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45.愛は最強
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査問会が終わり、俺はまた、あの石でできた牢に逆戻りだった。
牢の中は思ったより綺麗だし、それはありがたいんだけど。
ベッドくらい欲しいよな。
なんて思いながら、壁にもたれて座った。
「お尻、冷たっ!
これ、風邪ひくだろ!」
思わず小声で文句を言ってしまった。
部屋の端っこにあった毛布を見つけて、俺はそれにくるまりながら、これからどうするべきかを考える。
とりあえず、叔父さんに作られたえん罪をどうにかしないと。
前世の妹が、『みんなと協力して乗り越える』って言ってたけど、この状況でどうやって協力するんだ?
『好感度を上げて』とも言ってたから、攻略対象者は関係するんだろうけど。
フィンとガルディア、カリオはまだいい。
もう一人の攻略対象者であるエドアルド卿、つまりサーラのお父さんとは俺、ほとんど会ったことがないんだよなあ。
しかも俺、牢から出られそうにないし、どう考えても不利じゃん!
……フィンだけでも会いたいな。
でも、俺がフィンを操ろうとした疑惑があるなら、面会なんて絶対無理だろうし。
「あーー!!」
難しいこと考えてたら、頭おかしくなりそうだ。
そんなの抜きにしてさ。
「フィンに会いたい!!」
だって、あの夜やっと結ばれそうだったのに襲撃だぞ!?
あと一日、いや一晩だけでも待ってくれたっていいじゃん!
ひどいよ。
フィン、今何してるかな。
俺と会えないからって浮気なんかしたら許さないぞ。
まあ、フィンはしない。うん、絶対しないけど……。
でも! でもさ!!
募りすぎた気持ちを抱えたまま、俺は膝におでこを付けてギュッと目をつぶった。
「うぅーー……フィン、会いたいよ……」
「私もだよ」
やばい。幻聴まで聞こえてきた。
とうとう俺、ここまで来たか。
でも幻聴でもいいか。
このままフィンと会話できるなら、それでさ。
「フィンも俺と会いたいのか? 嬉しいなあ」
「うん。だから、わざわざ会いに来たんだ。ねえ、顔見せて」
うん?
幻聴にしては、妙に声がリアルだし、近くで聞こえるな。
しかも。
会いに来たって言った――?
「え? まさか……?」
俺はガバッと顔を上げた。
目の前には、月明かりの中でニコッと笑うフィンが座り込んでいた。
……嘘。ほんと?
「……フィン? え、本物? 俺が会いたすぎて作った幻じゃなくて……? 触っても消えないよな……?」
「うん。本物だよ。会いたくて来ちゃった」
「フィン? ……フィン! フィンだあ――っ!
会いたかった! 会いたかったよう」
俺、思いっきりフィンに抱きついた。
そしたらフィンは、俺の唇に人差し指を当てた。
「しーっ。魔法でこっそり来たんだから、静かに。見張りの兵に気づかれたら、もう来られなくなる」
え、フィンってそんな魔法も使えたの!?
チート過ぎる。
でも、これ以上騒いでしまって、この棟の扉に立っている見張りの兵に気付かれたら大変だ。
俺は慌てて自分の口を両手で塞いだ。
見張りの兵が、何かをしゃべる声がする。
危ない。もし兵が会話してなかったら、俺の声に気づいてたかも。
ほっと息を吐いた。
それからそっとフィンを見つめる。
月明かりに輝く金の髪、碧い瞳。
そして何より、俺を愛おしそうに見つめる優しい表情。
本物のフィンだ。
その瞬間、涙が滝みたいに溢れて止まらなくなった。
そんな俺にフィンが差し出したのは、俺が刺繍したバラのハンカチだった。
慌ててそれで目を押さえる。
「あったかい……」
フィンの体温が移ったそのハンカチは、ほんのり温かかった。
「エリゼオ、よく頑張ったね。あそこでよく諦めなかった」
「うんっ、だって、フィンと一緒にいたいから。
諦めたら、もう会えなくなっちゃう」
「……そっか。ありがとう。
さて、これからが本番だよ。
この難局を乗り越えないといけない」
「あ、あのさ、その事なんだけど――」
俺、フィンに会えた興奮で色々思い出した。
だからさ、ゲームの情報を「夢のお告げ」ってことにしてフィンに伝えた。
この国の神話、「チェネレントの靴」では、魔法使いが女神としてお告げをしている。
それが俺の身にも起きたってことにしたんだ。
魔法がある世界だもん。ゲームの説明するより、納得してもらえるだろ。
とはいっても、所々しか思い出してないんだけどさ。
ヴィスコンチ伯爵は、おそらく、隣国のスパイと繋がっていること。
その証拠集めにみんなの協力が必要なこと。
ガルディアにはきつい取り調べに堪えて、潔白を訴えてほしいこと。
サーラとカリオにここに来てほしいこと。
フィンに伝えたら、驚いた顔をしてた。
そして、「カリオに会いたい」って言ったら、めちゃくちゃ嫌そうな顔をした。
もう、俺の友達にまでやきもち焼くなんてさ。
どれだけヤキモチ焼きなんだよ。
かわいすぎるでしょ。
「いや、カリオはサーラが気になってるから! 大丈夫だって!」
そうなんだよ。
カリオさ、サーラが気になるみたいで、時々サーラがいないときに、俺からサーラの情報聞き出そうとするんだもん。
あの二人がくっつくのも時間の問題なんじゃないかなって思ってる。
俺がそれを伝えたら、やっと、渋々フィンは頷いてくれたんだ。
でも、帰る前にフィンはとんでもないことを言いだした。
「私と離れてる間に、変なことは考えないで。
私のために身を引こうなんて、絶対に思わないでね。
私は君がいないと生きていけない。
君を排除しようとするこの国なら、私はいらない。
今すぐでも君を連れ出して、二人でどこかへ逃げたい」
俺をぎゅっと抱きしめてきて、声が震えていた。
きっと、俺と同じで、ちょっとでも離れるのが寂しいんだろうな。
わかる。分かるよ。
でもさ。俺はフィンを犯罪者になんかしたくないんだ。
それに、フィンが一生懸命この国のためにしてきたことを無にしたくなんかなかった。
「ばあーーか!
こんなことで諦めんなよ!
俺を好きなら、俺を犯罪者にさせるな!
俺もお前を幸せにするんだからな!」
小声で怒鳴ったら、フィンがなぜか嬉しそうに笑った。
ほんと、俺が何しても喜んでくれるよな。
なんでこんな素敵な人が俺の恋人なのか、未だに謎だよ。
俺もフィンを抱きしめ返して、フィンの体温を堪能した。
そうそう、牢はフィンが魔法で快適にしてくれたんだ。
床はマットレスみたいに柔らかく、空気は温かい。
でも、俺以外には普通の硬くて寒い牢にしか見えない。
ほんと、フィンの魔法がチートすぎる。
俺がいなくなった昨日、俺の危機を感じたフィンは、急に色んな魔法が使えるようになったらしい。
もう、すごすぎだろ。
やっぱ、愛の力って最強なんだな。
牢の中は思ったより綺麗だし、それはありがたいんだけど。
ベッドくらい欲しいよな。
なんて思いながら、壁にもたれて座った。
「お尻、冷たっ!
これ、風邪ひくだろ!」
思わず小声で文句を言ってしまった。
部屋の端っこにあった毛布を見つけて、俺はそれにくるまりながら、これからどうするべきかを考える。
とりあえず、叔父さんに作られたえん罪をどうにかしないと。
前世の妹が、『みんなと協力して乗り越える』って言ってたけど、この状況でどうやって協力するんだ?
『好感度を上げて』とも言ってたから、攻略対象者は関係するんだろうけど。
フィンとガルディア、カリオはまだいい。
もう一人の攻略対象者であるエドアルド卿、つまりサーラのお父さんとは俺、ほとんど会ったことがないんだよなあ。
しかも俺、牢から出られそうにないし、どう考えても不利じゃん!
……フィンだけでも会いたいな。
でも、俺がフィンを操ろうとした疑惑があるなら、面会なんて絶対無理だろうし。
「あーー!!」
難しいこと考えてたら、頭おかしくなりそうだ。
そんなの抜きにしてさ。
「フィンに会いたい!!」
だって、あの夜やっと結ばれそうだったのに襲撃だぞ!?
あと一日、いや一晩だけでも待ってくれたっていいじゃん!
ひどいよ。
フィン、今何してるかな。
俺と会えないからって浮気なんかしたら許さないぞ。
まあ、フィンはしない。うん、絶対しないけど……。
でも! でもさ!!
募りすぎた気持ちを抱えたまま、俺は膝におでこを付けてギュッと目をつぶった。
「うぅーー……フィン、会いたいよ……」
「私もだよ」
やばい。幻聴まで聞こえてきた。
とうとう俺、ここまで来たか。
でも幻聴でもいいか。
このままフィンと会話できるなら、それでさ。
「フィンも俺と会いたいのか? 嬉しいなあ」
「うん。だから、わざわざ会いに来たんだ。ねえ、顔見せて」
うん?
幻聴にしては、妙に声がリアルだし、近くで聞こえるな。
しかも。
会いに来たって言った――?
「え? まさか……?」
俺はガバッと顔を上げた。
目の前には、月明かりの中でニコッと笑うフィンが座り込んでいた。
……嘘。ほんと?
