王様のナミダ

白雨あめ

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分からないこと3

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*****



「しのと会うの久しぶりだなー!」

「うん、そうだね。」


転校生の太陽くん、とその取り巻き。副会長と会計くん。

いかにもスポーツの出来そうな爽やかくんと、たぶんFクラスだろう、いかにも不良そうな彼に両側を固められ、足を動かす。いったいどこに向かっているんだ。



彼らを見つけたとき、あれ、増えてる。なんて暢気なことを考えているんじゃなかった。
一緒に遊ぼう! と、転校生が言ったあとの副会長の眼力に負け付いてきてしまったけど、あんなにスピーディーに両側を取られるとは思ってもみなかった。
逃げられる気がしない。

そんなことを考えていると足が止まる。目的地は、
なるほど。生徒会室ね。

「りくーっ! あけてくれ!! 一緒に遊ぼうぜっ!」

「あのさ、俺帰ってもいい? まだ風紀の仕事もあるし。」

ドアの前で、生徒会に向かって叫ぶ転校生にそう声をかける。
さっきから一行にドアは開かないし、会長も......、いるのかどうかは分からない。
遊ぶという行為も別に重要にも思えないし。

「えっ! だめ!! 久しぶりにあったんだから、友達は遊ばなくちゃいけないんだぞ!」

「え、いや、でも」

「......仕方ありませんね。」

「え?」

ガチャリ、と錠の外れるおと。

副会長の手には鍵がひとつ。

え、鍵持ってたの?

そう口に出すひまもなく、左右から身体を前に押し出される。
こけまいとバランスをとった先で、目をまん丸にした会長と目が合った。


「は? 桜庭......?」

「か、いちょう。」

かろうじて絞りだした声は恥ずかしいほどかすれている。

どうしよう、どうしよう。
今すぐここから逃げたいのに、視線を会長からそらせない。


「りくーっ! 遊びにきてやったぞー! あっ、また仕事ばっかりしてっ!! 友達がきたんだから遊ばなきゃだめなんだぞ!」


部屋のはしで突っ立っている俺を追い越し、会長に駆け寄っていく転校生を視界の端にぼんやり映す。
腕を握られ、ゆさゆさと揺すられた会長は、今気づいたというように転校生に視線をうつした。

「お前、何回言ったらわかるんだ。俺の邪魔をするんじゃねぇ。ここには来んなっていってんだろうが。一般生徒の立ち入りは禁止だ。」

「でもっ、俺りくの友達だしっ!」

「だれがお前といつ友達になったんだよ。あ? 気安く呼ぶな。っていうか、前もこれ言わなかったか? てめぇの脳みそには何がはいってんだよ。」

そう強く言って、腕を振り払った会長とまたもや目が合う。

「......、っ」

その表情は、俺を動揺させるのには十分だった。

「ほら、言ったでしょう。会長はあなたよりも仕事の方が大事なんです。さ、行きましょう。」

「でもっ!!」

諦められないというように、会長を見つめる転校生。


これって......。


どうすればいいかわからず立ち尽くし、副会長に手を引かれて生徒会室を出ていく転校生の後ろ姿をみつめる。


転校生も、会長のことが好きなんだろうか。
友達だなんだの言っていたけれど、それは口実でただ会長と一緒にいたいとか。
会長もあんな顔をするくらいなら、もっと転校生に優しくしてあげればいいのに。
あんな泣きそうな顔するくらなら、副会長たちと一緒に転校生と遊べばいいのに。

副会長のあとに続き、会計たち取り巻きは静かに生徒会室を出ていった。赤髪をつんつんとさせた不良チックな生徒は、会長に勝ち誇ったような笑みを浮かべながら。

バタン、と。
ドアの閉まるおと。

あ、出遅れた。

そんなことを思いながら、机に向き合い早速書類仕事を始めた会長をみる。

なんだか、痩せただろうか。
袖から覗く細い手首に視線が吸い寄せられる。

目の下には隈があるし、顔色もよくない。
書類に向き合う表情は真剣そのもので、声をかけてもいいのか迷う。

「......お前も出ていけ。仕事の邪魔だ。」

「あ......。」

先手をうたれ、困る。

それは、このまま出ていくのが一番いいんだろうけど、噂のこととかその他もろもろでなんだか会長を放っておけなくて。


ーーーどうしよう。


「あのさ、書記の人は? 今日きてないの?」

「......犬飼なら部屋で仕事してる。」

「あ、......そう。」


あー、もうどうしよう。会長すごく機嫌が悪そうだ。

聞こえるのは、会長がペンを走らせる音だけ。

「副会長は? 仕事しないの。」

「あいつは、転校生を追いかけるのが大変なそうだ。初めての......、あれだから浮かれてるんだろ。」

「でもそれは会長も」

同じじゃないの。


そう言おうとして、顔をあげた会長と視線が交わる。
不思議と言葉がでなくて、口が勝手に閉じていく。

「桜庭?」

あぁ、なんだろうこの気持ち。身体が熱い。
今の今まで会長のことを避けまくってたくせに、こうして顔をあわせると話がしたくて不思議な気持ちになって。

会長は転校生が好きで、転校生も会長が好きかもしれなくて。

でも俺は、


「っ、......。」


あぁ、その手に触れたい。触れて、大丈夫だよって言ってあげたい。

会長のことが知りたい。困ってたら助けてあげたいと思う。

こんな気持ち、生まれて初めてだ。

俺をみて、ちょっと首を傾げて、心配そうに見上げてくるこの人が。
あぁ、こんなに優しい人だなんてしらなかった。


「会長、少し休憩したら? 体調わるそうだよ。」

「いや。」

「それと、明日から俺ここにくるから。」

「は?」


何を言ってるんだ、とばかりに直視してくる会長に少し照れる。

だって、会長の助けになりたいんだ。
困っているなら、少しでも。

「じゃあそういうことで。」

「はっ!? え、ちょっ。」

会長と転校生のことは深く考えないようにする。
俺自身、この気持ちの根源が何なのかまだわかっていないから。


「また明日ね。会長。」


ちゃんと笑えているだろうか。

気持ち悪い顔になっていないだろうか。


こんなことを気にしたのは初めてで、なんだか自分がはずかしい。



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