96 / 102
第四章 選んだ先の未来へ向かいます!
……再会
しおりを挟む
暖にかけられた自動防御魔法は完璧だ。
なにせ、落ちたる竜王とエルフの失われた王、神を堕落させた吸血姫、世界を二度滅ぼしかけた魔女が、全員一度に攻撃したくらいの威力なのだ。
だからこそ、誰の心にも隙があったのだろう。
まさか、魔王がこんな手段を取るとは思わなかったのだ。
焦るアルディアたちの耳に、魔王の声が聞こえる。
「――――開け! 異世界への扉! この娘と最も近しい者の元へ!――――」
同時に部屋の一角が光りはじめた。
暖を中心に、アルディアたちとは正反対の場所にユラユラとした光の壁が現れる。
光は徐々に固定され、姿見くらいの大きさになった。
やがて、キラキラとしたきらめきが落ち着き、表面が透明な水面のようになる。
その水面の向こうに、白いベッドに身を起こすほっそりとした女性の姿が映った。
女性は大きく目を見開き、こちらを――――暖を凝視している。
『お姉ちゃん!』
女性はそう叫んだ。
歓喜に満ちた泣き声だ。
「喜ぶがいい、ウララ。私がお前の帰り道を繋いでやったぞ! その光に飛び込めばお前は元の世界に帰れる! …………我のものにならぬのなら、永遠にこの世界から失われてしまえ!」
魔王はそう叫ぶとカラカラと笑った。
光の中にいるのは間違いなく暖の妹の陽詩であり、魔王の言葉が真実ならば水面の向こうの世界は日本なのだ。
『お姉ちゃん、お姉ちゃん! あぁ、夢じゃないわよね!』
涙をポロポロとこぼしながら陽詩が叫ぶ。
「……陽詩? ……本当に?」
暖は大きく目を見開いた。
信じられずにパチパチと何度もまばたきを繰り返すが、映像は消えない。
……暖の目から、涙がこぼれはじめた。
そんな暖の姿を見、ディアナは大きく舌打ちをする。
「クソ魔王! 相変わらず、やり口が最低じゃ!」
『貴様!』
怒りをあらわにしたギオルが上空に飛び上がり巨大な尾を一閃! 器用に魔王だけを狙い壁にドガン! と叩きつけた。
壁にめり込んだ魔王は、口から血を流しながらもクックッと笑う。
「ウララの周囲には強力な結界を張った。視覚や聴覚を遮断することはできないが、お前たちからウララに直接触れることは不可能だ。……そこで指をくわえて大切な娘が異世界に帰る姿を見送るがいい」
本当に性格の悪い魔王だった。
「ウララ!」
魔王の言葉は真実で、駆け寄ろうとしたリオールの体が結界にぶつかり阻まれる。
「退け! 俺がやる!」
遅れて駆けつけたネモが、ドワーフ渾身の一撃を結界に叩きつけた!
しかし結界はびくともせず、反対にネモの方が弾き飛ばされる。
老ドワーフは、悔しそうに歯噛みした。
「――――無駄だ。他の場所ならともかく、この魔界の中で我の作った結界を打ち破ることなど、簡単にはできん」
魔王の言葉を聞いたリオールは、拳を握り締め立ち尽くした。
魔王は不可能とは言い切らなかった。
しかし、簡単にできないということは、つまりは時間がかかるということだ。
手間取れば、その間に暖は日本に帰ってしまうかもしれない。
――――そう、今この瞬間にも、暖はあの光の中に飛び込んでしまうかもしれないのだ。
「ウララ!」
「ウララ!」
必死のリオールやネモの声が聞こえないのか、当の暖は呆然として光の中を見ていた。
『お姉ちゃん!』
映像の中では、陽詩がベッドから降りようと体を動かす。
病弱な暖の妹は、床に足をつけた途端フラフラと体勢を崩した。
「陽詩!」
思わず暖は叫んでしまう。
その時――――
『陽詩! 何をしている!?』
光の中から新たな声が響いた。
しっかりとした男の声で、命令することに慣れた響きを持っている。
声の持ち主は、どこからか映像の中に現れ陽詩に近寄ると、その体を支えた。
水面のような光が映すのは背の高い美丈夫だ。――――言わずと知れた、暖の義弟である。
『正樹さん! お姉ちゃんが、あそこに!』
陽詩の声で、義弟――――正樹がこちらを向いた。
彼は、大きく目を見開く。
『暖!? お前は! ……なんて格好をしているんだ!』
やっぱり男性が一番に目につくのはそこなのか。
正樹は、目を三角にして怒鳴りつけてきた。
なにせ、落ちたる竜王とエルフの失われた王、神を堕落させた吸血姫、世界を二度滅ぼしかけた魔女が、全員一度に攻撃したくらいの威力なのだ。
だからこそ、誰の心にも隙があったのだろう。
まさか、魔王がこんな手段を取るとは思わなかったのだ。
焦るアルディアたちの耳に、魔王の声が聞こえる。
「――――開け! 異世界への扉! この娘と最も近しい者の元へ!――――」
同時に部屋の一角が光りはじめた。
暖を中心に、アルディアたちとは正反対の場所にユラユラとした光の壁が現れる。
