だからウサギは恋をした

東 里胡

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第七章 あれは、うさぎだった

7-3

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「うさぎは、心当たりはあるか? このメールの主に」
「一人だけ……、一年八組のクラス委員の」

 会長は引き出しを開けて、クラス委員名簿を見て一年八組を指さした。

「前川さんか。なぜ彼女だと?」
「彼女は最初の小学校で一年生の夏まで、同じクラスでした」

 私のことを最初に『赤ちゃん』と呼んだのも彼女だったと思います、それは飲み込んだ。

「なるほど。じゃあ、これは彼女からの嫌がらせか? それであれば俺はこの件に首を突っ込ませてもらう。生徒会長として、この学園でイジメなんて」
「会長、待ってください、ちょっとだけ」

『listen to me(私の話を聞いて)』
 このメールがどうしても気にかかる。あの最後の日、校門前で私に話しかけようとしていたサツキちゃんの言葉は、一体何だったのか。
 会長は考え込むように、しばらく黙っていたけれど。
 
「うさぎ、手に負えないと思ったら助けを求めることが自分でできるか?」
「え?」
「この件は一旦、おまえに任す。だが、自分では無理だと思ったら、助けてって言え。いいな?」
「は、はいっ! あ、あの、他の生徒会のメンバーには」
「内緒にしておく」

 その会長の心遣こころづかいに感謝した。
 イジメられっ子だったことは、誰にも知られたくない。本当は会長にだって知られたくなかったけどなあ。
 ふさぎこみそうになる私の心を救ってくれたのは。

「俺の知っているうさぎは、今のうさぎだ。生徒会を理解し、全生徒のために頑張ろうとしてるのがうさぎだからな。昔のことなんか、もう気にするな」

 大丈夫だと笑ってくれた会長の顔が、みるみるボヤケていく。
 優しさが沁み込んで目から溢れ出ちゃうよ。

「会長~! 好きです、大好き、でっ、うわああああああん」
「おい、俺のハンカチで鼻をかむなよ」
「かんでません、まだ、かんでません~!」

 私が泣き止むまで側にいてくれた会長に、これ以上心配はかけないようにしたい。
 私は変わった、あの頃の自分はもういない。
 赤ちゃんなんかじゃない!
 今度サツキちゃんに何か言われたとしても、自分一人で解決してみせる。
 会長のハンカチを握りしめながら、心の中でそう誓った。
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