95 / 102
第四章 選んだ先の未来へ向かいます!
魔族はしぶとい生き物だそうです
しおりを挟む
暖の顔から、サーッと、血の気が引いていく。
「キャァ! ヤリ過ギ、止メテ!」
慌てて二人を止めようとした。
「オ願イ! 魔族、ミンナ、悪イ違ウ! ヤリ過ギ、ダメ!」
暖の必死の訴えを聞いたリオールは、感じいったように目を閉じる。
「あぁ、やっぱり、ウララは優しいですね」
目を閉じているのに彼から吹き荒れる風がピンポイントで魔族の兵士をぶっ飛ばしているのはなぜだろう?
「大丈夫ですよ。魔族はしぶとい生き物ですからね」
目を開け美しく微笑むリオール。
彼の背後には、崩れた天井からロケットみたいに飛ばされていくトカゲの魔族が見えた。
「そうそう、俺だって往時の力の十分の一しか出しておらんぞ。この程度で死ぬ魔族などおらんだろう」
ガハハと笑うネモは、倒した魔族の山に新たな一体を積み上げた。
その途端、魔族の重みに耐えかねた床が崩壊し積まれた魔族が、ドドドッ! と下に落ちていく。
「おっと」
穴から飛び退いたネモは、下を覗いて顔を強張らせた。
「……うん、まあ、たぶん大丈夫だろう?」
引きつった笑みで、そう話す。
……本当だろうか?
限りなく疑わしかった。
ともかく、何はともあれ、落ち着かなければと思った暖は、あらためて周囲を確認する。
暖の側にはアルディアがいて、二人をウルフィアが守っていた。
廊下では、リオールとネモが近づく魔族兵を蹴散らしている。
同じ廊下の奥の方にイノトがいて、気絶したブラットを必死で守ろうとしていた。
モノアと正妃は、部屋の隅で寄り添い呆然としている。
外では相変わらず、ドドォ~ン! ガガガァ~ン! という派手な音が響いていて、ギオルが戦っていると思われた。
そして、部屋の奥にはディアナとラミアーが立っている。
二人の視線の先では、魔王とダンケルが戦っていた。
親子の戦いは一進一退に見えるが、よく見ればダンケルは傷だらけで魔王はピンピンしている。
魔力だけは強いと言われる魔王の実力は、確かなようだ。
しかし、血を流しながらもダンケルの表情は明るかった。
「父上、もう諦めてください。ウララは無事保護されました。今の彼女に手を出すことは誰にもできません」
満身創痍の彼の言葉は正しい。
この状況で魔王が暖を奪い返すことは、天地がひっくり返っても有り得ないことだ。
魔王は、醜く顔を歪める。
強い視線で暖を睨みつけ……しかし次には、大きな声で笑いはじめた。
「ハハハ、そうとは限らぬぞ。ここは魔界で私は魔王だ。この場で私の自由にならぬことはない!」
そんなことを言い出す。
「ふむ。相変わらず阿呆じゃな」
「おかしな悪あがきをする前に、潰した方が良くはなぁい?」
顔をしかめたディアナと呆れた様子のラミアーが、真剣に話し合う。
「私が行きます! ウララにカッコイイところを見てもらうんです!」
言うなりリオールは走り出した。
「あ! おい! 抜け駆けとは卑怯だぞ」
慌てたネモも後ろをついて行く。
「必要ない! わしだけで十分じゃ!」
ディアナが叫び、
「あらいやだ。私だって少しは手応えのある相手と遊びたいわ」
ラミアーも珍しくやる気満々で前に出る。
『我のことも忘れるな』
天井から、ヌッとギオルまで顔を出した。
全員が全員、魔王に向かって迫っていく。
絶体絶命の魔王は――――ニッと、笑った。
「吹き飛べ! 人間の王と騎士よ!」
魔王の力ある言葉が、この中で防御の力を持たぬ人間二人に向けられる。
「え?」
気がつけば、アルディアとウルフィアがまとめて吹き飛ばされていた。
「ちっ! 小癪なことを」
舌打ちしたディアナが瞬間移動し、二人をまとめて受け止める。
「ウララ!」
焦ったアルディアの声が響いた。
気づけば、暖の周囲には誰も立っていない。
彼女は、みんなから切り離されたのだった。
「キャァ! ヤリ過ギ、止メテ!」
慌てて二人を止めようとした。
「オ願イ! 魔族、ミンナ、悪イ違ウ! ヤリ過ギ、ダメ!」
暖の必死の訴えを聞いたリオールは、感じいったように目を閉じる。
「あぁ、やっぱり、ウララは優しいですね」
目を閉じているのに彼から吹き荒れる風がピンポイントで魔族の兵士をぶっ飛ばしているのはなぜだろう?
