まだまだこれからだ!

九重

文字の大きさ
25 / 102
第二章 平穏な日々ばかりではないようです。

王子さまは魔女に勝てません

しおりを挟む
 そんなこんなのやり取りの後、何故かアルディアのもとにディアナが怒鳴りこんできた。

「王子! お前という奴は、いったい何時からウララの父親になったのだ!?」

 アルディアは額を押さえる。

「あんな破天荒娘の父親なんかゴメンだ」

「ならば、何故ウララの行動にいちいち口出しをする?」

 美しい顔を嫌そうにしかめながらアルディアはディアナを睨む。
 当然、ディアナはそんな顔に怯むことなどなかった。

「返答次第では、今すぐ永眠の魔法をかけてやるぞ!」

 杖を振り上げるディアナ。
 そのスムーズな体の動きに彼女の関節痛の目覚ましい快復ぶりを見て、アルディアはますます頭を抱える。
 こうなったディアナがアルディアの口先だけの誤魔化しに丸め込まれるはずはなかった。
 観念した王子は、深いため息をこらえながらディアナに自分の懸念を伝える。


 うららが治癒の力を持っているかもしれないこと。
 その力が知られたら、暖に危険が及ぶだろうことを話した。


 聞いたディアナは――――

「なんだ。そんなつまらん事を悩んでウララの行動を制限したのか」

 思いっきり呆れたようにそう言った。

「……だから、あなたに話すのは嫌だったんだ」

 アルディアは大きく顔をしかめる。
 ディアナは「阿呆じゃな」と笑った。


「何のために、ギオルが竜玉を授けたのだと思っておる?」


「竜玉……」

「あれを授けられたウララに、そんじょそこらの者が害をなせるはずがないじゃろう。それぐらいわからんのか?」

 確かにその通りだった。

「お前の心配は遅きに過ぎる。ウララを大切に思う者は既に対策を考えておるぞ」

 したり顔でディアナは説明する。

「――――まあリオールの花冠は流石に重すぎるからギオルが止められてOKじゃったが……そうそう、ラミアーが寝惚ねぼけたふりをしてウララに噛みつこうとするのも、まあ問題じゃな。わしが目を光らせておる間はそんなことはさせないが」

 話を聞いてアルディアはますます頭を抱えた。
 いつの間にそんな事態になっていたのだろう?

「ウララを守ろうとする者は多い。ウルフィアがウララをドワーフに会わせようとするのも、ドワーフのためというよりもウララのためじゃ。万が一どこかの国との戦になれば、あのドワーフの戦闘力を遊ばせておく手はないからな」

 ニッとディアナは笑う。

「戦――――」

 アルディアは呆気にとられた。

「あの娘を守ろうとするなら、それくらいの覚悟はいるという事じゃ。王子よ、お前もよく考えて覚悟を決めるがいい。……戦う相手がこの国とならぬ保証はないからな」

 ディアナの言葉は重かった。

「私は……」

 返事が出来ずにアルディアは言葉に詰まる。




「――――という事で、ウララにドワーフの面倒を見させるからな」

 その隙にディアナは一方的に宣言した。
 たった今までの重い空気はどこにやったのか? 
 あっけらかんと笑った。

「やれ良かった。なんと言っても、あのドワーフは頑固者でな。ウルフィアもほとほと困っていたのじゃ。能天気なウララならなんとかするじゃろう。……ウルフィアは、わしの貴重な茶飲み友達じゃからな。このままでは、ゆっくり茶を飲み世間話を楽しむこともできなくなるところじゃった」

 ――――本音駄々漏れな言葉だった

「しのごの言いながら、結局は面倒な相手をウララに任せたいだけなのか!?」

 アルディアは怒鳴る。
 当たり前じゃろうとディアナは胸を張った。

「いい若いもんがおるのに何でわしら年寄りが苦労せんとならん。使える者は使うのがわしの主義じゃ。しかも一石二鳥を狙えるのにためらう必要はないじゃろう?」

 ディアナは悪びれもしない。
 アルディアはがっくり項垂れた。


「良いか! 既に、これは決定事項じゃからな!」


 人生経験の差なのか、はたまた単にディアナの性格がずうずうしいだけなのか? (絶対後者だろうとアルディアは確信する)どうあがいてもアルディアに勝ち目はなさそうだ。


 こうして、暖がドワーフの世話をすることは決まったのであった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...