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分からないこと
しおりを挟む食堂の事件から1週間。
「はぁ......。」
あー、もう。身体から全部空気が抜けていきそうだ。
「しんごくーん。」
「はいっ! なんですかっ。」
「......なんでもない。」
「はいっ!」
このやりとりも何度目だろう。
数えてないからわからないが、なにか話していないとため息ばかりでてしまう。
「はぁ......。」
「はいっ! ............あ、」
「いや、お前じゃねぇから。」
あの日から、俺はとても調子がよくない。
身体のどこかが悪いとかそういうことではなくて、ただ調子が悪いのだ。
口から出るのはため息ばかりだし、止めようとしても気を抜くともうダメ。
仕事はやる気が起きないし、この1週間はほとんど書類仕事しかしていない。免除されている授業にはいつも以上に出ていないし、移動は寮とこの風紀室を行き来するだけに留まっている。
「副委員長大丈夫ですか?」
「あー、うん。だいじょうぶ。」
このやりとりもいつも通りだ。
そんなことを返しながら、机に伏せる。なんだかか暗闇のほうが落ち着くんだよなあ。
「あっ、そういえば、......副委員長。最近なんか変な噂があるみたいで………。」
バンッ!
慎吾くんの言葉を遮り、乱暴に開くドア。
「あーっ!! あんのっ、クソマリモがっ! いい加減にしろ!!」
「のわっ......!?」
ドダンッ、と開いたドアから飛び出してきた大きな影に驚き、声がでる。
反射的に視線をやった先には、予変ご立腹らしい冬至の姿。
「なに。どうしたの。すごいびっくりしたんだけど!」
「なにじゃない......。まじでなんなんだアイツはっ! いく先々でいろんなものを壊しまくってっ......!! どんだけ仕事が増えると! 風紀室に連れてきたくても、あんな奴怖くて連れてこれるわけがないっ。」
「怖いって? 冬至が?」
すごく悔しそうに、拳を握り語る冬至に俺は若干驚きながら言葉を返す。
その言葉に当たり前だとばかりに頷いた冬至は、書類の束をなげて己のデスクについた。
無造作に投げられた書類には、生徒会の文字。
「当たり前だろう。おかしなことを聞くな。あんなやつ、風紀室につれてこれるわけがない。どんな愉快な模様替えをするか分かったもんじゃないからな。」
「あぁ、そういうこと。」
幼馴染みでも、まだ冬至の思考を読むのは難しいらしい。
「あぁ、そうだ。田中、これまとめとけ。」
そう言い、散らばった書類をかき集める冬至に呆れた視線を送っているのは俺だけではないだろう。
証拠に、今風紀室にいる委員全員と目が合った。
田中くんがぐちゃぐちゃになった書類を整理してくれていたが、途中で手が止まった。
「......あれ、これ少なくないですか?」
少ない......?
それは、おかしい。あの書類はたぶん生徒会から渡された書類で間違いないだろう。
生徒会とは冬至と会長の仲もあり、ほぼ敵対していると言っていいが、これまで生徒会から回ってきた書類に不備があったことなんて、
「あぁ、それか。」
え?
「今日締め切りの書類はそれだけしか受け取れなかった。あとのはまだ出来ていないそうだ。」
え、出来ていない? そんなこと今まで一度もなかったのに。
「はっ。ついにボロが出てきたってことだ。あいつの能力だけは認めていたたが、俺の人を見る眼もまだまだだったか。」
「委員長......。」
いつも会長の不満をぶちまける顔ではなく、苦いものでも食べたような顔をする冬至に驚いてしまう。
冬至も会長のこと認めてたんだ。普段はそんなこと絶対言わないのに。
認めているからこそ、自分と対等だと思っているからこそ、いつも喧嘩ばかりしていたのかな………。
まぁだとしても表面上だけでも仲良くしてほしいとは思うけど。
「あー、あの。さっき話そうと思ったんですけど、委員長は知ってますよね。あの、」
「あぁ、知ってる。嫌でも耳に入ってくるからな。信じてるやつはほぼいないと言っていいが。」
「え、なんの話?」
俺の知らないとこで進行していく会話をききながら思わず、質問する。
もう誰も仕事をしていない。
俺以外はみんな知っているようで、それぞれがそれぞれの表情をしている。
「えっと、会長があの転校生に惚れて、仕事をしないで遊びまくってるって。それで、夜には親衛隊を侍らせていかがわしいことをしてるって。」
「は?」
言葉を理解するまでに時間がかかっていまう。
「いや、これは生徒たちに流れてる噂で、たぶん流したのは副会長あたりだと思うんですけど。まぁ、本当は会長、ちゃんと仕事してて」
「当たり前でしょ。」
思わず言葉が飛び出した。
途端に、驚いたように俺をみる視線の数々に若干居たたまれなくなる。
「ぁ、だってほら。会長、真面目だし責任感強いしさ。仕事しないで遊ぶような人じゃないよ。親衛隊だって、会長の友達がやってるし。そんなことありえないよ。」
焦る、焦る、あせる。無意識に語尾が小さくなってしまう。
俺はなにを知った風に話しているんだろう。
あの日から1週間、会長を避けまくり一度も会っていない。避けるといったって意識しているのは俺だけで、きっと普通にしていたって向こうには関係ない。
ただあの日みた光景に、聞いたことに胸のもやもやがとれなくて、それは日に日に大きくなっているような気もする。
あー、もうなんなんだ一体。
頭を抱えそうになる。
ブルブルッ、ブルブルッ!
あ。
制服の右ポケットに手を入れ、携帯に触れる。
指先に伝わる振動に電話だとわかった。
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