土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第6章 激闘、田原坂

第8話

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 早速、長崎の大鳥圭介旅団長に電報で、予備も含めて刀600振りの手配を取りあえずは依頼し、土方歳三少佐と林忠崇大尉は斬り込み隊の編制案の策定に掛かった。

「斬り込み隊の定員は200名、1個小隊50名の4個小隊で編制し、1個分隊10名の5個分隊で、合計1個小隊とします。
 これは第3海兵大隊の兵員から志願者を募ります。
 そして、斬り込み隊の隊長と第1小隊の隊長は、私が取りあえず兼ねます。
 いかがでしょうか」
「とりあえず、その案で行こう。
 問題は志願者がどれだけ集まるかだな」
 林大尉の提案に、土方少佐も同意した。

 翌日の11日朝、第3海兵大隊の全兵員を集め、土方少佐が発言した。
「川村純義参軍の命令により、西郷軍の抜刀斬り込み戦術に対抗するために、斬り込み隊を編制することになった。
 志願者は速やかに直属の上官に志願するように。
 なお、斬り込み隊の定員は200名とするので、定員以上の志願者が出た場合には、剣の腕によって選抜する」

 この発言に応じて、斬り込み隊に志願した者は300名近くに上った。
 何しろ、屯田兵中隊からも志願者が出たのだ。
 これに土方少佐は、意外の念を抱いたが、実際問題として、第1、第2屯田兵中隊の兵員のほとんどが明治維新を20歳前後で迎えた士族であり、幕末の治安が乱れていた時代を肌で感じていたこともあって、幼い頃から自分の身を護るために、剣術を習っていたものが大半だったのだ。

 このために急きょ、土方少佐と林大尉は、竹刀を用いた試合等で、斬り込み隊員を選抜することになった。
 それによって、元新選組の隊員でありながら、斬り込み隊の選考に漏れる者まで出る始末となり、悲喜こもごもが各所で見られた。
 もちろん、永倉新八や斎藤一は文句なしに選抜され、更に小隊長までに任じられた。
 なお、後1人の小隊長は、会津出身の佐川官兵衛が任命された。

 一方、川村参軍は、海兵隊による斬り込み隊の編制を、山県有朋参軍に報告していた。
 山県参軍は、この斬り込み隊を先鋒にした第3海兵大隊を、横平山奪取に投入することにした。
 横平山を奪取することによって、政府軍は田原坂を側面から攻撃できるようになるからだ。

 勿論、西郷軍も横平山の重要性は把握しており、既に巧みな陣地を築き上げていた。
 こういった状況から、山県参軍は、昼間正面からの攻撃は、将兵の犠牲を大きくすると判断し、夜間に奇襲攻撃を加える、具体的には斬り込み隊を投入することで、横平山を奪取しようと考えたのだ。

 14日朝から、横平山に牽制攻撃を仕掛けることで、西郷軍を欺瞞し、日没と同時に攻撃を止め、深夜に西郷軍が気を緩めたところに、斬り込み隊を突入させる計画が、陸軍の参謀によって立案された。
 そして、斬り込み隊という名前が、余りにもあからさま過ぎるということで、斬り込み隊は抜刀隊と呼称されることになった。

 だが、幾つか問題が生じた。
 最大の問題は、抜刀隊の編制を最優先で行わねばならないことから、土方少佐や林大尉がいないところで、この計画が立案されてしまったことだった。
 本来から言えば、計画立案段階から、土方少佐らが、この計画について参画すべきだったが、土方少佐や林大尉がこの計画を知ったのは、それこそ14日になってからであり、今更、中止にできない段階だった。
 この計画を知らされた林大尉らは、ろくな地図等も無い中、夜襲を掛けるのは無謀ではないか、と指摘したが、手遅れだったのだ。

 林大尉が率いる斬り込み隊は、不承不承14日の日没を期して、闇の中を横平山の西郷軍の陣地への隠密接近を試みる羽目になってしまった。
 新選組の西南戦争における初陣の時が遂に来たが、それは不本意なものだったのだ。
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