姉妹チート

和希

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transfiguration

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(1)

「ちょっと茉奈、くっつきすぎじゃないか?」
「喜べ、女の子がこんなにくっついてくれてるんだぞ!」
「茉奈の言う通りだぞ結。女の子がこんなに迫ってきているんだから素直に喜べ」

 茉菜が言うと神奈までそう言っていた。
 隙あらばいつでも抱きついてくる茉奈なんだけど。

「あんまり公然の場所でいちゃついてるのはバカップルって言うんだろ?」
「結は二人きりの場所でもきづいてくれないじゃない」
「なんだと?」

 なぜか誠が反応していた。

「てめぇ!茉奈の何が気に入らないんだ!?茉奈は神奈と違って胸まで……いてぇ!」
「お前も余計な事いってんじゃねえ!でもな、結。やっぱりそういうのに気づいてくれないのは女性としては寂しいぞ」
「女子高生が迫って来るなんてめったにない事なんだぞ」

 瑛大が熱弁するけど、毎日のようにやるのは死亡フラグだってじいじが言ってた。
 その事を話すと愛莉が説得を試みる。

「冬夜さんの言う通り。毎日のようにせがむのはいけません。ですが結はそこにまで至ってないから問題なのでしょ?」

 彼女が寂しい思いをしているのに気づいてやれないのはどう説明するの?
 自分じゃだめなのかな?って茉奈を不安にさせていいの?
 じいじもそうだったらしい。

「でも今誠さんの言葉で不可解な点があったんだけど?」

 父さんが気づいたらしい。

「どうしたの?空」

 すると父さんが説明した。

「どうして誠さんが茉奈の胸のサイズ知ってるの?」
「馬鹿だなぁ空」

 そんなの服の上からでも気づくだろ。
 それに茉奈の下着はたまにチェックしてるんだ。
 結だって見たりしてるんだろ?

「おい、ちょっと待て。なんで誠が茉奈の下着を見てるんだ?」
「俺だけじゃないぞ!瑛大だって知ってるはずだ」
「ば、馬鹿誠!俺を巻き込むな」
「お前ら何をしたのか吐け!」

 こんな話をする場所じゃないと思ったのだけど黙って聞いてた。
 優翔は気づいたみたいだ。

「まさか優奈と愛奈……」
「だって茉奈の下着横流ししたら小遣いくれるってじいじが言うから」

 私達は中学生だからダメなのかなって優奈たちは相談していたらしい。

「たまに無くなってるから不思議に思っていたけど……」

 茉奈は下を向いてしまった。

「このド変態!孫娘に何やってんだ!」

 亜衣と神奈が二人を怒鳴りつける。

「ま、そろそろ行きませんか?渡辺君達が向こうで待ってますよ」

 望がそう言っていた。
 今日は紅葉狩りの日。
 皆で大つり橋に来ていた。
 コンクリートで出来た橋なのに揺れている。
 それが不思議だった。
 その時何かに気づいた。
 この感じ、俺のテリトリーに悪意を持って入ってきたやつがいる。
 ここは橋の上。
 ワイヤーを切られたらひとたまりもない。
 どいつだ?
 それを見極めるために集中していた。

「結。今度はどうしたんだ?」
「茉奈、今は結に集中させてあげて」

 父さんが茉奈に言う。
 父さんも感づいたのだろうか?
 すると明らかに様子のおかしい燕尾服の背の高い男性が近づいてきた。
 そいつが手を振り上げると同時にとっさに茉奈を抱き寄せて庇う。
 そいつの腕は刃物になっていた。
 それに気づいた一般客が悲鳴を上げる。
 そんな事にお構いなしに男性は手を振り下ろすとそれはその手を掴む。
 掴むと同時に能力を発動させる。
 男性の姿は飛散した。
 大騒ぎになる中俺は違う事を考えていた。
 こいつはダミーだ。
 本体はどこだ?
 警戒を解かずにしっかり茉菜を捕まえている。
 すると騒ぎ声の中拍手の音が聞こえた。
 振り返るとさっきの男の姿がいた。
 人形とかじゃないのは分かり切っている。
 さっきからステイシスを使っているから。
 
