21 / 86
姉妹の三日間
お姉ちゃんは料理下手
しおりを挟む
エプロンをつけ、野菜などの必要な食材を並べる。
「さぁてと、器具の準備もできたし。……お姉ちゃんにも手伝って欲しいかなぁ……なんて」
ちらっ。と分かりやすく横目でお姉ちゃんを見てみる。
「簡単なことなら別に出来るよ」
「大丈夫。カレーは簡単。私がカレーを代表して言う」
私が一番最初に身につけた料理もカレーだった。
美味しいし。手軽。
野菜を切って、ルーをどばどば。
後はお鍋をぐるぐるぐるぐる。それで完成。
「勝手にカレーを代表しないで」
「すみませぬ。まぁ、とりあえず、まずは玉ねぎから切ってもらおうかな。私はご飯を仕込むから」
「りょ、了解です」
お姉ちゃんは、まな板の前まで歩き、包丁を収納スペースから取り出した。
たくさん置いてある野菜から玉ねぎを一つ取り出し、まな板の上にポンと乗せる。
ポケットに手を突っ込んだなと思ったら、そこからヘアゴムを取り出した。
あぁ。確かに、あの長い髪の毛が混入したらまずいなと、納得する。
無意識に私の髪にも触れてみるけど、結んでないことに気づいたので私も同様にポケットからヘアゴムを取り出した。
そうこうしているうちに、お姉ちゃんは長い髪を手際よく結ぶ。
そしてそれは、下へと垂れる一本の太い線となった。
対して私の髪は多分、ひょこって髪の毛の中から飛び出しているだけだと思う。
髪を結び終えたお姉ちゃんは、まな板に置いた包丁を手に取り、玉ねぎに添える。
ちょっと玉ねぎを持つ手の形に、不安を感じてしまうけど、怪我をしそうな手付きではないので、そのまま見守る。
「お姉ちゃんがんばれー」
「お姉ちゃん頑張ります」
サクっ。
気持ちのいい音を立てて包丁が食い込んだ。
……けど、包丁を入れる間隔が異様に広い。
これじゃあ玉ねぎごろっごろカレーになってしまう。
ジャガイモとかの方が良かったかな。
あ、でもニンジンとかも簡単だな。
……玉ねぎを切らせるのは間違いだったかも。
「どうかな。てんちゃん」
してやった顔でこちらを見てきた。
ダメだよ。とも言えず、私は次の仕事を押し付ける。
「よし! お姉ちゃん、次はニンジンだ! ニンジンを切りましょう。お姉ちゃんには包丁の才能があるようだね!」
お姉ちゃんを落ち込ませたくなくて嘘をつく。
いや、伸びしろはあるんだよ。うん。
誰しもきっと、最初はこんな感じなのだから。
「ほんと? 嬉しい。わかった。次はニンジンね。頑張ろう」
お姉ちゃんが少し子供っぽく笑う。
……可愛い。
「よし。切ります。てんちゃん見ててね」
「見てるよー」
とんとん。
調子の良い軽やかな音を立てながら、包丁を扱う。
褒められて気分を良くしたのだろうか。包丁のスピードが速い。
それにしても……
全然うまく切れてないよ!
いいのは速さだけだよ!
極大のニンジンから極小のニンジンまで、十人参十色とはまさにこのこと。
これじゃ、さっきの玉ねぎの二の舞だよ!
いや、玉ねぎの方がまだマシだよ!
と一通り頭の中で突っ込んだところで、お姉ちゃんが満足げにこちらを見る。
「どう? このニンジンさばき」
「う、うん。それを言うなら、包丁さばきの方ね。いいと思うよ」
「よーし! 次は──」
「お、お姉ちゃん! ここからは私が! 私に任せて!」
「いや、てんちゃんの役に立てるってすごく嬉しいから、私にやらせて」
その気持ちはありがたい。
ありがたいけど、このままだとカレーは死ぬ。
だから、ここからは私がやったほうが──
その時。
ふと、思い出したかのようにお姉ちゃんはこう言う。
「それよりてんちゃん。ご飯の仕込みは?」
………………。
……わ、忘れてた!
「さぁてと、器具の準備もできたし。……お姉ちゃんにも手伝って欲しいかなぁ……なんて」
ちらっ。と分かりやすく横目でお姉ちゃんを見てみる。
「簡単なことなら別に出来るよ」
「大丈夫。カレーは簡単。私がカレーを代表して言う」
私が一番最初に身につけた料理もカレーだった。
美味しいし。手軽。
野菜を切って、ルーをどばどば。
後はお鍋をぐるぐるぐるぐる。それで完成。
「勝手にカレーを代表しないで」
「すみませぬ。まぁ、とりあえず、まずは玉ねぎから切ってもらおうかな。私はご飯を仕込むから」
「りょ、了解です」
お姉ちゃんは、まな板の前まで歩き、包丁を収納スペースから取り出した。
たくさん置いてある野菜から玉ねぎを一つ取り出し、まな板の上にポンと乗せる。
ポケットに手を突っ込んだなと思ったら、そこからヘアゴムを取り出した。
あぁ。確かに、あの長い髪の毛が混入したらまずいなと、納得する。
無意識に私の髪にも触れてみるけど、結んでないことに気づいたので私も同様にポケットからヘアゴムを取り出した。
そうこうしているうちに、お姉ちゃんは長い髪を手際よく結ぶ。
そしてそれは、下へと垂れる一本の太い線となった。
対して私の髪は多分、ひょこって髪の毛の中から飛び出しているだけだと思う。
髪を結び終えたお姉ちゃんは、まな板に置いた包丁を手に取り、玉ねぎに添える。
ちょっと玉ねぎを持つ手の形に、不安を感じてしまうけど、怪我をしそうな手付きではないので、そのまま見守る。
「お姉ちゃんがんばれー」
「お姉ちゃん頑張ります」
サクっ。
気持ちのいい音を立てて包丁が食い込んだ。
……けど、包丁を入れる間隔が異様に広い。
これじゃあ玉ねぎごろっごろカレーになってしまう。
ジャガイモとかの方が良かったかな。
あ、でもニンジンとかも簡単だな。
……玉ねぎを切らせるのは間違いだったかも。
「どうかな。てんちゃん」
してやった顔でこちらを見てきた。
ダメだよ。とも言えず、私は次の仕事を押し付ける。
「よし! お姉ちゃん、次はニンジンだ! ニンジンを切りましょう。お姉ちゃんには包丁の才能があるようだね!」
お姉ちゃんを落ち込ませたくなくて嘘をつく。
いや、伸びしろはあるんだよ。うん。
誰しもきっと、最初はこんな感じなのだから。
「ほんと? 嬉しい。わかった。次はニンジンね。頑張ろう」
お姉ちゃんが少し子供っぽく笑う。
……可愛い。
「よし。切ります。てんちゃん見ててね」
「見てるよー」
とんとん。
調子の良い軽やかな音を立てながら、包丁を扱う。
褒められて気分を良くしたのだろうか。包丁のスピードが速い。
それにしても……
全然うまく切れてないよ!
いいのは速さだけだよ!
極大のニンジンから極小のニンジンまで、十人参十色とはまさにこのこと。
これじゃ、さっきの玉ねぎの二の舞だよ!
いや、玉ねぎの方がまだマシだよ!
と一通り頭の中で突っ込んだところで、お姉ちゃんが満足げにこちらを見る。
「どう? このニンジンさばき」
「う、うん。それを言うなら、包丁さばきの方ね。いいと思うよ」
「よーし! 次は──」
「お、お姉ちゃん! ここからは私が! 私に任せて!」
「いや、てんちゃんの役に立てるってすごく嬉しいから、私にやらせて」
その気持ちはありがたい。
ありがたいけど、このままだとカレーは死ぬ。
だから、ここからは私がやったほうが──
その時。
ふと、思い出したかのようにお姉ちゃんはこう言う。
「それよりてんちゃん。ご飯の仕込みは?」
………………。
……わ、忘れてた!
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~
楠富 つかさ
恋愛
中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。
佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。
「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」
放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。
――けれど、佑奈は思う。
「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」
特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。
放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。
4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる