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23.ガラスの靴は俺の運命を変えて行く
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鐘が鳴り響く中、階段を駆け下りると、近衛騎士たちが追いかけてきた。
先頭には、あの無表情のガルディア団長。
怖えぇよ!
すげえ速いのに、全然表情変えないんだもん。
突然、ガラスの靴の片方が勝手に脱げていく。
そして、靴はくるくると宙を舞い、ガルディアの手にすっぽりと収まった。
なんで勝手に!?
これ、サーラのお母さんの形見なのに!
俺は自らもう片方も脱いで手に持ち、靴を取り返そうとガルディア団長のもとへ走る。
けれど、ガルディア団長はその靴を他の騎士に預け、俺を軽々と抱え上げて肩に担ぐと、馬車へと放り込んだ。
え? 俺を追いかけてたんじゃないの?
他の騎士も、ガルディア団長の行動に呆気にとられてる。
どういうことなんだ!?
もう、意味が分からない!!
俺は、帰路につく馬車の中で頭を抱えていた。
それでも。
久しぶりに会えたフィンのことを思い出すと、心が弾む自分がいたんだ。
なんにも考えずに、ただフィンの瞳だけを見て踊っていた。
あの時間がずっと続いたらよかったのにな。
俺の気持ちは、今の状況に追い付けないよ。
俺は家に着くとすぐ、ドレスを脱ぎ捨て、化粧を落とし、布団に包まりながら現実逃避をし始めた。
そこへ、サーラが静かに入ってくる。
「舞踏会はいかがでしたか?」
そんなこと聞かれても、俺は何て言えばいいのか全くわからなかった。
”今だけは許して”と心の中でサーラに謝りながら、俺は布団から出ることもできずに震えていた。
そんな俺の様子を見たサーラは、ため息をついて出ていってしまった。
サーラ、ごめん。
お前が行ってたら、今頃きっと推しのフィンと婚約者になれてたのに。
俺が代わりになんて出なければ良かった。
なんで、俺のすることはみんな裏目に出ちゃうんだろうな。
それに、ガラスの靴。
片方、お城に置いてきたまんまだ。
どうしよう。
ガルディア団長に土下座したら、返してもらえないかな?
でも。
あの靴は、まるで意志を持ってるみたいに勝手に動いた。
お城から逃げるときも、片方が団長の方へ飛んでいくときも。
あれは、いったいなんだったんだろう。
それに、フィン。
なんで俺と三曲も踊っちゃうんだよ。
そんな失敗するなんて、フィンらしくないよ。
いろんな思いが頭の中で渦巻いていた。
俺にはもうどうしたらいいのか、全然わからない。
それでも、朝が来たら王城へ向かって、どうにかフィルベルト殿下と話ができないかなと考えていた。
男爵家の義息子が王族になんか会えないかもしれないけどさ。
俺にはそれしか思いつかないんだ。
◇◇◇
翌朝早く、ガルディア団長がやってきた。
「このガラスの靴に見覚えはありませんか? この靴がピッタリの方を探しております」
無表情でそういわれると、まるで犯人探しをしている刑事みたいだ。
っていうかさ、俺を探し出して断罪するつもりだったなら、最初からお城で捕まえときゃいいのに。
なんでこんな面倒なことするんだよ。
まるで、「チェネレントの靴」の再現をしてるみたいだ。
いや、でも。
それはおかしいだろ。
フィン、いやフィルベルト殿下の本命はサーラなのに。
なんでサーラじゃなくて昨夜の女装した俺の事を探しに来たんだよ!
女装した俺に一目ぼれをしたとか?
あの時のフィルベルト殿下の優しい声音を思い出して、顔が熱くなる。
いやいや、そんなわけないって!
だって、あれがエリゼオだってフィルベルト殿下は分かってた。
それに、フィンはサーラが好きなはずなんだから!
じゃあ、なんでだ?
まさか、俺がサーラに意地悪して、代わりに舞踏会に出たって勘違いされてるのか!?
フィルベルト殿下は俺を断罪した後で、サーラと無事ゴールインを目指してるとか!?
まだその可能性の方が高い気がしてきた。
でも、俺がそんな意地悪するなんてフィンに思われてたら、それはそれで嫌だな。
もう、俺の頭は色んな思いで大混乱だ。
それに。
もう一つ気になっていたことを、サーラにこっそり聞いてみた。
「ガラスの靴って、その人の足に合わせてサイズが変わるんじゃないのか?」
「両方揃えて履かない限りは、サイズはそのままですのよ」
サーラは俺の耳元でささやいた。
じゃあ、俺がもう片方の靴を持ってきて、サーラに渡せばいいんじゃないか!?
サーラがそれを持ったまま履けば、サーラの足のサイズにぴったりになるはずだ。
そうしたら、サーラはフィンに会えるし、そのまま婚約者にだってなれるかもしれない。
俺はあわててもう片方の靴を取りにいった。
が、その間にサーラはガラスの靴を履いてしまっていて、案の定ゆるゆるだった。
っておい、何で履くんだよ!?
サーラの推しの騎士は、実はフィルベルト殿下で。
そして殿下の本命は、サーラなんだぞ!!
お前は早く殿下と幸せになってくれよ!!
……あ、そっか。
俺、フィルベルト殿下がフィンだったことをサーラに説明していなかったんだ。
サーラからすると、フィンと離れ離れになるなんて嫌だから、さっさと靴を履いて終わりにしようってことなのか。
俺は、昨夜すぐに、サーラに説明しなかったことを後悔した。
こうなったら、俺が王宮に行って、フィンに直接説明するしかない。
俺は覚悟を決めて、ガラスの靴を履いて見せた。
「おお、あなたがあの時の!!」
ガルディア団長の声が、妙に白々しく響く。
なんだ、その心のこもってない台詞。
ほんとにこの人、優秀って噂の団長なのか?
いやいや、今はそれどころじゃないよな。
俺はガルディア団長の後ろをついて行って、馬車に乗り込む。
サーラ、俺頑張るからな!!
俺が馬車の中で気合いを入れていると、突然大きく揺れた。
俺は、思いきり窓枠に頭をぶつける。
その時、頭の奥で誰かの声が響いた。
『んもう、すぐこの王子は囲い込もうとするんだから!!
王宮に行かないと推しルートに行けないけど、王子の好感度が高すぎると、推しと一緒にいられなくなっちゃうじゃない!』
懐かしい。
前世の妹が、ベッドの上でゲームをしていた声だ。
そう、それは確か、恋愛シミュレーションゲーム。
題名は……何だったかな?
妹はあのゲーム、クリアできたんだっけ?
先頭には、あの無表情のガルディア団長。
怖えぇよ!
すげえ速いのに、全然表情変えないんだもん。
突然、ガラスの靴の片方が勝手に脱げていく。
そして、靴はくるくると宙を舞い、ガルディアの手にすっぽりと収まった。
なんで勝手に!?
これ、サーラのお母さんの形見なのに!
俺は自らもう片方も脱いで手に持ち、靴を取り返そうとガルディア団長のもとへ走る。
けれど、ガルディア団長はその靴を他の騎士に預け、俺を軽々と抱え上げて肩に担ぐと、馬車へと放り込んだ。
え? 俺を追いかけてたんじゃないの?
他の騎士も、ガルディア団長の行動に呆気にとられてる。
どういうことなんだ!?
もう、意味が分からない!!
俺は、帰路につく馬車の中で頭を抱えていた。
それでも。
久しぶりに会えたフィンのことを思い出すと、心が弾む自分がいたんだ。
なんにも考えずに、ただフィンの瞳だけを見て踊っていた。
あの時間がずっと続いたらよかったのにな。
俺の気持ちは、今の状況に追い付けないよ。
俺は家に着くとすぐ、ドレスを脱ぎ捨て、化粧を落とし、布団に包まりながら現実逃避をし始めた。
そこへ、サーラが静かに入ってくる。
「舞踏会はいかがでしたか?」
そんなこと聞かれても、俺は何て言えばいいのか全くわからなかった。
”今だけは許して”と心の中でサーラに謝りながら、俺は布団から出ることもできずに震えていた。
そんな俺の様子を見たサーラは、ため息をついて出ていってしまった。
サーラ、ごめん。
お前が行ってたら、今頃きっと推しのフィンと婚約者になれてたのに。
俺が代わりになんて出なければ良かった。
なんで、俺のすることはみんな裏目に出ちゃうんだろうな。
それに、ガラスの靴。
片方、お城に置いてきたまんまだ。
どうしよう。
ガルディア団長に土下座したら、返してもらえないかな?