「お見事です。とりあえず挨拶だけでもしておこうと思いまして」
「随分な挨拶だね。君は誰?」

 じいじが尋ねていた。

「それは私の名前ですか?……私はそうですね。サミュエルとでも名乗っておきましょうか」
「つまり君の本体がいるという事?」
「私はヒルデ様のエイリアス。通称バトラーという役割を担う者。詳しい話はまたいつかしましょう。それではまた」

 男はそう言って消えた。

「い、今の何?」

 亜依が聞いていた。

「エイリアス……別名。つまり本体はここじゃないどこかで様子を見ていたのだろう」

 ひょっとしたらエイリアス自体がカメラになっていたのかもしれないとじいじが言う。

「ちょ、ちょっと待てよ。だったら冬吾や結のステイシスっ奴で無力化するんじゃ」

 天音が当たり前の様に聞いていた。
 
「あのエイリアスってのはいくつもの不思議な点がある」

 俺が説明をした。
 ステイシスはずっと展開していた。
 にもかかわらずあの人形は動き続けた。
 それともう一つ。
 俺が茉菜を庇いながら奴の腕に触らないと能力を使えなかった理由。
 何か異様な空気で狙いが定まらない。
 下手をすると赤の他人を吹き飛ばしかねないから確実に行動した。
 あれが新しい敵?
 DOLLとかいう間抜けな連中ではないらしい。
 今度はやりがいがあるか?
 そんな事を考えていると茉奈が俺の名前を呼んだ。

「どうした?」
「嬉しいんだけど、やっぱりこれ恥ずかしい」
 
 茉奈が言うと自分が置かれている状況を把握した。
 混雑する橋の上で思いっきり茉奈を抱きしめていた。

「ごめん。……でもやっぱり恥ずかしいんじゃないか?」
「それはちょっと違うんだ」

 どういう事?

「照れっていうんだよ」

 水奈がそう言って笑っていた。
 なんか色々難しいな。

(2)

「いや、さっきのは面白かったね」
「そうだね。結にも苦手な事があるみたいだ」

 公生さんと父さんがそう言って笑っていた。

「公生は他人事じゃない。公生だって散々私に意地悪してた!」
「奈留。それはまだ公生が奈留に好意があったからまし。冬夜さんや空は素で気づいてないの」

 奈留さんと母さんが言う。
 僕達はハンバーガー食べてたから分からなかった。
 天音は海翔が優奈に「こんな時くらいデートしてくれてもいいだろ!」と言い出したから橋を渡るので天音も同伴していた。
 翼は天音から事情を聞いてる。
 結もやっぱりそうなるのか。

「でも笑い事じゃねーぞ。お前の言った通り上手くいくのか?」

 神奈さんが聞くと父さんが笑った。
 代わりに母さんが答えていた。
 
「茉菜にくっつかれて困ってるって事はそういう風に意識してるって証明じゃない」

 決して胸の有無じゃない。
 女の子が抱き着いてきたからじゃなければ、茉菜が堂々とキスしたことでもない。
 
「うーん、神奈でも分かると思うんだけど、恵美とかでも分かると思うんだけど」
「愛莉ちゃんの言う通りね。相手にするのも面倒なくらい雑魚がちょっかい出してきたわ……」

 恵美さんは江口家のご令嬢である上に綺麗な女性だ。
 それで馬鹿正直に告白する者はいない代わりに悪戯をする男子が多かった。
 だから望さんと交際を始めるまでは身分を隠していたらしい。
 晶さんはたくさんの雑魚を従えて得意気になっていたけど、全く気にも止めない善幸さんに気づいたら夢中になっていた。
 確かに美希も似たようなところあったな。
 スカート捲りとかされてた。
 同世代でもやけに発育のいい女子だったし。

 ぽかっ
 
「空、今考えていた事白状しなさい」
「なんで?」
「とぼけてもダメ!私に隠し事は出来ない」
「空、どうしたんだ?」

 神奈さんも気になったらしい。
 別に隠すことも無いから話した。
 すると母さんに怒られる。
 神奈さんは「やっぱり胸の差なのか?」と落ち込んでいる。

「大丈夫だ。俺はお前のそのまな板が好きなんだ」
「ああ、そうだな。お前みたいな変態しか興味を示さなかったんだろうな」
「……で、お前それを今話したら怒られるって気づかなかったのか?」

