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第二章 平穏な日々ばかりではないようです。
バカはどっち?
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そんなことがあって、とっても心配した暖だが、殺されることもなく翌日再びドワーフと会う。
「ゴメンナサイ!」
暖は力一杯謝った。
「ああ?」
「名前、間違エタ。殺サナイ?」
ブルブルと震える暖にそう聞かれ、ネモは目を瞬いた。
「そんな事ぐらいで、いちいち殺してたまるか!」
彼に怒鳴られ、暖はホッと息を吐く。
「ソウヨネ。ソレクライデ、殺サナイヨネ」
安心して、ホッと胸をなでおろす。
「当たり前だ! 俺をなんだと思ってる! 名前を間違えた奴なんか殺すまでもない。二三発ぶん殴って地中に埋めて終わりだ」
暖は胸に手を当てたままその場にヘナヘナと座り込んだ。
そんな事をされたら間違いなく死んでしまうだろう。
「ナ、殴ラナイデ ……」
プルプルと震える暖に、ネモは呆れたような視線を向けた。
「今更、殴るわけがないだろう? それよりまたあのマッサージってヤツをしてくれ。あれをしてもらうと痺れるような痛みが薄れる気がする」
暖は勢い良く頷いた。
それで殴られないなら、マッサージなんかお安いものだ。
「ああ、でも……あまり気持ち良くさせ過ぎないでくれ。この前みたいに無防備に寝るのはゴメンだ」
ネモはそう言った。
暖はキョトンとしてしまう。
「寝タクナイ? 何デ?」
「寝てる間に何か有ったら困る。油断して殺されるなんざ、戦士の恥だからな」
暖は、ますますネモが何を言っているのかわからなかった。
「私、殺シマセンヨ?」
もしかしたら、ネモは眠っている間に暖が自分を殺すと思っているのだろうか?
「当たり前だ! お前に俺が殺せるものか!」
しかし暖の言葉を聞いたドワーフは、真っ赤になって怒った。
「デスヨネ。……ジャア、眠レナイ、何デ?」
「お前以外の敵が現れるかもしれないだろう!」
「此処デ?」
「いついかなる時も油断したくないということだ!」
ゼイゼイと息を弾ませながらネモは怒鳴る。
それを聞いた暖は、ようやく「アア」と納得したように頷いた。
「ダッタラ、此処ハ大丈夫。ディアナ、魔法守ル、強イ! ソレニ、何カアレバ、私、起コス!」
ドン! と胸を叩いた暖はゲホゲホとむせる。
それでも彼女は「ダカラ大丈夫」と言って、ニッコリ笑った。
ネモは、ポカンと口を開ける。
「お前が俺を起こす?」
「ソレデ、間ニ合ウ?」
「あ? ……あ、ああ」
「良カッタ! ジャア一生懸命マッサージスル! 寝テ、大丈夫!」
暖は嬉しそうに笑うとネモの足を揉みはじめた。
◇◇◇
暖のマッサージを受けながら、ネモは心底戸惑っていた。
そういう意味ではないと、目の前の人間を叱ってやりたいと思う。
しかし……何をどう言っても、結局暖に押しきられるような気がするのは何故だろう?
小さくひ弱な人間の女性。
ちょっとマッサージが上手いだけのとるに足らない存在のはずなのに、自分の大切な名前を間違えられても、ネモは殺さなかった。
(あの時、どうしてこいつを殺さなかったのだろう?)
ネモは不思議に思う。
いや、それ以前に大切な名前をこんな人間風情に教えた自分が信じられなかった。
暖は懸命にネモの足を擦っている。
小さな掌からぬくもりが伝わった。
(この温かさがいけないのかもしれない……)
いつまでも浸って動きたくなくなるような心地良さが――――
ネモは、まぶたがゆっくりと落ちてくるのを感じた。
意識が蕩けそうに、気持ちいい。
体から、余計な力が抜けて温かさが満ちる。
「大丈夫。何カアレバ声、出シマス」
(……そういう事じゃない)
この人間はバカだと思いながら、ネモは意識を手放す。
そんなバカに身を任せて眠る自分は、もっとバカだと思いながら……ネモは満足して眠った。
「ゴメンナサイ!」
暖は力一杯謝った。
「ああ?」
「名前、間違エタ。殺サナイ?」
ブルブルと震える暖にそう聞かれ、ネモは目を瞬いた。
「そんな事ぐらいで、いちいち殺してたまるか!」
彼に怒鳴られ、暖はホッと息を吐く。
「ソウヨネ。ソレクライデ、殺サナイヨネ」
安心して、ホッと胸をなでおろす。
「当たり前だ! 俺をなんだと思ってる! 名前を間違えた奴なんか殺すまでもない。二三発ぶん殴って地中に埋めて終わりだ」
暖は胸に手を当てたままその場にヘナヘナと座り込んだ。
そんな事をされたら間違いなく死んでしまうだろう。
「ナ、殴ラナイデ ……」
プルプルと震える暖に、ネモは呆れたような視線を向けた。
「今更、殴るわけがないだろう? それよりまたあのマッサージってヤツをしてくれ。あれをしてもらうと痺れるような痛みが薄れる気がする」
暖は勢い良く頷いた。
それで殴られないなら、マッサージなんかお安いものだ。
「ああ、でも……あまり気持ち良くさせ過ぎないでくれ。この前みたいに無防備に寝るのはゴメンだ」
ネモはそう言った。
暖はキョトンとしてしまう。
「寝タクナイ? 何デ?」
「寝てる間に何か有ったら困る。油断して殺されるなんざ、戦士の恥だからな」
暖は、ますますネモが何を言っているのかわからなかった。
「私、殺シマセンヨ?」
もしかしたら、ネモは眠っている間に暖が自分を殺すと思っているのだろうか?
「当たり前だ! お前に俺が殺せるものか!」
しかし暖の言葉を聞いたドワーフは、真っ赤になって怒った。
「デスヨネ。……ジャア、眠レナイ、何デ?」
「お前以外の敵が現れるかもしれないだろう!」
「此処デ?」
「いついかなる時も油断したくないということだ!」
ゼイゼイと息を弾ませながらネモは怒鳴る。
それを聞いた暖は、ようやく「アア」と納得したように頷いた。
「ダッタラ、此処ハ大丈夫。ディアナ、魔法守ル、強イ! ソレニ、何カアレバ、私、起コス!」
ドン! と胸を叩いた暖はゲホゲホとむせる。
それでも彼女は「ダカラ大丈夫」と言って、ニッコリ笑った。
ネモは、ポカンと口を開ける。
「お前が俺を起こす?」
「ソレデ、間ニ合ウ?」
「あ? ……あ、ああ」
「良カッタ! ジャア一生懸命マッサージスル! 寝テ、大丈夫!」
暖は嬉しそうに笑うとネモの足を揉みはじめた。
◇◇◇
暖のマッサージを受けながら、ネモは心底戸惑っていた。
そういう意味ではないと、目の前の人間を叱ってやりたいと思う。
しかし……何をどう言っても、結局暖に押しきられるような気がするのは何故だろう?
小さくひ弱な人間の女性。
ちょっとマッサージが上手いだけのとるに足らない存在のはずなのに、自分の大切な名前を間違えられても、ネモは殺さなかった。
(あの時、どうしてこいつを殺さなかったのだろう?)
ネモは不思議に思う。
いや、それ以前に大切な名前をこんな人間風情に教えた自分が信じられなかった。
暖は懸命にネモの足を擦っている。
小さな掌からぬくもりが伝わった。
(この温かさがいけないのかもしれない……)
いつまでも浸って動きたくなくなるような心地良さが――――
ネモは、まぶたがゆっくりと落ちてくるのを感じた。
意識が蕩けそうに、気持ちいい。
体から、余計な力が抜けて温かさが満ちる。
「大丈夫。何カアレバ声、出シマス」
(……そういう事じゃない)
この人間はバカだと思いながら、ネモは意識を手放す。
そんなバカに身を任せて眠る自分は、もっとバカだと思いながら……ネモは満足して眠った。
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