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Ⅱ.体に優しいお野菜編
48.俺は、昔馴染みと対峙する①
しおりを挟む「ルルド。何か、変わったところはないのか?」
「うん!院長の場所は、全然動いてないよ!」
いや、そうじゃねーよ。
「お前のことだよ。黄金竜の長は、大丈夫だと言ってたけどよ……」
前回、青銀竜の長から竜気をもらったとき、ルルドはしばらく気を失っていた。
さっきも、ぼーっと沈み込んだりして、様子が変だったじゃねぇか。
「え?……うーん、今のところは大丈夫みたい。
むしろ、なんだかポカポカしてて、力がみなぎっちゃってる感じ?」
それはそれで、猛烈に不安だな。
いつになく真剣な表情で、俺には感じることのできない院長の匂いとやらに集中し、迷いなく地を駆けるルルドに俺も並走する。
突然現れた、黄金竜の長、グノ。
200年前の予言をもたらした竜。
黄金竜の長、グノは去り際に俺に握手を求めた。
竜と握手なんて、と意図がつかめず、躊躇したものの悪意は感じず、俺はその手を握り返した。
「この世が在るためにはルルドが必要。
同じように、ルルドには君が必要……すべての“澱み”を留める魂」
声なき声が突然響いて、動揺する。じっと紅玉に見つめられ、俺はその声に意識を傾けた。
「ルルドが君と共にあること、この世にとって、とても重要なこと。
ボクが竜気与える、ルルドの竜としての性質、強くなる。
“迷い星”との乖離、混濁、同化、どうなるかわからない。今のルルドをルルドたらしめている何かかが損なわれる可能性、十分にある。
それが何をもたらすか。僕は憂いている」
触れたところから伝わる黄金竜の言葉は、ずっしりと質量をもって、俺に迫る。
「異界の者、ルルド、君に、引かれ合う魂。この世の異物。この世の理を乱す者。かの者に、この世の理を体現する竜の力、及ばない。
人は脆い。けれど、人の子に委ねる他ない」
と。言うだけ言って、手が離れた。
ちょっと待て。どういう意味だ。
ものすごく重要なこと、さらっとおまけみたいに言ってないか。
金色の竜を引き留めようと、手を伸ばしたところで、
『ルルドをくれぐれもよろしく』
なんて言って、あっさりと消えやがった。
はぁぁぁっっ……
どいつもこいつも、ふざけてんじゃねーよ!
いや、マジで何言ってんだ。つーか、重いわ。重すぎるんだよ、糞竜どもが。
しかも、
『出会い、絡まり、流れは変わる。これからの行く末、わからない。誰も知らない。君たちが共にあること、この世にきっと救済をもたらす。それがボクの、願い』
だと!?
もったい付けて長々言ってるが。
要するに丸投げだろ、これ!
これから起こることはわからないけど、二人で頑張ってね、てことじゃねぇか!!
何が『今日、このことをどうしても君たちに伝えたかった』だっ!バカ野郎!!
応援だけなら、猿でもできるんだよ。
しかも、「ルルドは、ルルドでいればいい」だなんて……。
今まで放置してたお前が言うんじゃねぇよ。
そういうことは、実際手を動かした奴だけが言っていい台詞だ。
ったく、人の苦労も知らないで。
いいか。俺は、ただの人族だぞ。竜に比べりゃ、ゴミ屑くらいのちっぽけな存在だよ。
「竜に見放された子」なんて言われてきた俺に、いまさら過剰な期待と責務を負わせんじゃねーよ。
………まあ、「竜に見放された子」なんて言ってんのも、人なんだけどよ。
最近ルルドとがっつり一緒にいて、まったく見放された感がねぇ。
むしろ、「竜にたかられてる子」だろ、俺。
もしくは、「竜を押しつけられてる子」だよ。
黄金竜の長は、言葉が足らな過ぎて、意味が分かんねぇんだよ。
言いたいこと、一方的に言って、満足そうに帰っていきやがって。
青銀竜の長は、べらべら余計なことをしゃべって、鬱陶しいことこの上なかったが………。
まさか、あのがっつり見せびらかされた口づけが要らないなんて。
あいつ、「人がルルドの存在を規定するなどあってはならない」だとか、「君がどうなろうとも、私たちには関係ないけれど」なんて、俺のことボロクソ言ってたよな。
その上で、結局はルルドの世話を俺に押し付けていきやがったのが、気に入らなかったけどよ。
これって全部、竜を嫌いな俺が「てめぇらの言ったように、簡単に死んでたまるか」なんて考えるのを、見越してのことじゃないのか?
あいつ、俺で遊んでやがったな。
マジで性格悪いな。
しかも、揃いも揃って、「ルルドをくれぐれもよろしく」とか。
…………………はぁ。
赤銅竜の長がまともだといいんだが。
俺の中では、竜はコミュ障集団説が、かなり有力になってる。
きっとまた、話が通じないに決まってる。
まぁ、でも………収穫もあったから良しとするか。
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