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第六章 お金のための関係 (蒼side)
32.恐怖の夜
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リイさんが国に帰ってしまったので、僕の部屋は耳鳴りがするほどシーンと静まり返ってしまった。
以前は夜中でも耳を澄ますと隣の部屋から流しの水道をキュッと締める音やケホ、ケホッと咳き込む音が聞こえてきたのに。
寝付けなくて布団にくるまっていると外を走るバイクの音、野良猫が喧嘩する鳴き声、その他は何も聞こえない。
実はこのアパートを気味悪がって隣接する空き地は買い手がつかないし、この建物の近くを通らないようにしている人も多いらしいとリイさんから聞いたことがあった。
それならある意味安心だね、なんてその時は笑い合っていたのに、一人になった今は不安でなかなか眠れない。
とはいえ、今日だって外回りと残業でクタクタに疲れていたので1時間も経たないうちに僕はウトウトとし始めていた。
ミシ……、ミシ……、ミシ……。
天井から変な音が聞こえて目を覚ました。
……何の音?
息を殺して耳を澄ましていると、またミシ……ミシ……ミシ……と音がする。
足音みたいだけど、そんなはずはない。床が抜けそうだからと元々大家さんが二階には誰も入居させていないし、今この建物には僕以外誰もいないはずなのに……。
あまりの恐怖に僕は布団にくるまって震えていた。
しばらくすると、天井からの聞こえてきていた足音が止み、ホッと胸を撫でおろした。
ネズミにしては大きな音だったけど、何か野生の動物が紛れ込んでいたのか、建物の木材が軋む音だったのかもしれない。怖い怖いと思うから、人間の足音に聞こえたんだ、と自分に言い聞かせて目を閉じた。
パリンッ! と窓の方から音がして、風が吹き込んできた。
「えっ!」
窓ガラスが割られたのだ。外には人の気配がする。
「ひええええっ! な、なにっ!?」
こういうときは警察に110番通報すればいいんだろうけど、そもそもお金がないから僕は私物のスマホは持っていない。会社から支給されている仕事用のスマホは失くしたら弁償なので会社のロッカーにしまって帰宅している。
僕はただ、身を守るように布団にくるまったまま狭い部屋の中で後ずさりすると押し入れの引き戸に背中が当たった。もうこれ以上の逃げ場はない。
誰かが部屋に入って来て、僕の布団を引っ張った。
「お前、李か?」
男性の声がすると共に眩しい光に目がくらんだ。懐中電灯を顔に当てられたのだ。
「ええええっ!?」
「答えろ、李かと聞いているっ!」
歯を食いしばったままガタガタ震えていたら、顔をパシンと叩かれた。
「おいおい、こいつ李じゃないじゃん。見ればわかるでしょ?」
李か、と聞いた声の向こうから別の声がした。
「なんだ、人違いか?」
「リ、リイさんは、……く、国へ帰りました」
僕はそれだけ言うのに必死だった。
「ほらね、こいつ日本人じゃん」
「ちぇ、逃げられたか」
侵入者たちは足早に去っていった。
以前は夜中でも耳を澄ますと隣の部屋から流しの水道をキュッと締める音やケホ、ケホッと咳き込む音が聞こえてきたのに。
寝付けなくて布団にくるまっていると外を走るバイクの音、野良猫が喧嘩する鳴き声、その他は何も聞こえない。
実はこのアパートを気味悪がって隣接する空き地は買い手がつかないし、この建物の近くを通らないようにしている人も多いらしいとリイさんから聞いたことがあった。
それならある意味安心だね、なんてその時は笑い合っていたのに、一人になった今は不安でなかなか眠れない。
とはいえ、今日だって外回りと残業でクタクタに疲れていたので1時間も経たないうちに僕はウトウトとし始めていた。
ミシ……、ミシ……、ミシ……。
天井から変な音が聞こえて目を覚ました。
……何の音?
息を殺して耳を澄ましていると、またミシ……ミシ……ミシ……と音がする。
足音みたいだけど、そんなはずはない。床が抜けそうだからと元々大家さんが二階には誰も入居させていないし、今この建物には僕以外誰もいないはずなのに……。
あまりの恐怖に僕は布団にくるまって震えていた。
しばらくすると、天井からの聞こえてきていた足音が止み、ホッと胸を撫でおろした。
ネズミにしては大きな音だったけど、何か野生の動物が紛れ込んでいたのか、建物の木材が軋む音だったのかもしれない。怖い怖いと思うから、人間の足音に聞こえたんだ、と自分に言い聞かせて目を閉じた。
パリンッ! と窓の方から音がして、風が吹き込んできた。
「えっ!」
窓ガラスが割られたのだ。外には人の気配がする。
「ひええええっ! な、なにっ!?」
こういうときは警察に110番通報すればいいんだろうけど、そもそもお金がないから僕は私物のスマホは持っていない。会社から支給されている仕事用のスマホは失くしたら弁償なので会社のロッカーにしまって帰宅している。
僕はただ、身を守るように布団にくるまったまま狭い部屋の中で後ずさりすると押し入れの引き戸に背中が当たった。もうこれ以上の逃げ場はない。
誰かが部屋に入って来て、僕の布団を引っ張った。
「お前、李か?」
男性の声がすると共に眩しい光に目がくらんだ。懐中電灯を顔に当てられたのだ。
「ええええっ!?」
「答えろ、李かと聞いているっ!」
歯を食いしばったままガタガタ震えていたら、顔をパシンと叩かれた。
「おいおい、こいつ李じゃないじゃん。見ればわかるでしょ?」
李か、と聞いた声の向こうから別の声がした。
「なんだ、人違いか?」
「リ、リイさんは、……く、国へ帰りました」
僕はそれだけ言うのに必死だった。
「ほらね、こいつ日本人じゃん」
「ちぇ、逃げられたか」
侵入者たちは足早に去っていった。
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