45 / 64
44.独壇場は続く
しおりを挟む
「ふむ。殿下、このような者を無理にかばう必要はありませんぞ」
叔父の声は、会場の空気を簡単に支配してしまうくらい重かった。
「殿下はこの者に騙されているのです。
こちらをご覧いただきたい」
叔父が取り出したのは、小さな瓶。
あれ……昨日執務室で渡したハンドクリームだよな?
「これは殿下の執務室にあったもの。
文官たちは、エリゼオが殿下にこの品を渡すのを目撃しております。
そしてこれは誰にも開けられぬよう、殿下自らが魔法を施した。
間違いありませんな?」
フィンがうっすら目を細める。
俺は首をかしげた。
だってこれ、本当にただのハンドクリームだ。
義妹のサーラが大喜びしてたから、同じのをフィンにも渡しただけなんだって!
幸福度が上がるって評判の人気商品だよ?
フィンはすごく喜んで、執務室の机の上に置いてた。
いつでも眺められるようにって。
なんで証拠品みたいに扱われてんだよ!
「こちらは我々の手では開けられません。殿下、今ここで開封していただきたい」
叔父さんの声は妙に落ち着いていた。
フィンは叔父さんの意図が分からずに戸惑いつつ、ちらりと俺を見る。
俺は、別になにもやましいことなんてないから、大きく頷いて見せた。
フィンは呪文を唱え、封印を解く。
容器が光った瞬間、周囲が「おおっ!」と声を上げる。
フィンといると魔道具や魔法が身近だったけど、本来この国は魔法なんて身近にないもんな。
その反応は当たり前だよな。
叔父さんは王子からクリームを受け取ってそれを掲げた。
「——ありがとうございます。
こちら、もしエリゼオに悪意がなければ、おそらく何も起きないでありましょう。
しかし、もし殿下を操る目的があったのなら、何かしらの魔法が発動するはずです。
では、どなたかこれを試していただきたい」
周囲にいる人たちはお互いの顔を見合せたまま、誰も手を上げようとしない。
そりゃそうだよな。
「私が塗る」
フィンが前に出て、再びクリームを叔父さんから取り返してた。
ん?
叔父さん、なんか笑ってないか?
「これはエリゼオが私にくれたものだ。誰にも使わせない。
それと、勝手に私物を持ち出した件、後でしっかり話し合おう」
うわーー!
フィン、相変わらず独占欲が強い!
好き!!
フィンがクリームに指を入れようとした、瞬間。
バチッ!
乾いた音とともに、フィンの指先が弾かれた。
「ほう? 今のは何ですかな?」
「それは……」
フィンは自分の指先を見つめ、それから俺を見つめた。
え? なに? 俺、何も知らないよ!!
俺はフィンに向かって、首がちぎれる勢いで横に大きく振って見せた。
「——今の光は、精神魔法を弾いたときの光ではないか。人を操ることも可能な魔法だ」
突然、王が低い声で言った。
エーーーー!! ほんとに俺、知らないんだってば!!
「皆様、お聞きになりましたかな!
このクリームに精神魔法がかけられておりましたぞ!!
危うく殿下が操られるところでしたぞ!
今回は殿下が無意識に弾き飛ばしましたが、もしこれが疲れているときやリラックスしているときならばわかりません。
なにより、クリームに魔法をかけられるなど、隣国のスパイという証ではございませんか?
そして、失礼を承知で言えば。
そのような者に入れ込んでいる殿下にも、私は危惧しております」
叔父さんは、勝利を確信したかのように、声高らかに叫ぶ。
周囲も好き勝手に騒ぎ出した。
そんな中、叔父さんは俺の方を向いてにやりと笑う。
「さあ、エリゼオ。何か弁明はあるかな?」
「全部嘘だっ! 俺は何も知らないし、魔法も使えない! スパイでもない!! 本当に何もやってない!!」
俺は必死に訴えるけれど、周囲の視線は冷たい。
背筋に汗が流れる。
その時だった。
「あの、すみません。発言してもよろしいでしょうか」
控えめな声で手を挙げたのは、フィンの側でずっと記録を取っていた文官だった。
フィンが頷く。
「どうぞ」
「ありがとうございます。
私は、殿下の執務に関わることが比較的多いのですが。
このひと月、殿下の仕事の進みが驚くほど早かったのです。
みていると、そこにいるエリゼオが色々と手伝ってくれているようでした」
会場の空気が揺れる。
「殿下と仕事をするエリゼオは、非常に誠実で。
その時のお二人の信頼は、とても精神魔法などという歪んだ力で作られたものとは思えません。
それに、エリゼオに教わった計算術は画期的で、予算作りが格段に楽になり、国家事業がスムーズに進むようになったのです。
……だからといって、このエリゼオが無罪と言い切るつもりはありませんが、こんな意見もあると知っていただきたく」
胸が熱くなった。
俺、泣きそう。
あのフィンと王宮で過ごした日々、自分にできることを精いっぱいやってきた。
それをちゃんと認めてくれる人がいたなんて。
ありがとう!!
俺はその文官をキラキラとした瞳で見つめてたら、なぜか俺の前にフィンが立った。
ん?
なんでそんな場所に立つんだよ?
お礼を伝えられないだろ?
フィンは文官に向き直り、深く頷いた。
「ありがとう。
君の意見はとても貴重だ。
陛下、このように意見は割れております。
今ここで結論を急がれませぬよう」
陛下も大きく頷いた。
「うむ。では、二週間後に再度開くことにしよう。
それまでに、双方準備を整えておくように。ではこれにて終了だ」
陛下の発言で、木づちが打たれ、査問会は幕を閉じた。
この場で断罪は免れた。
でも状況は圧倒的不利。
けれど、やってないことで捕まるなんて絶対嫌だ!
それに、俺はフィンと一緒にいるって約束したんだ。
ここで頑張らないでどうするんだよ。
俺が気合を入れていると、再び前世の妹の声が脳内に響く。
「何度見ても、このシーン、腹立つわ。何あの伯爵!
でもね、ここからよ。
ここからが大事なんだからね!
今まで積んできた周囲の好感度が、行動範囲に直結するんだから。
さあ、エンディングまであと少しよ!
殿下ルートのほうは、お兄ちゃんに協力頼むね。
私、殿下のヤンデレ発言、聞いてるだけで砂吐きそうになるから。
カリオ様が出てくるシーンだけ私がやるね!」
なんだ。前世の妹、思ってたよりちゃっかりな性格だったんだな。
叔父の声は、会場の空気を簡単に支配してしまうくらい重かった。
「殿下はこの者に騙されているのです。
こちらをご覧いただきたい」
叔父が取り出したのは、小さな瓶。
あれ……昨日執務室で渡したハンドクリームだよな?
「これは殿下の執務室にあったもの。
文官たちは、エリゼオが殿下にこの品を渡すのを目撃しております。
そしてこれは誰にも開けられぬよう、殿下自らが魔法を施した。
間違いありませんな?」
フィンがうっすら目を細める。
俺は首をかしげた。
だってこれ、本当にただのハンドクリームだ。
義妹のサーラが大喜びしてたから、同じのをフィンにも渡しただけなんだって!
幸福度が上がるって評判の人気商品だよ?
フィンはすごく喜んで、執務室の机の上に置いてた。
いつでも眺められるようにって。
なんで証拠品みたいに扱われてんだよ!
「こちらは我々の手では開けられません。殿下、今ここで開封していただきたい」
叔父さんの声は妙に落ち着いていた。
フィンは叔父さんの意図が分からずに戸惑いつつ、ちらりと俺を見る。
俺は、別になにもやましいことなんてないから、大きく頷いて見せた。
フィンは呪文を唱え、封印を解く。
容器が光った瞬間、周囲が「おおっ!」と声を上げる。
フィンといると魔道具や魔法が身近だったけど、本来この国は魔法なんて身近にないもんな。
その反応は当たり前だよな。
叔父さんは王子からクリームを受け取ってそれを掲げた。
「——ありがとうございます。
こちら、もしエリゼオに悪意がなければ、おそらく何も起きないでありましょう。
しかし、もし殿下を操る目的があったのなら、何かしらの魔法が発動するはずです。
では、どなたかこれを試していただきたい」
周囲にいる人たちはお互いの顔を見合せたまま、誰も手を上げようとしない。
そりゃそうだよな。
「私が塗る」
フィンが前に出て、再びクリームを叔父さんから取り返してた。
ん?
叔父さん、なんか笑ってないか?
「これはエリゼオが私にくれたものだ。誰にも使わせない。
それと、勝手に私物を持ち出した件、後でしっかり話し合おう」
うわーー!
フィン、相変わらず独占欲が強い!
好き!!
フィンがクリームに指を入れようとした、瞬間。
バチッ!
乾いた音とともに、フィンの指先が弾かれた。
「ほう? 今のは何ですかな?」
「それは……」
フィンは自分の指先を見つめ、それから俺を見つめた。
え? なに? 俺、何も知らないよ!!
