まだまだこれからだ!

九重

文字の大きさ
24 / 102
第二章 平穏な日々ばかりではないようです。

新たなお世話対象者

しおりを挟む
「待て! 別の奴だと!? それはいったい誰だ?」

 内心舌打ちをしながらアルディアは聞く。
 サーバスの企みが見えるような気がして眉間にシワを寄せた。

「まだ会っていないからわからないわ。なんでもウルフィアの知り合いだそうなんだけど――――」

 うららの返事を聞いたアルディアは、今度は隠さず大きな舌打ちをした。

「会うのは禁止する。そいつはドワーフの狂戦士だ」

「ドワーフ!?」

 エルフ、吸血鬼に続くファンタジーな存在に、暖は思わず身を乗り出す。
 興味津々な暖の様子にアルディアは表情を険しくする。

「狂戦士だと言っただろう! 怪我をして半身不随になっているが、そいつがやろうと思えばお前など直ぐに殺されるぞ!」

 大声で怒鳴りつけた。
 ウルフィアの知り合いで暖の世話がいる者と言えば、十中八九アルディアが思っている者で間違いないだろう。
 よりによってなんて凶悪な相手をサーバスは選ぶのかとアルディアは怒る。
 もちろんサーバスの意図は容易く察せられた。
 半身不随のドワーフを暖が癒せば、暖の力は確かなものと確認出来るのだ。
 しかし――――

(危険過ぎる)

 何よりそのドワーフは人間嫌いだった。
 ウルフィアだけは、かつて死闘を演じた相手として認めてはいるが、他の人間は近づくだけでも威嚇しまくっている。

「そいつが、この村で大人しく世話をされているのは、ただ一点ウルフィアがそう望むからだけだ。そうでなければそいつは暴れまくったあげくとっくの昔にここを飛び出し、のたれ死んでいる」

 アルディアの表情は苦い。
 ウルフィアが「奴が死んだりしたら私の夢見が悪い」そう言ってドワーフを連れて来たから、やむを得ず彼を受け入れたアルディアだ。


 何故なら、この村は種族の違いを越えてそんな存在を受け入れると約束された地だったから。

 どこにも行き場のない廃棄処分同然の存在を、唯一受け入れる場所であるこの村。
 そのためにここは人間のみならずいろいろな種族からの援助金が集まっていた。
 村はその金で運営されているのだ。
 もちろん、その中にはドワーフからの援助もある。


 この村は、外の者たちが見たくない、かつての仲間の落ちぶれた姿を隠す場所でもあった。


(だから、私もここにいる)

 王族でありながら当たり前の日常さえも満足に送れない病人である自分を自嘲しながら、アルディアは思う。




 一方、暗い思考に陥りそうなアルディアとは反対に、暖はますますやる気に満ちていった。

「そんな! だったら、尚更私はウルフィアのお手伝いをしなきゃでしょう! 最近調子が良さそうだけど、彼女には腰痛があるんですよ。私が手伝わないでどうするんです!」

 日本でも介護をする人の腰痛は大きな問題になっていた。
 それを思い出した暖にアルディアの説得は逆効果だ。

「危険だと言っているだろう!」

「大丈夫です。ウルフィアと一緒に行きますから。彼女と一緒なら心配ないでしょう?」

 暖はきっぱりとそう言った。
 既に彼女の中でドワーフの世話をするのは決定事項なのだろう。

 アルディアは顔をしかめる。

 危険面ばかりではなくそれ以外の理由でも、暖を止めたいとアルディアは思っていた。
 暖に癒しの力があるかも知れないことが公になれば、どんな危険が降りかかるかわからないからだ。
 しかし、それを教えるわけにはいかない。

(自分に癒しの力があることがわかれば、こいつはますます張り切りそうだ)

 アルディアは頭を抱える。 


「ともかく、ドワーフに近づく事は禁止する!」

「えぇ~? アルディア横暴!」

「うるさい! ともかくダメなものはダメだ!」


 アルディアはきっぱり宣言する。
 これ以上話して興奮されてまた発作でも起こされたらまずいとでも思ったのか、暖は黙りこんだ。


「わかったのか?」

「ハイハイ」

「返事は一回だ!」

 まるでお父さんのような王子さまだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...