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第二章 平穏な日々ばかりではないようです。
あらわれた小人
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そんな日々の中、暖が”彼”を見つけたのは、ネモの家からの帰り道だった。
小さな小さな、小人。
トンガリ帽子に緑の服を着て、明らかにサイズが合っていない大きな靴を履いた、親指くらいの大きさの子供。
まるでおとぎ話から抜け出たような小人が、黒い目に涙を浮かべ、道の真ん中でうずくまっていた。
「キャッ!」
思わず踏み潰しそうになった暖は、慌てて片足跳びをする。
ケンケンと大地を蹴って、ふらつきながらなんとか体制を立て直した。
「ダ、大丈夫!?」
声をかけても返事はない。
小人はプルプル震えていた。
見れば、あちこち傷だらけで顔色も青い。
「ドウシタノ?」
ここにいるということは、この小人も村の住人なのだろうか?
それにしては一度も姿を見たことがなかった。
返事のない小人に、それでも繰り返し優しくたずねれば、数度目の問いかけでようやく「助けて」と消え入りそうな声で話す。
暖は両手で小人をすくいあげた。
ビクッと体を震わせた小人は、しかし暖から逃げようとはしない。
いや、弱り過ぎていて逃げられないのかもしれなかった。
「どうしよう? とりあえずディアナに――――」
日本語で呟く暖。
小人には通じないはずなのだが「ディアナ」と彼女が言った途端、小人は大きな声で泣き出した。
「魔女、恐い。俺を生け贄にするのか?」
ジタバタと、暖の手の上で暴れ出す小人。
「キャ! 落ちる! ちょっ! ……大人シクシテ!」
暖は、両手を閉じるようにして小人をつかまえた。
動けなくなった小人は大きな目に涙をいっぱいためて暖を見上げる。
「生け贄イヤだ。いっそ、ひと思いに殺してくれ!」
「ディアナハ、アナタ、生ケ贄シナイヨ」
「嘘だ! 魔女は俺たち小人を鍋で煮詰めて食べてしまうんだ!」
「鍋――――」
恐怖に青ざめる小人。いったい彼にとって魔女はどんなイメージなのだろう?
これでは何をどう言っても、小人を説得出来そうになかった。
(ディアナの所に連れて行くのは、ムリそうね)
とはいえこのままにするわけにもいかないだろう。
暖は他に小人を助けてくれそうな者を考える。
「竜ハ?」
「潰される!」
「エルフ、ナラ平気?」
「消されてしまう!」
「ドワーフ?」
「殴られる!」
「吸血鬼ハ?」
「……(ガクブル)」
結果、小人はどんな相手でも恐いようだった。
プルプル震え、ついには「ひと思いに殺せ!」と叫んで暴れ出す。
暖は大きなため息をついた。
「仕方ナイ。本当ハ、チャント傷、治療シタ方ガ良イケド」
そう言いながら小人を抱えて歩き出す暖。
「俺をどこに連れて行くんだ?」
「留守番、シテイル家、アル。トリアエズ、ソコ行ク。誰モ、イナイケド、イタズラ、ダメ」
暖が向かったのはウルフィアの家だった。
彼女は留守の間の定期的な掃除をウルフィアから任されていて、鍵を預かっているのだ。
小人を連れて行った暖は、ウルフィアの家の棚の一つに布を敷き詰め小さな簡易ベッドを作った。
そこに小人を寝かせて鍋で湯を沸かしはじめる。
「俺を食べるのか?」
「そんなわけないでしょう!」
本当に、いったい小人はどんな思考回路をしているのだろう?
暖はため息をつきながら沸かした湯で布を濡らした。
丁度良い温度に冷まして小人の体を拭う。
「熱クナイ?」
傷に気を付けながら汚れを落としていった。
「本当ハ、オ風呂、入ル、良インダケド」
体力の落ちている小人に、それは出来ないだろう。
その分、暖は丁寧に丁寧に汚れを落としていった。
泥を落としよく見れば、小人は可愛い顔をしている。
「服ヲ脱イデ」
「やっぱり、食べるのか?」
「違ウ! 言ッテル、デショウ!」
どこまでいっても食べられる妄想の小人の服を、暖は容赦なく脱がす。
嫌がる小人を押さえて隅々までキレイにした。
もちろん、あんなところやこんなところも拭いてやったが、人形相手のようなもので暖はへっちゃらだ。
小人は、……真っ赤になってフルフルと震えていた。
「この俺に、よくもこんな事を!」
涙目で睨みつけられる。
「ハイハイ」
適当に返事をしながら、暖はテキパキと小人の傷の処置をした。
「こんな事しなくても、魔法で治せば良いだろ!」
ついに小人が怒鳴る。
暖はキョトンとした。
「エ? コノ世界、治癒魔法、ナイヨネ?」
「お、お前は! 治癒魔法が使えるんだろう!?」
暖は驚きながら首を横に振った。
いったいぜんたいどんな理由で、小人はそんな誤解をしているのだろう?
「私、魔法、使エナイ」
「はぁ~?」
「魔法ナンテ、ドウスレバ使エルノカ、サッパリワカラナイ」
あっさりと暖が言えば、小人はポカンとしてフリーズする。
暖はその間に小人をふんわかタオルに包みこんだ。
「バカな。そんなバカな。……だったら、なんで俺はこんな苦労をして、ここに――――」
ブツブツと呟きはじめる小人。
それにはかまわず、暖はウルフィアの残した保存食のクッキーを粉ミルクで煮はじめる。
お砂糖や香料を足して柔らかく煮立たせた。
「食ベラレタラ食ベテ。オ腹、減ル、元気出ナイ」
トンと目の前に皿を置けば、小人は呆然と暖を見上げてくる。
「本当に、魔法を使えないんだな?」
「ソウヨ」
「……この村に、他に治癒魔法が使える奴はいるか?」
「聞イタコトナイ。サア、食ベテ。熱イ、気ヲツケテ」
暖と皿を交互に見つめる小人。
次の瞬間、フラア~っとふらついた小人は、そのままパタリと倒れて意識を失った。
「え? ちょっと! 大丈夫?」
暖の慌てた声がウルフィアの家に響いた。
小さな小さな、小人。
トンガリ帽子に緑の服を着て、明らかにサイズが合っていない大きな靴を履いた、親指くらいの大きさの子供。
まるでおとぎ話から抜け出たような小人が、黒い目に涙を浮かべ、道の真ん中でうずくまっていた。
「キャッ!」
思わず踏み潰しそうになった暖は、慌てて片足跳びをする。
ケンケンと大地を蹴って、ふらつきながらなんとか体制を立て直した。
「ダ、大丈夫!?」
声をかけても返事はない。
小人はプルプル震えていた。
見れば、あちこち傷だらけで顔色も青い。
「ドウシタノ?」
ここにいるということは、この小人も村の住人なのだろうか?
それにしては一度も姿を見たことがなかった。
返事のない小人に、それでも繰り返し優しくたずねれば、数度目の問いかけでようやく「助けて」と消え入りそうな声で話す。
暖は両手で小人をすくいあげた。
ビクッと体を震わせた小人は、しかし暖から逃げようとはしない。
いや、弱り過ぎていて逃げられないのかもしれなかった。
「どうしよう? とりあえずディアナに――――」
日本語で呟く暖。
小人には通じないはずなのだが「ディアナ」と彼女が言った途端、小人は大きな声で泣き出した。
「魔女、恐い。俺を生け贄にするのか?」
ジタバタと、暖の手の上で暴れ出す小人。
「キャ! 落ちる! ちょっ! ……大人シクシテ!」
暖は、両手を閉じるようにして小人をつかまえた。
動けなくなった小人は大きな目に涙をいっぱいためて暖を見上げる。
「生け贄イヤだ。いっそ、ひと思いに殺してくれ!」
「ディアナハ、アナタ、生ケ贄シナイヨ」
「嘘だ! 魔女は俺たち小人を鍋で煮詰めて食べてしまうんだ!」
「鍋――――」
恐怖に青ざめる小人。いったい彼にとって魔女はどんなイメージなのだろう?
これでは何をどう言っても、小人を説得出来そうになかった。
(ディアナの所に連れて行くのは、ムリそうね)
とはいえこのままにするわけにもいかないだろう。
暖は他に小人を助けてくれそうな者を考える。
「竜ハ?」
「潰される!」
「エルフ、ナラ平気?」
「消されてしまう!」
「ドワーフ?」
「殴られる!」
「吸血鬼ハ?」
「……(ガクブル)」
結果、小人はどんな相手でも恐いようだった。
プルプル震え、ついには「ひと思いに殺せ!」と叫んで暴れ出す。
暖は大きなため息をついた。
「仕方ナイ。本当ハ、チャント傷、治療シタ方ガ良イケド」
そう言いながら小人を抱えて歩き出す暖。
「俺をどこに連れて行くんだ?」
「留守番、シテイル家、アル。トリアエズ、ソコ行ク。誰モ、イナイケド、イタズラ、ダメ」
暖が向かったのはウルフィアの家だった。
彼女は留守の間の定期的な掃除をウルフィアから任されていて、鍵を預かっているのだ。
小人を連れて行った暖は、ウルフィアの家の棚の一つに布を敷き詰め小さな簡易ベッドを作った。
そこに小人を寝かせて鍋で湯を沸かしはじめる。
「俺を食べるのか?」
「そんなわけないでしょう!」
本当に、いったい小人はどんな思考回路をしているのだろう?
暖はため息をつきながら沸かした湯で布を濡らした。
丁度良い温度に冷まして小人の体を拭う。
「熱クナイ?」
傷に気を付けながら汚れを落としていった。
「本当ハ、オ風呂、入ル、良インダケド」
体力の落ちている小人に、それは出来ないだろう。
その分、暖は丁寧に丁寧に汚れを落としていった。
泥を落としよく見れば、小人は可愛い顔をしている。
「服ヲ脱イデ」
「やっぱり、食べるのか?」
「違ウ! 言ッテル、デショウ!」
どこまでいっても食べられる妄想の小人の服を、暖は容赦なく脱がす。
嫌がる小人を押さえて隅々までキレイにした。
もちろん、あんなところやこんなところも拭いてやったが、人形相手のようなもので暖はへっちゃらだ。
小人は、……真っ赤になってフルフルと震えていた。
「この俺に、よくもこんな事を!」
涙目で睨みつけられる。
「ハイハイ」
適当に返事をしながら、暖はテキパキと小人の傷の処置をした。
「こんな事しなくても、魔法で治せば良いだろ!」
ついに小人が怒鳴る。
暖はキョトンとした。
「エ? コノ世界、治癒魔法、ナイヨネ?」
「お、お前は! 治癒魔法が使えるんだろう!?」
暖は驚きながら首を横に振った。
いったいぜんたいどんな理由で、小人はそんな誤解をしているのだろう?
「私、魔法、使エナイ」
「はぁ~?」
「魔法ナンテ、ドウスレバ使エルノカ、サッパリワカラナイ」
あっさりと暖が言えば、小人はポカンとしてフリーズする。
暖はその間に小人をふんわかタオルに包みこんだ。
「バカな。そんなバカな。……だったら、なんで俺はこんな苦労をして、ここに――――」
ブツブツと呟きはじめる小人。
それにはかまわず、暖はウルフィアの残した保存食のクッキーを粉ミルクで煮はじめる。
お砂糖や香料を足して柔らかく煮立たせた。
「食ベラレタラ食ベテ。オ腹、減ル、元気出ナイ」
トンと目の前に皿を置けば、小人は呆然と暖を見上げてくる。
「本当に、魔法を使えないんだな?」
「ソウヨ」
「……この村に、他に治癒魔法が使える奴はいるか?」
「聞イタコトナイ。サア、食ベテ。熱イ、気ヲツケテ」
暖と皿を交互に見つめる小人。
次の瞬間、フラア~っとふらついた小人は、そのままパタリと倒れて意識を失った。
「え? ちょっと! 大丈夫?」
暖の慌てた声がウルフィアの家に響いた。
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