「……フィン? え、本物? 俺が会いたすぎて作った幻じゃなくて……? 触っても消えないよな……?」
「うん。本物だよ。会いたくて来ちゃった」
「フィン? ……フィン! フィンだあ――っ!
会いたかった! 会いたかったよう」
俺、思いっきりフィンに抱きついた。
そしたらフィンは、俺の唇に人差し指を当てた。
「しーっ。魔法でこっそり来たんだから、静かに。見張りの兵に気づかれたら、もう来られなくなる」
え、フィンってそんな魔法も使えたの!?
チート過ぎる。
でも、これ以上騒いでしまって、この棟の扉に立っている見張りの兵に気付かれたら大変だ。
俺は慌てて自分の口を両手で塞いだ。
見張りの兵が、何かをしゃべる声がする。
危ない。もし兵が会話してなかったら、俺の声に気づいてたかも。
ほっと息を吐いた。
それからそっとフィンを見つめる。
月明かりに輝く金の髪、碧い瞳。
そして何より、俺を愛おしそうに見つめる優しい表情。
本物のフィンだ。
その瞬間、涙が滝みたいに溢れて止まらなくなった。
そんな俺にフィンが差し出したのは、俺が刺繍したバラのハンカチだった。
慌ててそれで目を押さえる。
「あったかい……」
フィンの体温が移ったそのハンカチは、ほんのり温かかった。
「エリゼオ、よく頑張ったね。あそこでよく諦めなかった」
「うんっ、だって、フィンと一緒にいたいから。
諦めたら、もう会えなくなっちゃう」
「……そっか。ありがとう。
さて、これからが本番だよ。
この難局を乗り越えないといけない」
「あ、あのさ、その事なんだけど――」
俺、フィンに会えた興奮で色々思い出した。
だからさ、ゲームの情報を「夢のお告げ」ってことにしてフィンに伝えた。
この国の神話、「チェネレントの靴」では、魔法使いが女神としてお告げをしている。
それが俺の身にも起きたってことにしたんだ。
魔法がある世界だもん。ゲームの説明するより、納得してもらえるだろ。
とはいっても、所々しか思い出してないんだけどさ。
ヴィスコンチ伯爵は、おそらく、隣国のスパイと繋がっていること。
その証拠集めにみんなの協力が必要なこと。
ガルディアにはきつい取り調べに堪えて、潔白を訴えてほしいこと。
サーラとカリオにここに来てほしいこと。
フィンに伝えたら、驚いた顔をしてた。
そして、「カリオに会いたい」って言ったら、めちゃくちゃ嫌そうな顔をした。
もう、俺の友達にまでやきもち焼くなんてさ。
どれだけヤキモチ焼きなんだよ。
かわいすぎるでしょ。
「いや、カリオはサーラが気になってるから! 大丈夫だって!」
そうなんだよ。
カリオさ、サーラが気になるみたいで、時々サーラがいないときに、俺からサーラの情報聞き出そうとするんだもん。
あの二人がくっつくのも時間の問題なんじゃないかなって思ってる。
俺がそれを伝えたら、やっと、渋々フィンは頷いてくれたんだ。
でも、帰る前にフィンはとんでもないことを言いだした。
「私と離れてる間に、変なことは考えないで。
私のために身を引こうなんて、絶対に思わないでね。
私は君がいないと生きていけない。
君を排除しようとするこの国なら、私はいらない。
今すぐでも君を連れ出して、二人でどこかへ逃げたい」
俺をぎゅっと抱きしめてきて、声が震えていた。
きっと、俺と同じで、ちょっとでも離れるのが寂しいんだろうな。
わかる。分かるよ。
でもさ。俺はフィンを犯罪者になんかしたくないんだ。
それに、フィンが一生懸命この国のためにしてきたことを無にしたくなんかなかった。
「ばあーーか!
こんなことで諦めんなよ!
俺を好きなら、俺を犯罪者にさせるな!
俺もお前を幸せにするんだからな!」
小声で怒鳴ったら、フィンがなぜか嬉しそうに笑った。
ほんと、俺が何しても喜んでくれるよな。
なんでこんな素敵な人が俺の恋人なのか、未だに謎だよ。
俺もフィンを抱きしめ返して、フィンの体温を堪能した。
そうそう、牢はフィンが魔法で快適にしてくれたんだ。
床はマットレスみたいに柔らかく、空気は温かい。
でも、俺以外には普通の硬くて寒い牢にしか見えない。
ほんと、フィンの魔法がチートすぎる。
俺がいなくなった昨日、俺の危機を感じたフィンは、急に色んな魔法が使えるようになったらしい。
もう、すごすぎだろ。
やっぱ、愛の力って最強なんだな。
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