 天音が僕に聞いていた。

「なんで?」
「空、翼だって気にしてるんですよ」

 母さんが聞いた。

「どうして?」
「え?」

 父さんは笑顔で僕を見ている。
 
「ちゃんと説明してあげなさい」

 父さんがそう言うから説明した。

「あの時こうすればよかったのかな?……それって考えても無駄だと思うんだよね」

 正しかったのか間違っていたのかそれが分かるのは遥か先の話。
 だからといってやり直しができるわけじゃない。
 タイムマシーンが物理的に不可能だからとかじゃない。
 実際に理論はくみあがっているそうだ。
 それで過去を変えられる事が例え出来たとしても変えようとその時に思うかが問題だ。
 あの時あの場所で美希に告白されて、僕は「ごめん、翼がいるから」という可能性は0に等しいだろう。
 あの時あの状況で僕は「自分が正しい」という判断をしたのだから。
 だから翼と付き合っていればよかったかな?というのは単なる妄想に過ぎない。
 誠さん達が見てる妄想よりも幼稚なものだ。
 考えるだけ無駄だよと説明した。

「僕達はいつだって正しいと思った判断をしている。だったらやり直したとしても同じ道を必ず選ぶよ」
「……理屈はいいんだけど、少しは私に配慮してくれてもいいんじゃない?」
「どういう意味?」
「私だって美希と比べられると落ち込むよ」
「翼、それは多分空には関係ねーよ」
「なんでよ。天音」
「空にとって胸なんて興味ねーよ」

 多分今でもそうだと天音が言う。
 あの時の僕は女子に興味がなかった。
 だから天音や水奈が油断していたんだ。
 
「……だ、そうよ。神奈」

 母さんが神奈さんに言っていた。
 結だって多分必死に自分の道を探しているのだろう。
 将来どうなるのかあれだけでたらめな能力を持っている結だって不安なんだ。
 きっと最後まで結を見守っていた子が結の彼女になる。
 今の所そうなるのは茉奈しかいない。
 
「話を変えてもいいか?冬夜」
「どうしたんだ?誠」
「空の胸に対する価値観も重要だけど……いてぇ!」
「お前はもう少し違う事を考えろ!」

 誠司郎までお前みたいになったら絶対許さないからなと神奈さんが言う。

「あ、それじゃなくて結の事だ」
「だからきっと茉奈を選ぶよ」
「そうじゃなくて橋の上での事件だよ」
「ああ、あれか」
「あれか。じゃねーよ、今度はどこが仕掛けてきているんだ」
「誠はそれ本気で聞いているのか?」
「……ってことは冬夜は分かってるのか?」
「まあね」

 FGがいない今になって父さん達を狙ってくる連中なんてそんなにいないだろう。
 リベリオンが動き出した。
 間違いない。
 しかしリベリオンも相変わらず間抜けだなと父さんが言う。
 わざわざ「これから襲うよ」なんて言われて警戒しない馬鹿はいない。
 それをFGもやらかして大失態をした。
 唯一FGよりも厄介だなと思ったことが父さんにはあるらしい。
 それは結から聞いたこと。
 相手の本体が全く分からない事。
 あらゆる能力を無力化するステイシスが通用しない事。
 相手はそれをエイリアスと名乗ったらしい。
 エイリアスというくらいだ。
 一体だけとは限らない。
 つまり相手が何人で仕掛けて来たのかすらわからない。
 そして止めに結の能力を限定させた。
 いつもなら射程内にいる対象なら距離なんか関係なく能力を使う結がわざわざ接触しないと使えないようにした事。
 どういう理屈なのかはわからない。
 相手はそこまで説明しなかった。
 得意気に自慢していたFGの能力者とは格が違う。
 必要以上に自分の能力について語らない。
 単なる挨拶というのは間違いないだろう。
 一つだけ確かなのは相手はそういう戦闘になれている事。
 結がどれだけ強力な能力を持っていようとそれを使えなくされたらただの高校生だ。

「なるほどな……。で、それでこれからどうするつもりだ?」
「だってさ、空」

 え?

「おい、俺は冬夜に聞いて……」
「空はSHを結に任せるつもりなんだろ?」
「うん、さすがに僕ももうすぐ40だし」

 現役の子で最強なのは結だろう。
 あの子なら大丈夫だという確信はあった。
 だから父さんも同じ事も言う。

「僕だってそろそろ定年だ。渡辺班の主導権を空に任せようと思ってるのだけど」

 そんな話を花見の後にしていたらしい。

「いきなり任せたんじゃ空も慣れてないだろうから、今回の件は父さんはアドバイザーとして見物するよ」

 その上で判断するらしい。
 いきなり大役を任せて来るな。
 まあ、仕事でも「それくらいそろそろ自分で判断しなさい」と言うようになってきたし。

「どうする空?」

 天音が言う。
 先手必勝。
 リブロースだか何だか知らねーけど先に仕掛けてきたんだ。
 いまさら文句は言わせねえ。

「天音はどうやって反撃するつもり?」
「は?いつも通りに茜達に任せたらいいんじゃない」
「それは無理。相手はそういう連絡はネットを使っていない」

 最後に十郎達が仕掛けてきてからそうやって完全に身元を隠している。
 そして今回仕掛けて来た相手の素性もわからない。
 何に対して反撃するのか聞いてみた。

「しかし天音のいう事も一理あると思うんだけど」

 大地が言った。
 仕掛けてくるのを待つというのはさすがにリスクが高い。
 そんなミスを冒して母さんが死にそうになった。
 だけど標的が分からない以上他に手はない。

「今度は誰を狙ってくるかわからないんだろ?そんな悠長な事言ってられるのかよ!?」

 天音の言う通りだった。
 しかし父さんはそうは思ってない事はその様子を見てわかった。
 余裕がある。
 何か肝心な事を忘れている気がする。
 それはなんだ?
 必死に考える。
 リベリオンのこれまでの行動に多分ヒントがある。
 リベリオンの存在理由。
 ……ひょっとして。
 そういうことか?
 なるほどね。

「何もしない」

 僕はそう一言言った。
 相手が何を狙っているのか分からないけど狙いは分かった。
 それならいくつか対応策はある。

「お前愛莉の事忘れてるのか!?」

 天音が言った。

「忘れていないよ。無抵抗な母さんを狙った馬鹿の事ならしっかり覚えている」
「なのにまた同じ事繰り返すつもりなの?」
「恵美さん、それは違うよ」

 父さんが口を開いた。

「空も少しは考えてるみたいだ」
「お前の家系はどうしてそう回りくどいんだ!?」

 神奈さんが父さんに聞いていた。

「……空はリベリオンの次の狙いが分かったみたいだ」

 やはり正解だったのか?

「空、あいつら何を狙ってるの?」
「簡単だよ。雪か誠司郎」
「誠司郎が狙われるのか?」
「間違いないと思う」

 不安そうにする神奈さんを誠さんが支えてた。

「……対策は考えてるんだろ?」

 誠さんがそう聞いてくると頷いた。
 一番狙われやすいのは間違いなく誠司郎だ。
 そしてSHで一番安全なのも誠司郎だ。
 つねに雪がそばにいるのだから。
 誠司郎の立場は危険だけどその代わり誰よりも強力なガードマンがついてる。
 
「雪の事くらいわかってるから結を狙って来たんじゃないのか?」

 天音が聞くと僕は首を振った。

「だから結に挨拶したんだ」

 FGのDOLLとの戦闘は知っているんだろう。
 しかしどれほどの能力を持っているのか正確には分かってない。
 雪に接触したらそれでジエンドだ。
 要らない存在だと判断したらその場で消し去るだろう
 だから結を狙った。
 それでも厄介な事に結の可能性は未知数だ。
 だから少しでも結の手の内を知りたくてあんな真似をしたんだろう。
 念を入れて結には姿を晒さなかったんだろ?
 雪を狙っておきながら雪を恐れているんだ。
 少ないチャンスを狙ってくるのは分かってる。
 だから誠司郎が襲われる事はそんなに無いだろう。
 結だってそのくらいのことは考えてる。
 今頃対策を考えているはずだ。
 失敗だったのはステイシス下で動ける能力を見せた事。
 どんな能力も自分の物にしてしまう結に対して軽率な真似をした。
 だから心配する必要が無い。
 こっちを舐めて茉菜に手を出したら後悔するのは相手だ。
 雪が小学生になるまで待つなんて馬鹿な事をした。
 もっと雪が自分の力の使い方を理解する前に狙うべきだった。
 