光は徐々に固定され、姿見くらいの大きさになった。
やがて、キラキラとしたきらめきが落ち着き、表面が透明な水面のようになる。
その水面の向こうに、白いベッドに身を起こすほっそりとした女性の姿が映った。
女性は大きく目を見開き、こちらを――――暖を凝視している。
『お姉ちゃん!』
女性はそう叫んだ。
歓喜に満ちた泣き声だ。
「喜ぶがいい、ウララ。私がお前の帰り道を繋いでやったぞ! その光に飛び込めばお前は元の世界に帰れる! …………我のものにならぬのなら、永遠にこの世界から失われてしまえ!」
魔王はそう叫ぶとカラカラと笑った。
光の中にいるのは間違いなく暖の妹の陽詩であり、魔王の言葉が真実ならば水面の向こうの世界は日本なのだ。
『お姉ちゃん、お姉ちゃん! あぁ、夢じゃないわよね!』
涙をポロポロとこぼしながら陽詩が叫ぶ。
「……陽詩? ……本当に?」
暖は大きく目を見開いた。
信じられずにパチパチと何度もまばたきを繰り返すが、映像は消えない。
……暖の目から、涙がこぼれはじめた。
そんな暖の姿を見、ディアナは大きく舌打ちをする。
「クソ魔王! 相変わらず、やり口が最低じゃ!」
『貴様!』
怒りをあらわにしたギオルが上空に飛び上がり巨大な尾を一閃! 器用に魔王だけを狙い壁にドガン! と叩きつけた。
壁にめり込んだ魔王は、口から血を流しながらもクックッと笑う。
「ウララの周囲には強力な結界を張った。視覚や聴覚を遮断することはできないが、お前たちからウララに直接触れることは不可能だ。……そこで指をくわえて大切な娘が異世界に帰る姿を見送るがいい」
本当に性格の悪い魔王だった。
「ウララ!」
魔王の言葉は真実で、駆け寄ろうとしたリオールの体が結界にぶつかり阻まれる。
「退け! 俺がやる!」
遅れて駆けつけたネモが、ドワーフ渾身の一撃を結界に叩きつけた!
しかし結界はびくともせず、反対にネモの方が弾き飛ばされる。
老ドワーフは、悔しそうに歯噛みした。
「――――無駄だ。他の場所ならともかく、この魔界の中で我の作った結界を打ち破ることなど、簡単にはできん」
魔王の言葉を聞いたリオールは、拳を握り締め立ち尽くした。
魔王は不可能とは言い切らなかった。
しかし、簡単にできないということは、つまりは時間がかかるということだ。
手間取れば、その間に暖は日本に帰ってしまうかもしれない。
――――そう、今この瞬間にも、暖はあの光の中に飛び込んでしまうかもしれないのだ。
「ウララ!」
「ウララ!」
必死のリオールやネモの声が聞こえないのか、当の暖は呆然として光の中を見ていた。
『お姉ちゃん!』
映像の中では、陽詩がベッドから降りようと体を動かす。
病弱な暖の妹は、床に足をつけた途端フラフラと体勢を崩した。
「陽詩!」
思わず暖は叫んでしまう。
その時――――
『陽詩! 何をしている!?』
光の中から新たな声が響いた。
しっかりとした男の声で、命令することに慣れた響きを持っている。
声の持ち主は、どこからか映像の中に現れ陽詩に近寄ると、その体を支えた。
水面のような光が映すのは背の高い美丈夫だ。――――言わずと知れた、暖の義弟である。
『正樹さん! お姉ちゃんが、あそこに!』
陽詩の声で、義弟――――正樹がこちらを向いた。
彼は、大きく目を見開く。
『暖!? お前は! ……なんて格好をしているんだ!』
やっぱり男性が一番に目につくのはそこなのか。
正樹は、目を三角にして怒鳴りつけてきた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。
櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。
夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。
ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。
あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ?
子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。
「わたくしが代表して修道院へ参ります!」
野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。
この娘、誰!?
王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。
主人公は猫を被っているだけでお転婆です。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる