王様のナミダ

白雨あめ

文字の大きさ
44 / 57

王様の涙3

しおりを挟む



「かい、ちょう?」

今、会長はなんて言ったんだ。

俺のことが好きだって、そう言ったのか?


「会長、」


口はちゃんと動いてて、きょろきょろ辺りを伺う俺と同じ動作に、きちんと会長の言葉だとわかる。

耳はいまだ赤くて。
きっと俺だって真っ赤で。

だけど、でも。会長は。会長には。


「無理、しなくていいよ。……俺が好きって言ったからって、会長まで」

「は......? なにいってんだ。」

「なにいってんだ、って。」


全く分からないという顔をしてこちらに視線を戻した会長に、もう俺の方が分からない。
なにいってんだ、は会長でしょ。

戸惑いよりも疑問よりも、悲しみよりも。
何よりも先に湧いてきたのは、久しく感じていなかった、純粋な怒り。


「会長こそなにいってんの。俺が好きとか意味わかんない。会長が好きなのは、転校生でしょ。それなのに、俺が好きとかいみわかんない。」

「………は? てめぇ、もう一回言え。俺が誰を好きだって?」

「だからっ! 会長は転校生がーーーーっ、」


刹那。

感じたことがあるような圧迫感。
視界の端に映るネクタイに、またネクタイを掴まれたのだとわかる。

引き寄せられる身体に、離れる足。

反射的に目を瞑って、



「ぇ。」



唇に何かが噛みついた。


「ちょっ、なっ。」

咄嗟のことに、一瞬反応が遅れる。
服越しに触れあう胸元を、思いっきり押し返した。


「会長っ。一体なにして!」


き、き、キスっ。なんてっ。

「うるせぇな。てめぇがきもちワリィこと言うからだろうが。誰があんなクソモジャ好きになんだよ。」

......クソモジャ。

まぁ、もじゃもじゃしてると言えばしてるけど。

ていうか、


「え、会長。転校生のこと好きじゃないの?」

俺はこっちの方が気になって。

「あ? 好きなわけねぇだろ、ふざけんな。どこをどう見たらそんなことになんだ。」

「どこを、って。......、どこをどう見てもそうとしか見えなかった。」

それに、愛先輩だって。

「お前がなにをどう見てたとしても関係ねぇ。俺は、あのクソモジャのことなんか好きじゃない。俺が好きなのは、」

「ほんとに?」

たまらず、会長の言葉を遮ってそう問いかける。

これが、夢か何かじゃないことを願いたい。

「ほんとに転校生のこと好きじゃないの。」

「あぁ。」

「......そっか。」


そっか。俺はたぶん、今すごく嫌なことを考えている。
会長が転校生のことを好きじゃないって知って、ほっとして喜んで。

彼の気持ちを全く考えてない。
きっと彼は、彼の方は俺の思い違いなんかじゃなくて。きっと、


「おい、桜庭。」

「へ? あ、ぁ、はい。」

すぐ傍から聞こえてきた声に我に返る。

あぁ、そうだ。俺、今会長と。

さっきとはうって変わって固い表情を浮かべる会長に、笑みが漏れそうになるのは愛故だ。

俺は、こんな可愛い人を他に知らないから。

「ぁ、桜庭。俺は、」


会長の口がもごもごと動く。
その視線は恥ずかしがるように宙をさ迷って、俺の背中へと固定された。

ん? なんだ?


その瞬間。




ーーーーカシャ。


響き渡るのは、カメラのフラッシュ音。

二人して、その場に固まる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

僕の王子様

くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。 無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。 そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。 見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。 元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。 ※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

三ヶ月だけの恋人

perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。 殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。 しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。 罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。 それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。

幼馴染が「お願い」って言うから

尾高志咲/しさ
BL
高2の月宮蒼斗(つきみやあおと)は幼馴染に弱い。美形で何でもできる幼馴染、上橋清良(うえはしきよら)の「お願い」に弱い。 「…だからってこの真夏の暑いさなかに、ふっかふかのパンダの着ぐるみを着ろってのは無理じゃないか?」 里見高校着ぐるみ同好会にはメンバーが3人しかいない。2年生が二人、1年生が一人だ。商店街の夏祭りに参加直前、1年生が発熱して人気のパンダ役がいなくなってしまった。あせった同好会会長の清良は蒼斗にパンダの着ぐるみを着てほしいと泣きつく。清良の「お願い」にしぶしぶ頷いた蒼斗だったが…。 ★上橋清良(高2)×月宮蒼斗(高2) ☆同級生の幼馴染同士が部活(?)でわちゃわちゃしながら少しずつ近づいていきます。 ☆第1回青春×BL小説カップに参加。最終45位でした。応援していただきありがとうございました!

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

処理中です...