だからウサギは恋をした

東 里胡

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第六章 ユウウツうさぎ

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***

 放課後、訪れた生徒会室は今日も会長と二人きり。

「小学校一年生の一学期まで、私、東京のこの近辺の小学校に通ってたんですよ」

 会長は、視線をパソコンに落したまま、独り言のように話し出した私の声に耳をかたむけてくれている。
 私はその隣の丸椅子に腰かけて、窓の外をぼんやり眺めながらあの頃のことを話し出す。
 真剣に面と向かって聞いてもらったりしたら、逆に言えなくなっちゃいそうなので、この距離感がいい。

「私、クラス委員に選ばれたんです。だから、がんばらなきゃってはりきっちゃって」

 本来なら、日直さんがやるべき黒板消しを率先してやったり、花壇係の水やりも朝一番に来て私がやってしまっていた。

「掃除も当番の日じゃなくても毎日手伝ってて。そしたら先生が『高梨さんは真面目な頑張り屋さんね。皆も高梨さんを見習ってくださいね』って言ってくれて。でも、それが他の子たちには面白くなかったみたいです。今なら、わかるんですけどね、その子たちの気持ちも。ウイちゃんって、先生からほめられたくて、やってるんでしょ? ある日の放課後、何人かに取り囲まれてそう言われてしまって」

『ウイちゃんは、頭いいもんね! どうしたら先生にイイコだって思われるかわかってるんでしょ』
『毎日掃除や日直の仕事して。そんなことされたら自分の仕事を取られた人たちは、やってないって思われちゃうのに』
『自分だけがほめられたいんでしょ』

 一気にまくしたてられて、気づいたら私は校門の前にしゃがみ込んで泣きじゃくってた。

『ねえ、そんなに泣かないでよね、赤ちゃんみたい』

 私を赤ちゃんみたいと言ったのは、その時、一番仲良しだと思っていた五月ちゃんの声だった。
 それから、私のあだ名は『泣き虫赤ちゃん』になってしまった。
 話しかけても無視されるし、誰とも遊んでもらえない。

「学校に行くのが毎日辛くて『もう行きたくない』ってある日、両親に言ったんです。そうしたら『じゃあ、夏休みになったら転校しようか』って。両親も私が毎日泣いていたのを知っていたみたいで。それで転校したんですけど――」

 話しながら、ふとよみがえってきた光景がつぶった目の奥にフラッシュバックした。
 あの小学校に通う最後の日、校門前にサツキちゃんが一人でいた。
 私の顔を見て、なにか言おうとしているのを見て、私は怖くて逃げた。
 またひどいことを言われるんじゃないかって――。

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