辺かい?」
「……グローリー…家は龍皇国…」
「あーあそこかー俺はあの国はなー」
「許可する、ゴーシュ」
「ああ、コイツらの家は俺んとこだからいいぞー。二ジェルガに言っとく」
「悪いな、じゃ冒険者ギルドで買い取り行ってくるか」
「私が買い取りましょう」
「ああ…なるほど、じゃこれで。素材になるって昔言われたから売れるか?」
「とんでもない物出しますね、これを加工出来る者は少ないですが私の図鑑に在るので牙2つと鱗2枚と爪3枚で10億ログで如何ですか?」
「はあ?いや、そんなにいらない」
『ラジカ様、こちらにもその素材回して欲しいです。面白いですね』
「分かりました、私は牙があれば良いので牙2つ4億ログで、支払いはしておきますよ」
『ご心配は無用です、風早様お願いします』
『はい、ウォルゾガ様の口座に6億ログ入れました。後程確認して下さい』
「いや、多いって!」
「では、こちらは4億ログですどうぞ確認して下さい」
「いや、俺の身体から出たもんだぞーそんな価値あるか?」
「あーラジカさんもしかしてこれって!すごい!いいなー僕も欲しいー」
ベルのリュックにいるタイタンが鱗と爪を受け取り、そんな大金いらんと慌てるウォルゾガにラジカも4億ログコイン入った袋を渡せば、シアがやって来て眼を輝かせている。
「ほ、ほら、やるよ。素材になるからって取って置いたから」
「わあ、すごいー。これって剣星帝の剣に使われたゲーターダイルラフテスの牙ですよねー」
「まあ、そりゃご存知か。それは俺のじいさんだな」
「あいつは元気か?」
「いや、行方不明だ。親父達は諦めてる…」
「そうか…」
「俺はアンタが生きている方が驚きだな、死んだと聞いたが?」
「ついさっき起きた」
「そうか、色々あるか…グローリーほらこれやるよ」
「……一緒に来てくれるって言ってくれてありがとう」
「ん?いいんだあの子らをけしかけたのは俺だ、あの子ならってなんだかそう思っちまった。無責任な事はしないってのが俺の主義だ。だから受け取れ」
シアに牙や鱗や爪を渡し、真緑の濃すぎる瞳ダークグリーンの髪のウォルゾガが笑って、グローリーが袋を受けとる。
「話しはここまでにして風呂いこ!この子達あらうよ!」
「きゃはは」
「風魔法を3種混ぜ合わせた、カルナラー石はあるか?」
赤ん坊を3種類混ぜた風魔法を使い、綴から離し宙に浮かせイシュターが懐記から受け取ったカルナラー石を砕いて赤ん坊の周辺に浮かせて捲く。
「これで多少魔法干渉は無くなるが、魔力が安定するまでまめにカルナラー石を替えると良い。幼子だが魔力の放出が凄まじい…魔法も1種ならばカルナラー石があってもあちらに支配される、使うなら3種以上だな」
「僕ら今いる魔王だって、他者の魔法を支配出来る存在なんていないけどね」
「おっそろしい赤ん坊だな」
イシュターの説明に千歳とジラが引く、無邪気に笑う赤ん坊も間違い無くれっきとした怪物なのだ。
詠斗が全員を連れて《アタラクシア号》の大浴場へ転移する、そこには知らせを聞いたアルケール、ナイデル、ラヴィトリが待っていた。
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