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第二章 平穏な日々ばかりではないようです。
竜のウロコ磨きは力仕事です
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そんな大騒ぎがあった三日後。
「ソコ! モット、丁寧ニ!」
どこか舌足らずながらも、キリッとした声が、長閑な村に響く。
「クソッ! なんで、この俺が、こんなことを」
頭の両脇に立派な巻角を生やした青年が、悔しそうに嘆いた。
「シッカリ、磨ク!」
デッキブラシを片手に仁王立ちになった暖は、青年――――ダンケルを叱りつける。
村の外れの竜の住処。
いつものように暖はギオルのウロコを磨いている。
今日は、そこにダンケルの姿もあった。
しかも、彼もデッキブラシを持たされてゴシゴシとギオルのウロコをこすっている。
「長生きはするものだな。よもや魔族に体を磨かれるとは思いもしなかった」
流石のギオルも呆れていた。
「ダンケル、力、強イ。ウロコ、キレイ磨ケル。ギオル、良カッタネ」
ニコニコと暖は上機嫌に話す。
ダンケルは、この世の終わりみたいな顔でウロコを磨いていた。
誰も思いもよらなかった光景がここにある。
――――三日前、暖は強制的にダンケルと契約を結ばされてしまった。
そして彼からこんな提案を受けたのだ。
「ウララ、お前が望むのなら俺は世界征服でもなんでもしてやろう。……さあ、望みを言え」
もちろん暖の望みなんて決まっている。
「契約、解除シテ」
「……それは、ダメだ」
なんでも叶えると言ったくせにやっぱり嘘つきな小人――――いやダンケルである。
真由は、ムウッと頬を膨らませた。次の望みを考える。
「本当ニ、ナンデモイイ?」
「あぁ。契約の解除以外ならな。……お前の望みは、何だ? 富か? 栄誉か?」
小人から一変、細マッチョな青年魔族となったダンケルは、偉そうに言うだけあって逞しく頼りがいがありそうに見える。
あちこちにまだ傷や青あざはあるけれど、確かになんでもできそうだった。
だから暖は、遠慮なく望みを叶えてもらうことにする。
「ダッタラ、コレ持ッテ」
ニッコリ笑った暖がダンケルに渡したのが、1本のデッキブラシだった。
「………………俺が! この俺が! どうして竜のウロコ磨きなど!」
次の日から問答無用でギオルの元に連れて来られてウロコ磨きを命じられ、ダンケルの不満は爆発寸前にまで高まっている。
「ダンケル、ナンデモスル、言ッタ」
「だからって、ウロコ磨きはないだろう!」
「ワガママ、言ワナイ」
「これは、ワガママなのか!?」
ダンケルの心からの叫びを、暖はあっさり聞き流す。
実は彼女は、以前からギオルのウロコをもっとキレイに磨いてやりたいと思っていたのだ。しかし、悲しいことに女性の腕では力が足りず、落ちない汚れを悔しく思っていた。
そこに、細マッチョで十分力のありそうなダンケルから「何でもしてやる」という気前のよい申し出があったのだ。
暖が喜んで申し出を受けたのは、当然のことだろう。
隷属の契約のせいで、ダンケルは暖の命令に逆らえない。
力が強くその分プライドも山のように高い魔族が、デッキブラシを持って泣く泣く竜のウロコを磨いていた。
その姿は、魔族を好かないギオルでさえなんだか可哀想になってしまうくらいだ。
しかも、暖の勢いは、これだけで止まらなかった。
「俺のしたいのは、こんなことではないんだ!」
ダンケルの必死の訴えを聞いて、だったら次はディアナの家の掃除を手伝って欲しいと暖は望む。
その次はネモの散歩、次はラミアー用のお料理作り等々、暖は容赦なくダンケルに望みを告げた。
嫌々ながらにダンケルは、彼女の望みを叶えていく。
「……そのうち、エルフの精神相談にのれとか言うんじゃないか?」
ある日の昼下がり、命じられたリオールの家の庭にある露天風呂の掃除をしながらダンケルは呟いていた。
エルフの聖気が満ちたリオールの家だが、庭ならなんとかダンケルでも居ることができるのだ。
毎日毎日暖の手伝いをさせられた魔族の目は、すっかり諦めを宿していた。
「お断りです!」
ダンケルのぼやきにリオールは憤然とする。
「俺だってお断りだ」
ダンケルもブスッとして返した。
魔族とエルフは睨みあい…………フンと顔を逸らす。
今、暖はここにいなかった。
ディアナにマッサージを命じられたためそちらを優先させたのだ。
暖がいないため、エルフと魔族は互いの嫌悪を隠さずいがみ合う。
言葉を交わすのも嫌そうにしていた二人だったが――――