「大丈夫ですよ。魔族はしぶとい生き物ですからね」
目を開け美しく微笑むリオール。
彼の背後には、崩れた天井からロケットみたいに飛ばされていくトカゲの魔族が見えた。
「そうそう、俺だって往時の力の十分の一しか出しておらんぞ。この程度で死ぬ魔族などおらんだろう」
ガハハと笑うネモは、倒した魔族の山に新たな一体を積み上げた。
その途端、魔族の重みに耐えかねた床が崩壊し積まれた魔族が、ドドドッ! と下に落ちていく。
「おっと」
穴から飛び退いたネモは、下を覗いて顔を強張らせた。
「……うん、まあ、たぶん大丈夫だろう?」
引きつった笑みで、そう話す。
……本当だろうか?
限りなく疑わしかった。
ともかく、何はともあれ、落ち着かなければと思った暖は、あらためて周囲を確認する。
暖の側にはアルディアがいて、二人をウルフィアが守っていた。
廊下では、リオールとネモが近づく魔族兵を蹴散らしている。
同じ廊下の奥の方にイノトがいて、気絶したブラットを必死で守ろうとしていた。
モノアと正妃は、部屋の隅で寄り添い呆然としている。
外では相変わらず、ドドォ~ン! ガガガァ~ン! という派手な音が響いていて、ギオルが戦っていると思われた。
そして、部屋の奥にはディアナとラミアーが立っている。
二人の視線の先では、魔王とダンケルが戦っていた。
親子の戦いは一進一退に見えるが、よく見ればダンケルは傷だらけで魔王はピンピンしている。
魔力だけは強いと言われる魔王の実力は、確かなようだ。
しかし、血を流しながらもダンケルの表情は明るかった。
「父上、もう諦めてください。ウララは無事保護されました。今の彼女に手を出すことは誰にもできません」
満身創痍の彼の言葉は正しい。
この状況で魔王が暖を奪い返すことは、天地がひっくり返っても有り得ないことだ。
魔王は、醜く顔を歪める。
強い視線で暖を睨みつけ……しかし次には、大きな声で笑いはじめた。
「ハハハ、そうとは限らぬぞ。ここは魔界で私は魔王だ。この場で私の自由にならぬことはない!」
そんなことを言い出す。
「ふむ。相変わらず阿呆じゃな」
「おかしな悪あがきをする前に、潰した方が良くはなぁい?」
顔をしかめたディアナと呆れた様子のラミアーが、真剣に話し合う。
「私が行きます! ウララにカッコイイところを見てもらうんです!」
言うなりリオールは走り出した。
「あ! おい! 抜け駆けとは卑怯だぞ」
慌てたネモも後ろをついて行く。
「必要ない! わしだけで十分じゃ!」
ディアナが叫び、
「あらいやだ。私だって少しは手応えのある相手と遊びたいわ」
ラミアーも珍しくやる気満々で前に出る。
『我のことも忘れるな』
天井から、ヌッとギオルまで顔を出した。
全員が全員、魔王に向かって迫っていく。
絶体絶命の魔王は――――ニッと、笑った。
「吹き飛べ! 人間の王と騎士よ!」
魔王の力ある言葉が、この中で防御の力を持たぬ人間二人に向けられる。
「え?」
気がつけば、アルディアとウルフィアがまとめて吹き飛ばされていた。
「ちっ! 小癪なことを」
舌打ちしたディアナが瞬間移動し、二人をまとめて受け止める。
「ウララ!」
焦ったアルディアの声が響いた。
気づけば、暖の周囲には誰も立っていない。
彼女は、みんなから切り離されたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる