まだまだこれからだ!

九重

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第四章 選んだ先の未来へ向かいます!

……再会

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 うららにかけられた自動防御魔法は完璧だ。
 なにせ、落ちたる竜王とエルフの失われた王、神を堕落させた吸血姫、世界を二度滅ぼしかけた魔女が、全員一度に攻撃したくらいの威力なのだ。

 だからこそ、誰の心にも隙があったのだろう。
 まさか、魔王がこんな手段を取るとは思わなかったのだ。

 焦るアルディアたちの耳に、魔王の声が聞こえる。


「――――開け! 異世界への扉! この娘と最もの元へ!――――」


 同時に部屋の一角が光りはじめた。
 暖を中心に、アルディアたちとは正反対の場所にユラユラとした光の壁が現れる。

 光は徐々に固定され、姿見くらいの大きさになった。
 やがて、キラキラとしたきらめきが落ち着き、表面が透明な水面みなものようになる。

 その水面の向こうに、白いベッドに身を起こすほっそりとした女性の姿が映った。
 女性は大きく目を見開き、こちらを――――暖を凝視している。



『お姉ちゃん!』



 女性はそう叫んだ。
 歓喜に満ちた泣き声だ。


「喜ぶがいい、ウララ。私がお前の帰り道を繋いでやったぞ! その光に飛び込めばお前は元の世界に! …………我のものにならぬのなら、永遠にこの世界から失われてしまえ!」


 魔王はそう叫ぶとカラカラと笑った。
 光の中にいるのは間違いなく暖の妹の陽詩ひなたであり、魔王の言葉が真実ならば水面の向こうの世界は日本なのだ。


『お姉ちゃん、お姉ちゃん! あぁ、夢じゃないわよね!』


 涙をポロポロとこぼしながら陽詩が叫ぶ。




「……陽詩? ……本当に?」

 暖は大きく目を見開いた。
 信じられずにパチパチと何度もまばたきを繰り返すが、映像は消えない。

 ……暖の目から、涙がこぼれはじめた。





 そんな暖の姿を見、ディアナは大きく舌打ちをする。

「クソ魔王! 相変わらず、やり口が最低じゃ!」

『貴様!』

 怒りをあらわにしたギオルが上空に飛び上がり巨大な尾を一閃! 器用に魔王だけを狙い壁にドガン! と叩きつけた。
 壁にめり込んだ魔王は、口から血を流しながらもクックッと笑う。


「ウララの周囲には強力な結界を張った。視覚や聴覚を遮断することはできないが、お前たちからウララに直接触れることは不可能だ。……そこで指をくわえて大切な娘が姿を見送るがいい」


 本当に性格の悪い魔王だった。


「ウララ!」

 魔王の言葉は真実で、駆け寄ろうとしたリオールの体が結界にぶつかり阻まれる。

「退け! 俺がやる!」

 遅れて駆けつけたネモが、ドワーフ渾身の一撃を結界に叩きつけた! 
 しかし結界はびくともせず、反対にネモの方が弾き飛ばされる。
 老ドワーフは、悔しそうに歯噛みした。

「――――無駄だ。他の場所ならともかく、この魔界の中で我の作った結界を打ち破ることなど、簡単にはできん」

 魔王の言葉を聞いたリオールは、拳を握り締め立ち尽くした。
 魔王は不可能とは言い切らなかった。
 しかし、簡単にできないということは、つまりは時間がかかるということだ。
 手間取れば、その間に暖は日本に帰ってしまうかもしれない。


 ――――そう、今この瞬間にも、暖はあの光の中に飛び込んでしまうかもしれないのだ。



「ウララ!」
「ウララ!」

 必死のリオールやネモの声が聞こえないのか、当の暖は呆然として光の中を見ていた。


『お姉ちゃん!』


 映像の中では、陽詩がベッドから降りようと体を動かす。
 病弱な暖の妹は、床に足をつけた途端フラフラと体勢を崩した。


「陽詩!」


 思わず暖は叫んでしまう。
 その時――――


『陽詩! 何をしている!?』


 光の中から新たな声が響いた。
 しっかりとした男の声で、命令することに慣れた響きを持っている。
 声の持ち主は、どこからか映像の中に現れ陽詩に近寄ると、その体を支えた。
 水面のような光が映すのは背の高い美丈夫だ。――――言わずと知れた、暖の義弟である。

正樹まさきさん! お姉ちゃんが、あそこに!』

 陽詩の声で、義弟――――正樹がこちらを向いた。
 彼は、大きく目を見開く。


『暖!? お前は! ……なんて格好をしているんだ!』


 やっぱり男性が一番に目につくのはそこなのか。
 正樹は、目を三角にして怒鳴りつけてきた。
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