「……それにしても、あの王子は、不憫だな」
独り言のように、しみじみと呟いたダンケルの言葉に、リオールはハッとした。
「ソコ! モット、丁寧ニ!」
どこか舌足らずながらも、キリッとした声が、長閑な村に響く。
「クソッ! なんで、この俺が、こんなことを」
頭の両脇に立派な巻角を生やした青年が、悔しそうに嘆いた。
「シッカリ、磨ク!」
デッキブラシを片手に仁王立ちになった暖は、青年――――ダンケルを叱りつける。
村の外れの竜の住処。
いつものように暖はギオルのウロコを磨いている。
今日は、そこにダンケルの姿もあった。
しかも、彼もデッキブラシを持たされてゴシゴシとギオルのウロコをこすっている。
「長生きはするものだな。よもや魔族に体を磨かれるとは思いもしなかった」
流石のギオルも呆れていた。
「ダンケル、力、強イ。ウロコ、キレイ磨ケル。ギオル、良カッタネ」
ニコニコと暖は上機嫌に話す。
ダンケルは、この世の終わりみたいな顔でウロコを磨いていた。
誰も思いもよらなかった光景がここにある。
――――三日前、暖は強制的にダンケルと契約を結ばされてしまった。
そして彼からこんな提案を受けたのだ。
「ウララ、お前が望むのなら俺は世界征服でもなんでもしてやろう。……さあ、望みを言え」
もちろん暖の望みなんて決まっている。
「契約、解除シテ」
「……それは、ダメだ」
なんでも叶えると言ったくせにやっぱり嘘つきな小人――――いやダンケルである。
真由は、ムウッと頬を膨らませた。次の望みを考える。
「本当ニ、ナンデモイイ?」
「あぁ。契約の解除以外ならな。……お前の望みは、何だ? 富か? 栄誉か?」
小人から一変、細マッチョな青年魔族となったダンケルは、偉そうに言うだけあって逞しく頼りがいがありそうに見える。
あちこちにまだ傷や青あざはあるけれど、確かになんでもできそうだった。
だから暖は、遠慮なく望みを叶えてもらうことにする。
「ダッタラ、コレ持ッテ」
ニッコリ笑った暖がダンケルに渡したのが、1本のデッキブラシだった。
「………………俺が! この俺が! どうして竜のウロコ磨きなど!」
次の日から問答無用でギオルの元に連れて来られてウロコ磨きを命じられ、ダンケルの不満は爆発寸前にまで高まっている。
「ダンケル、ナンデモスル、言ッタ」
「だからって、ウロコ磨きはないだろう!」
「ワガママ、言ワナイ」
「これは、ワガママなのか!?」
ダンケルの心からの叫びを、暖はあっさり聞き流す。
実は彼女は、以前からギオルのウロコをもっとキレイに磨いてやりたいと思っていたのだ。しかし、悲しいことに女性の腕では力が足りず、落ちない汚れを悔しく思っていた。
そこに、細マッチョで十分力のありそうなダンケルから「何でもしてやる」という気前のよい申し出があったのだ。
暖が喜んで申し出を受けたのは、当然のことだろう。
隷属の契約のせいで、ダンケルは暖の命令に逆らえない。
力が強くその分プライドも山のように高い魔族が、デッキブラシを持って泣く泣く竜のウロコを磨いていた。
その姿は、魔族を好かないギオルでさえなんだか可哀想になってしまうくらいだ。
しかも、暖の勢いは、これだけで止まらなかった。
「俺のしたいのは、こんなことではないんだ!」
ダンケルの必死の訴えを聞いて、だったら次はディアナの家の掃除を手伝って欲しいと暖は望む。
その次はネモの散歩、次はラミアー用のお料理作り等々、暖は容赦なくダンケルに望みを告げた。
嫌々ながらにダンケルは、彼女の望みを叶えていく。
「……そのうち、エルフの精神相談にのれとか言うんじゃないか?」
ある日の昼下がり、命じられたリオールの家の庭にある露天風呂の掃除をしながらダンケルは呟いていた。
エルフの聖気が満ちたリオールの家だが、庭ならなんとかダンケルでも居ることができるのだ。
毎日毎日暖の手伝いをさせられた魔族の目は、すっかり諦めを宿していた。
「お断りです!」
ダンケルのぼやきにリオールは憤然とする。
「俺だってお断りだ」
ダンケルもブスッとして返した。
魔族とエルフは睨みあい…………フンと顔を逸らす。
今、暖はここにいなかった。
ディアナにマッサージを命じられたためそちらを優先させたのだ。
暖がいないため、エルフと魔族は互いの嫌悪を隠さずいがみ合う。
言葉を交わすのも嫌そうにしていた二人だったが――――
「……それにしても、あの王子は、不憫だな」
独り言のように、しみじみと呟いたダンケルの言葉に、リオールはハッとした。
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