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分からないこと2
しおりを挟む「あ、ごめん、電話だ。」
「あ? 電話? だれから。」
携帯を握り立ち上がった俺に、疑うような冬至の声。
それを聞いていいの、と思いつつ正直に答える。
「んー、あ、兄さん。」
「......楓、さん。」
画面を見ながら、そう言うと途端大人しくなった冬至に少しの笑いが漏れる。
こちらを睨みつけているだろう冬至をあえてみずに、背を向け、廊下にでる。
今の冬至はきっと、苦虫を噛み潰したような表情をしてるに違いない。
「もしもし。」
『......、篠。久しぶりだね。』
「うん、久しぶり。元気だった?」
『あぁ、まぁぼちぼちかな。』
そう言いくすり、と笑う兄さんの上品なこと。その表情は、きっと2年前と変わらず綺麗なんだろう。
『それよりもだよ。どうして篠は大きな休みにも帰ってこないの。父さんなんか今年の春休みは泣き崩れてたよ。』
「あー、うん。ごめん、ごめん。」
『思ってないだろ。』
「いやー。」
実際、家に帰らないのに特に理由はない。ただ少しめんどうというだけで。だいたい家と学校が遠すぎるんだ。
車で5時間とか普通に耐えられない。電車だともう少し早いんだろうけど、そこまでして帰りたいってわけでもないし。
『まぁ、いい。でも、たまには帰ってきなよ。兄さんも寂しいから。』
「......ん。それで用件は?」
『あぁ、そうだった。えっと、俺は別に伝えなくてもいいんじゃないかと言ったんだけど、父さんが一応と。』
「父さんが?」
父さんが伝えたいこと。
そんなもの、今までの経験上はた迷惑な愛の言葉しか浮かばない。愛は愛でも、それは立派な家族愛だけど。
『えっとさ。近いうちに、西崎さんの家とうちの家と藤堂さんの家で協同して仕事をすることになってね。ほら、しってるだろ。社長同士......、というか父さんとおじさん同士が仲良いの。』
「あ、うん。」
そういえば、そうだったっけ。
昔から冬至の家と仲良いのは知ってたけど、会長、西崎の家とも仲が良かったとはしらなかった。
子供のころから遊ぶのは家が近い冬至ばかりで、会長の家と交流があったなんて初めてしった。
『それで、いま会長をやってるんだっけ? 理巧くん。俺もあまりあったことないんだけど、仲良かったりするの?』
「......ぇ。」
『あ、別にいいんだよ。ごめん、ごめん。それで仲良くしろとか、そういうの言いたいんじゃないから。』
「あぁ......。うん、」
それは分かってるんだけど。
『今電話してるのも、半分は篠の声が聞きたかっただけっていう不純な理由だから。でもなぁ、』
「え?」
でもなぁ、......なに。
『篠、ちょっと変わったね。』
「へ?」
含み笑いとともに耳をうつ、昔から変わらない落ちついた声。
それに安心してしまったのか、変な声がでてしまう。
『んー、なんていえばいいんだろ。ずっと動揺してるというか、浮わついてるというか。』
「うーん、そうなかあ。」
内心、ドキリとする。
『ほら篠って子供のときから落ち着きがあって無欲で、周りのものには全然興味ない子だったでしょ。まぁ、半分は俺のせいかもせしれないけどさ。』
「兄さん。その話はもう終わったよね。」
思いの外、強い口調になってしまって申し訳なさがわいてくる。
『............うん、ごめん。』
急にしおらしくなってしまった兄。あぁ、まだ兄さんたちは止まったままなんだ。
「あー、それで聞きたいことあるんじゃないの?」
すぐ傍にある花壇を見ながらたずねる。
『ん? なに、』
「冬至のこと。」
『............。』
黙ってしまった。
これは俺が思っているより進展していないのかもしれない。いや、違う。もっと悪い。
まったく変わっていないのだ。あのときから。
「冬至、すぐそこにいるから代わろうか? 電話。」
『えっ! ちょ、いや、いやいや。まってっ、やめて。』
「でも、」
いや、だって、あれだし、これだし、それだし。
と、ぶつぶつ呟き始める兄に失敗したと後悔。もうこれは無理矢理にでも代わろうか。
そう思いながら、廊下の突き当たり。何気なくみたそこに、
「あーっ!! しのだーっ!」
危うく項垂れそうになった。
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