「だから心配いらないよ」
「間違いないのか?」
「雪の事を知ってる僕が相手なら絶対に雪は狙わない。どうあがいても雪には勝てない」

 怒った雪が何をしでかすかは想像の通り。
 結でも雪を怒らせるなんて真似はしないだろう。
 僕の説明を父さんは静かに聞いていた。

「うん。それでいいんじゃないかな。相手が時期を指定してるんだ。わざわざこっちから仕掛ける必要もないだろ」

 狙うにしても何を狙えばいいのか分からないんだから。
 何か事が起きればそこから引きずり出せる。
 今日の様にこそこそ狙ってくるのが関の山だろう。
 父さんも僕と同じ意見だったようだ。

「今日の連中は多分十郎の指示で動いてない」

 ずっと大人しくしていた十郎が動くタイミングじゃない。

「しかしいつになったら平穏な日々が来るんだろうな」
「それは僕達が考える事じゃないよ誠」
「でも片桐君。本当にそれでいいの?」

 恵美さんが言った。

「元は私達がまいた種なんでしょ?リベリオンって」

 まあ、間違いなく恵美さんと晶さんだと思う。
 でも父さんは顔色一つ変えないで言う。

「だからどうしたの?」
「え?」

 そうだったとしてもだからなんだ?
 恨みをぶつけるなら勝手にすればいい。
 しかしその行為が新たな怒りを産むことを忘れるな。
 自分たちだけ恨んで相手が恨まないなんて隣国みたいな思考は通用しないぞ。
 やられたらやり返す。
 誰もが平等なんてまやかしだって知っているんだろ?
 そういう中で生き残りをかけて誰もが戦っている。
 それが止まったら人類のさらなる進歩は無い。
 それを自分たちだけ被害者ぶって何をしてもいいっていう隣国みたいな発想でいるならこっちもそれ相応の対処をする。
 SHだっていっしょだ。
 関係ない人間を相手にしようとはしない。
 邪魔だと判断した存在だけを排除する。

「恵美さんや晶さんが悪いみたいな言い方するけどそんな事は多分無いから」

 翼がそう言った。
 そもそもルールを守って動いていれば恵美さん達が動くはずがなかった。
 基本的に残業なんて非常時だけに使うべきで常用している企業が仕事に対しての人員の運用が間違っている。
 自分たちの処理能力を超えた仕事を持って来ている。
 アポも無しに面会しようとするのはNGな事くらい若い社会人でも分かっている。
 それが常識だと誤解している経営者が招いた事故だ。
 1人に何時間も残業させるくらいなら何人かサポートつけて対応した方がいいと判断する経営者もいる。
 それが出来るかできないかの差が恵美さん達を怒らせただけだと翼は言う。
 家庭を大事にするという所はぶれてない。
 それは恵美さん達だけの家庭でなく他の家庭だって同じなんだ。
 終業時間ギリギリになるまで放っておいたツケをどうして取らないといけない?
 だから役員会でも何も問題にならない。
 それで経営が赤字になっているわけでもない。
 僕や大地、善明から見たらひやひやしてるだろうけど、翼や天音の目線で言うとそれが普通なんだ。
 旦那が遅くまで残業して体壊さないか?
 そんな心配をしないで済むのだから。
 仕事に追われて子供が起きている時間に家に帰れないなんて事が無いんだから。
 だから遊や粋達も子供と仲がいい。
 天音も恵美さん達を見習ったほうがいいと翼は言った。
 善明や大地は苦笑していたけど。

「じいじ、まだ時間かかる?」

 結が父さんに言っていた。

「どうしたの?」
「時間かかるならもう一つ注文してもいいかな?」
「……そろそろ帰りましょうか」

 恵美さんがそう言うと皆店を出て帰路に就いた。
 夕飯を外食にして家に帰ると風呂に入って一息つく。
 風呂を出た美希がビールをくれた。

「本当に大丈夫なの?」
「何が?」
「旦那様や冬夜さんは絶対に片桐家を狙ってくると思ってるんでしょ?」
「だから大丈夫なんだよ」

 FGはSHに関係する人間すべてを標的にしてこっちを混乱させた。
 その結果全力で潰しにかかったけど。
 だけどあいつらは一つの意思で動いてる。

「全部片桐家のせいだ」

 だから狙いを僕達に絞っている。
 僕だったら絶対しないね。
 一番やりにくいのが片桐家なんだから。

「念の為美希も気を付けて」
「分かってる」
 
 今年もあとわずか。 
 もう少しだけのんびりする時間があったようだ。
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