でも。
あの靴は、まるで意志を持ってるみたいに勝手に動いた。
お城から逃げるときも、片方が団長の方へ飛んでいくときも。
あれは、いったいなんだったんだろう。
それに、フィン。
なんで俺と三曲も踊っちゃうんだよ。
そんな失敗するなんて、フィンらしくないよ。
いろんな思いが頭の中で渦巻いていた。
俺にはもうどうしたらいいのか、全然わからない。
それでも、朝が来たら王城へ向かって、どうにかフィルベルト殿下と話ができないかなと考えていた。
男爵家の義息子が王族になんか会えないかもしれないけどさ。
俺にはそれしか思いつかないんだ。
◇◇◇
翌朝早く、ガルディア団長がやってきた。
「このガラスの靴に見覚えはありませんか? この靴がピッタリの方を探しております」
無表情でそういわれると、まるで犯人探しをしている刑事みたいだ。
っていうかさ、俺を探し出して断罪するつもりだったなら、最初からお城で捕まえときゃいいのに。
なんでこんな面倒なことするんだよ。
まるで、「チェネレントの靴」の再現をしてるみたいだ。
いや、でも。
それはおかしいだろ。
フィン、いやフィルベルト殿下の本命はサーラなのに。
なんでサーラじゃなくて昨夜の女装した俺の事を探しに来たんだよ!
女装した俺に一目ぼれをしたとか?
あの時のフィルベルト殿下の優しい声音を思い出して、顔が熱くなる。
いやいや、そんなわけないって!
だって、あれがエリゼオだってフィルベルト殿下は分かってた。
それに、フィンはサーラが好きなはずなんだから!
じゃあ、なんでだ?
まさか、俺がサーラに意地悪して、代わりに舞踏会に出たって勘違いされてるのか!?
フィルベルト殿下は俺を断罪した後で、サーラと無事ゴールインを目指してるとか!?
まだその可能性の方が高い気がしてきた。
でも、俺がそんな意地悪するなんてフィンに思われてたら、それはそれで嫌だな。
もう、俺の頭は色んな思いで大混乱だ。
それに。
もう一つ気になっていたことを、サーラにこっそり聞いてみた。
「ガラスの靴って、その人の足に合わせてサイズが変わるんじゃないのか?」
「両方揃えて履かない限りは、サイズはそのままですのよ」
サーラは俺の耳元でささやいた。
じゃあ、俺がもう片方の靴を持ってきて、サーラに渡せばいいんじゃないか!?
サーラがそれを持ったまま履けば、サーラの足のサイズにぴったりになるはずだ。
そうしたら、サーラはフィンに会えるし、そのまま婚約者にだってなれるかもしれない。
俺はあわててもう片方の靴を取りにいった。
が、その間にサーラはガラスの靴を履いてしまっていて、案の定ゆるゆるだった。
っておい、何で履くんだよ!?
サーラの推しの騎士は、実はフィルベルト殿下で。
そして殿下の本命は、サーラなんだぞ!!
お前は早く殿下と幸せになってくれよ!!
……あ、そっか。
俺、フィルベルト殿下がフィンだったことをサーラに説明していなかったんだ。
サーラからすると、フィンと離れ離れになるなんて嫌だから、さっさと靴を履いて終わりにしようってことなのか。
俺は、昨夜すぐに、サーラに説明しなかったことを後悔した。
こうなったら、俺が王宮に行って、フィンに直接説明するしかない。
俺は覚悟を決めて、ガラスの靴を履いて見せた。
「おお、あなたがあの時の!!」
ガルディア団長の声が、妙に白々しく響く。
なんだ、その心のこもってない台詞。
ほんとにこの人、優秀って噂の団長なのか?
いやいや、今はそれどころじゃないよな。
俺はガルディア団長の後ろをついて行って、馬車に乗り込む。
サーラ、俺頑張るからな!!
俺が馬車の中で気合いを入れていると、突然大きく揺れた。
俺は、思いきり窓枠に頭をぶつける。
その時、頭の奥で誰かの声が響いた。
『んもう、すぐこの王子は囲い込もうとするんだから!!
王宮に行かないと推しルートに行けないけど、王子の好感度が高すぎると、推しと一緒にいられなくなっちゃうじゃない!』
懐かしい。
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そう、それは確か、恋愛シミュレーションゲーム。
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