まだまだこれからだ!

九重

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第二章 平穏な日々ばかりではないようです。

食いしん坊な小人

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 あの後、結局小人は意識を取り戻さず、うららは心配しながらもウルフィアの家を離れた。

 翌日の早朝行って見れば、皿は空になり小人はグゥグゥ眠っていた。
 見た目とは違い、案外図太い神経の小人のようだ。

「心配して損したわ」

 ブツブツ言いながらも暖は皿を洗い新たに食事を作った。
 そのまま様子を見たが、起きる気配のない小人にため息をつきつつ家を離れる。
 次の日も、暖が見に行けば皿は空で小人は眠っていた。
 また食事を作り、暖は帰る。

 ディアナや他の人には小人の話をしなかった。
 あんまり小人が拒否していたので、彼の同意なしに打ち明けるのは告げ口するみたいで嫌だったのだ。

(別に、ディアナが本当に小人を鍋で煮て食べるなんて思っていないけど……)




 ――――そんな日がもう三日続いていた。
 小人が起きているところは見ないが、皿が毎回空っぽになっているからには、彼は動けないわけではないのだろう。

「傷も治っているみたいだし」

 少なくとも体の表面に目立つ傷はない。
 血色も良くなっていて、暖はホッと息を吐く。

「夜行性なのかしら?」

 首を傾げながら、暖はその日も小人のための食事を作っていた。
 そんな彼女に――――

「もっと、食べごたえのある肉とか魚が食べたい」

 突如声をかけられて、暖は慌てて振り向いた。

「小人サン! 起キタノ!?」

「うるさい。怒鳴らなくとも聞こえる」

 見れば、棚の上で小人があくびをしながら立ち上がっていた。

「ケガハ? 体調ハドウ? ドコモ痛クナイ」

 矢継ぎ早な暖の質問に、小さな顔が不機嫌そうにしかめられる。

「体はすこぶる良好だ。あれだけの傷を負ったのに、この回復の早さは異常と思えるが、だからと言ってありえないという程ではない。しかも、お前の力と確信も出来ないし……微妙なところだな」

 ブツブツと小人は呟いている。その様子はなんだか不満そうだ。
 とはいえ、元気になったのならなによりだと暖は思った。

「良カッタ」

 心からそう言えば小人は驚いたような顔をする。

「どこまで、お前はお人好しなんだ」

 そう言って顔をしかめた。

「オ人好シ、違ウ。普通ヨ」

 暖が否定すれば、小人は今度は舌打ちする。

「それより肉だ。もっと体力のつきそうな食い物を用意しろ」

 あげく偉そうに命令してくる。
 暖は、ちょっと考え込んだ。

「シチューデイイ?」

「何でも良いから早くしろ!」

 この日から、小人は暖にいろいろと命令するようになったのだった。


   ◇◇◇


「今日は、この前食べたミートパイが食いたい」 

「パイ? パイ ソンナ直グニ出来ナイ」

「チッ! 役立たずめ。だったらホットケーキにしろ! バターと蜂蜜たっぷりだぞ!」

「太ルンジャナイ?」

「俺が太るわけないだろう!」

 ポンポンに膨れたお腹で、小人は怒鳴る。
 あまりに説得力のない反論に、暖は呆れはてる。

 小人をウルフィアの家に匿ってから一週間。
 今日は、ハンバーグ。今日は、肉じゃが、明日は唐揚げ――――等々、小人はワガママ三昧に、毎日暖に食事を要求してくる。

(まあ、小人だからちょっぴりで良いし、余り物をディアナ達に回せるから良いけれど)

 最近料理が豪華になったとディアナは喜んでいる。
 なんだか申し訳ないなと思ってしまう暖だ。


 今日も今日とて、暖は小人に料理をしていたのだが――――

「食べたら外へ出たい」

 小人は、そう言った。

「ディアナニ、会ウ気、ナッタ?」

「魔女は嫌いだと言っただろう!」

 嫌いではなく食べられると怖がっていたようだったが――――

(まあ、怖いものが嫌いなのは当たり前なのかも?)

 そう思った暖は、そこは突っ込まないことにする。

「誰にも見つからないように案内しろ」

「エ? ナンデ?」

「俺は、見つかれば殺される」

 小人は、その外見に似合わぬ苦い笑みを浮かべながら、そう言った。 

「ソンナコトナイ。ココノ皆、優シイ」 

「俺はお前のようなお気楽者じゃない。外にいる者は全員、敵だ」

 小人の言葉に、暖はビックリした。

「……デモ、ジャア、私ハ敵ジャナイノネ。良カッタ」

 暖の言葉を聞いて、小人はガックリ項垂れた。

「どこでどう育ったら、お前みたいなお気楽人間が出来るんだ?」

 失礼なと思いながらも、暖は「アハハ」と笑う。
 まさか、異世界の日本ですとは、流石に言えなかった暖だった。
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