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第六章 お金のための関係 (蒼side)

33.交番へ

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 僕は恐怖でガクガク震える足で何度も転びながら、玄関でサンダルをひっかけてどうにか外へ出た。どうしたらいいかわからないまま、とりあえず駅前の交番へ走った。

 交番の前では酔っぱらい同士が言い争いになっていたようで、お巡りさんが二人の男性に事情を聞いていた。
 他の警察官は出払っているようで、僕は酔っぱらいたちのやり取りが落ち着くのを待ってようやくお巡りさんに声をかけることができた。

「助けてください、家で寝ていたら変な人たちが入ってきて……」
「え、強盗ですか!? だったらあなたもっと早く言わないとっ! そういうときは110番してくださいっ!」
 僕と同年代と思われる若くて熱心な警察官はすぐにどこかへ連絡して応援を呼び、僕は自宅の現場検証に立ち会った。

 結局お巡りさんと自宅をよく見てみたけれど、盗られたものは何もなくて、被害と言えばガラスを割られたのと僕の頬を叩かれただけだった。それもわずかに頬が赤くなっているくらいで、歯が折れたなんてこともなかった。
 元々僕の部屋に金目のものなんて何もない。

「気をつけてくださいね、この辺りも最近は空き巣などが多いですから。……ご実家は近いんですか?」
 きっと僕はひどく疲れて青ざめた顔をしていたのだろう。お巡りさんが気の毒そうに僕の目を見ていた。
「いえ、両親は他界していて、実家はありますが叔父が住んでいて……」
「そうですか。ガラスが割られちゃ戸締りもできませんし、今夜はそのおじさんのところか、お友達の家にでも泊めてもらうのがいいかもしれませんね」
 お巡りさんはそう言って帰って行った。

 なんだかよくわからないが犯人たちの狙いが僕じゃなくリイさんだったことはわかっている。
 それでも天井から聞こえてきた足音とガラスを割られて知らない人が入って来たときの恐怖を思い出すと、もう今夜この部屋で眠ろうとは思えなかった。

 時計を見ると午前1時だった。
 このアパートにいるのが怖くて、僕は靴を履いて家を出た。お巡りさんに言われた通り、実家へ行くことにした。

 もう終バスも終電も過ぎているから、車道わきの歩道をとぼとぼと歩いて実家の方向へ向かった。こんな夜中だから、車の通りもまばらだった。
 歩いて行ったことはないけど、実家までは1時間以上かかるだろう。タクシーを拾いたくても終電後の駅前のタクシー乗り場は長蛇の列だし、貧乏な僕にとってタクシーなんて贅沢すぎて気が引けた。

 叔父さんが家にいるとして、泊めてくれるだろうか。正直、叔父さんは僕に対して手厳しい人だから、事情を説明しても追い返されるかもしれない。
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