俺はフィンに向かって、首がちぎれる勢いで横に大きく振って見せた。
「——今の光は、精神魔法を弾いたときの光ではないか。人を操ることも可能な魔法だ」
突然、王が低い声で言った。
エーーーー!! ほんとに俺、知らないんだってば!!
「皆様、お聞きになりましたかな!
このクリームに精神魔法がかけられておりましたぞ!!
危うく殿下が操られるところでしたぞ!
今回は殿下が無意識に弾き飛ばしましたが、もしこれが疲れているときやリラックスしているときならばわかりません。
なにより、クリームに魔法をかけられるなど、隣国のスパイという証ではございませんか?
そして、失礼を承知で言えば。
そのような者に入れ込んでいる殿下にも、私は危惧しております」
叔父さんは、勝利を確信したかのように、声高らかに叫ぶ。
周囲も好き勝手に騒ぎ出した。
そんな中、叔父さんは俺の方を向いてにやりと笑う。
「さあ、エリゼオ。何か弁明はあるかな?」
「全部嘘だっ! 俺は何も知らないし、魔法も使えない! スパイでもない!! 本当に何もやってない!!」
俺は必死に訴えるけれど、周囲の視線は冷たい。
背筋に汗が流れる。
その時だった。
「あの、すみません。発言してもよろしいでしょうか」
控えめな声で手を挙げたのは、フィンの側でずっと記録を取っていた文官だった。
フィンが頷く。
「どうぞ」
「ありがとうございます。
私は、殿下の執務に関わることが比較的多いのですが。
このひと月、殿下の仕事の進みが驚くほど早かったのです。
みていると、そこにいるエリゼオが色々と手伝ってくれているようでした」
会場の空気が揺れる。
「殿下と仕事をするエリゼオは、非常に誠実で。
その時のお二人の信頼は、とても精神魔法などという歪んだ力で作られたものとは思えません。
それに、エリゼオに教わった計算術は画期的で、予算作りが格段に楽になり、国家事業がスムーズに進むようになったのです。
……だからといって、このエリゼオが無罪と言い切るつもりはありませんが、こんな意見もあると知っていただきたく」
胸が熱くなった。
俺、泣きそう。
あのフィンと王宮で過ごした日々、自分にできることを精いっぱいやってきた。
それをちゃんと認めてくれる人がいたなんて。
ありがとう!!
俺はその文官をキラキラとした瞳で見つめてたら、なぜか俺の前にフィンが立った。
ん?
なんでそんな場所に立つんだよ?
お礼を伝えられないだろ?
フィンは文官に向き直り、深く頷いた。
「ありがとう。
君の意見はとても貴重だ。
陛下、このように意見は割れております。
今ここで結論を急がれませぬよう」
陛下も大きく頷いた。
「うむ。では、二週間後に再度開くことにしよう。
それまでに、双方準備を整えておくように。ではこれにて終了だ」
陛下の発言で、木づちが打たれ、査問会は幕を閉じた。
この場で断罪は免れた。
でも状況は圧倒的不利。
けれど、やってないことで捕まるなんて絶対嫌だ!
それに、俺はフィンと一緒にいるって約束したんだ。
ここで頑張らないでどうするんだよ。
俺が気合を入れていると、再び前世の妹の声が脳内に響く。
「何度見ても、このシーン、腹立つわ。何あの伯爵!
でもね、ここからよ。
ここからが大事なんだからね!
今まで積んできた周囲の好感度が、行動範囲に直結するんだから。
さあ、エンディングまであと少しよ!
殿下ルートのほうは、お兄ちゃんに協力頼むね。
私、殿下のヤンデレ発言、聞いてるだけで砂吐きそうになるから。
カリオ様が出てくるシーンだけ私がやるね!」
なんだ。前世の妹、思ってたよりちゃっかりな性格だったんだな。
113
あなたにおすすめの小説
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
欠陥Ωは孤独なα令息に愛を捧ぐ あなたと過ごした五年間
華抹茶
BL
旧題:あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。
もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。
だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。
だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。
子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。
アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ
●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。
●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。
●Rシーンには※つけてます。
人間嫌いの公爵様との契約期間が終了したので離婚手続きをしたら夫の執着と溺愛がとんでもないことになりました
荷居人(にいと)
BL
第12回BL大賞奨励賞作品3/2完結。
人間嫌いと言われた公爵様に嫁いで3年。最初こそどうなるかと思ったものの自分としては公爵の妻として努力してきたつもりだ。
男同士でも結婚できる時代とはいえ、その同性愛結婚の先駆けの1人にされた僕。なんてことを言いつつも、嫌々嫁いだわけじゃなくて僕は運良く好きになった人に嫁いだので政略結婚万歳と今でも思っている。
だけど相手は人嫌いの公爵様。初夜なんて必要なことを一方的に話されただけで、翌日にどころかその日にお仕事に行ってしまうような人だ。だから使用人にも舐められるし、割と肩身は狭かった。
いくら惚れた相手と結婚できてもこれが毎日では参ってしまう。だから自分から少しでも過ごしやすい日々を送るためにそんな夫に提案したのだ。
三年間白い結婚を続けたら必ず離婚するから、三年間仕事でどうしても時間が取れない日を除いて毎日公爵様と関わる時間がほしいと。
どんなに人嫌いでも約束は守ってくれる人だと知っていたからできた提案だ。この契約のおかげで毎日辛くても頑張れた。
しかし、そんな毎日も今日で終わり。これからは好きな人から離れた生活になるのは残念なものの、同時に使用人たちからの冷遇や公爵様が好きな令嬢たちの妬みからの辛い日々から解放されるので悪い事ばかりではない。
最近は関わる時間が増えて少しは心の距離が近づけたかなとは思ったりもしたけど、元々噂されるほどの人嫌いな公爵様だから、契約のせいで無駄な時間をとらされる邪魔な僕がいなくなって内心喜んでいるかもしれない。それでもたまにはあんな奴がいたなと思い出してくれたら嬉しいなあ、なんて思っていたのに……。
「何故離婚の手続きをした?何か不満でもあるのなら直す。だから離れていかないでくれ」
「え?」
なんだか公爵様の様子がおかしい?
「誰よりも愛している。願うなら私だけの檻に閉じ込めたい」
「ふぇっ!?」
あまりの態度の変わりように僕はもうどうすればいいかわかりません!!
記憶を失くしたはずの元夫が、どうか自分と結婚してくれと求婚してくるのですが。
鷲井戸リミカ
BL
メルヴィンは夫レスターと結婚し幸せの絶頂にいた。しかしレスターが勇者に選ばれ、魔王討伐の旅に出る。やがて勇者レスターが魔王を討ち取ったものの、メルヴィンは夫が自分と離婚し、聖女との再婚を望んでいると知らされる。
死を望まれたメルヴィンだったが、不思議な魔石の力により脱出に成功する。国境を越え、小さな町で暮らし始めたメルヴィン。ある日、ならず者に絡まれたメルヴィンを助けてくれたのは、元夫だった。なんと彼は記憶を失くしているらしい。
君を幸せにしたいと求婚され、メルヴィンの心は揺れる。しかし、メルヴィンは元夫がとある目的のために自分に近づいたのだと知り、慌てて逃げ出そうとするが……。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
【完結】花降る王国の魔法師団長は、新米魔法師の僕を愛でる
金浦桃多
BL
エルは魔法師団長の第三王子ノアに憧れて魔法師になった。
数年前、フローラ王国の最大のお祭りでノアが降らせた氷の花に触れた事がきっかけだ。新米ながらも当時のノアと同じ大役を任されたエル。真剣に鍛錬をするエルをノアはことさら優しく見守る。ある日、魔法師の間で奇病が広がり始めた。事態を重く見たノアは奇病の真相を追う。そんな中、エルも奇病に侵されてしまう。奇病の真実とは?ノアがエルに構う理由とは?
魔法師団長×新米魔法師
ハッピーエンドです。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
冷酷なアルファ(氷の将軍)に嫁いだオメガ、実はめちゃくちゃ愛されていた。
水凪しおん
BL
これは、愛を知らなかった二人が、本当の愛を見つけるまでの物語。
国のための「生贄」として、敵国の将軍に嫁いだオメガの王子、ユアン。
彼を待っていたのは、「氷の将軍」と恐れられるアルファ、クロヴィスとの心ない日々だった。
世継ぎを産むための「道具」として扱われ、絶望に暮れるユアン。
しかし、冷たい仮面の下に隠された、不器用な優しさと孤独な瞳。
孤独な夜にかけられた一枚の外套が、凍てついた心を少しずつ溶かし始める。
これは、政略結婚という偽りから始まった、運命の恋。
帝国に渦巻く陰謀に立ち向かう中で、二人は互いを守り、支え合う「共犯者」となる。
偽りの夫婦が、唯一無二の「番」になるまでの軌跡を、どうぞ見届けてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる