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第一章
8話 ①眠気
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「オロク……お前何がしたいんだ?」
オロクはあれから俺に膝枕させてゴロゴロしている。ウォーゼンが俺を殺すと言ったからかまだそれ以上のことはしてこねえ。
「ヴォンヴァートくんを甘やかしたいな」
「——甘やかしてんのは俺だろ」
オロクはのそのそと起き上がって、俺の頭を撫でながら膝へと導く。手の震えを感じて、緊張が伝わってきた。それが少し哀れに感じてされるがままになる。オロクは俺の髪をすいて静かに笑う。
「……お前、なんでスパイなんかやってんだよ」
「俺? 俺はここで生まれたから、仕方なくやってるだけだよ」
「ここで生まれた?」
「両親は組織の研究員なんだ。もういないけど」
「亡くなったってことか? 研究員ってことは人体実験をしてたってことか?」
「そうだよ。両親の仕事場で俺は育ったんだ。研究熱心な二人だったから、俺は研究室が遊び場だったよ」
「人体実験が行われてるのを見てきたってことだろ? そんな残酷なことに協力してることはどうも思わないのか?」
「正直分からない感覚だよ。他人のことを心配するのって。実験対象が身近にいすぎて麻痺してるのかもね」
マジかよ。今まで魔法学園の生徒としてのオロクしか見てこなかったから、普通にショックなんだけど。
「でもキリクゥや君と出会ってからは少しだけ分かるよ。誰かを心配するってこと。君がここにいることが違和感がありすぎて凄く動揺してる」
オロクは泣きそうな顔で俺を見下ろしてる。
「実験は許してるのにか?」
「君が実験で生まれたなら、俺は実験が悪いことだとは思えないんだ」
「…………っ、何だよそれ」
ヴォンヴァートはここで生まれた。実感は湧かねえけど、オロクの温もりを感じていると生まれてこなかったかもしれないことが少しだけ怖い。
闇魔術組織がいなかったら、俺はここにいないんだよな。前世の記憶では当たり前にいた両親も今はいないってことだ。
「お前は良かったな。闇魔術組織とは言え両親がいて」
「君にはシーシェン先生がいるじゃないか」
「……シーシェンはボスだったんだろ? 親って言えるのかねぇ」
「親と言うより、好きな人って感じだったらしいよ」
「——へ?」
思わずオロクと目を合わせる。オロクは相変わらず目尻を赤く染めて今にも泣きそうな顔をしている。頭を撫でてくるオロクの手があったかい、ベッドのシーツもいい匂いでうとうとしてくる。
「ウォーゼンさまが言うには、シーシェン先生の後をいつも着いて回ってたって。あの人と話す時は大体君の話だから」
「……俺は、シーシェンのことなんて」
「ヴォンヴァートくんは複数の人の魔力から生まれたんだ。だから、君の感情はいろんな人へ向けられる」
「いろんな人……? シーシェンや、せんやが好きだって思うのもか? お前をかわいいって思うのも? シロくんとはもう少し仲良くなりたいし……三人衆はうるせえけど、アインはかわいくて……ウザイドくんはウザい。……これが俺の感情だろ。いろんな人に向けられるのは普通だろ」
「俺のことかわいいって思ってるの? 意外だな」
「うるせえ。最近考えがまとまらねえような気がすんだよ、でもそうしないといけないって思うんだ。シーシェンを拒絶できないと思ったら、せんやが好きだって思ったし、お前に触れられていやじゃねえって思ったんだ。でもせんやだけを好きでいなきゃって思うんだ。あいつを守ってやらねえとって。そしたらお前が攫われて……お前を失うんじゃないかって怖かった。シーシェンがそばにいると安心する、お前の声を聞くと嬉しい……せんやを好きな気持ちと同じなんだ、シーシェンもお前も……たぶん好きなんだ。でもそんなのダメだろ?」
「その気持ち分かるよ。俺が好きなのは君なのか時々分からなくなるんだ」
うとうとしてた目をパチッと見開く。
「どう言う意味だ?」
「さっきも言ったよね? 君はアルマタクトの一部とシーシェン先生を元にした複数人から生まれた。一人はアルマタクト実験最初の成功体、そして研究に関わった俺の両親だ」
「え? りょ、両親って、お前の両親が俺を産んだ実験をしたのか!?」
「そうだよ。俺の両親はその時からアルマタクトに取り憑かれたように実験に夢中になって、数年後にアルマタクトに吸収されて亡くなった」
「そんな……。大丈夫か? オロク? 思い出させてごめんな」
「俺も生まれたばかりだったから、君の実験は見たことがないし、両親が死んだところも見たことないから、大丈夫。気にしないで」
そうは言ってるが両親の話をする時は手が震えていた。
「俺って何も知らないんだな、お前のこと……」
「俺もヴォンヴァートくんのこと、あんまり知らないな。ウォーゼンさまに聞いた話しか。何か覚えてることはない?」
「クマのぬいぐるみ貰ったことだな。誰に貰ったかは分からねえ。シーシェンだった気もするし……ウォーゼンだったのかもしれねえし」
「…………」
「オロク?」
「……実験体がいる研究室で遊んでたって言ったけど、クマのぬいぐるみなら誰かにあげたな」
「え」
「ごめんね、シーシェン先生やウォーゼンさまじゃなくて」
オロクの瞳からやっと涙が溢れ落ちた。俺の顔に振ってくる涙を眺めていたら、俺もいつの間にか泣いていた。
「なんで謝るんだよ」
「アルマタクトには意志があるんだ、アルマタクト実験で生まれた成功体はアルマタクトより強力で、アルマタクトだけの意思で生まれるはずだった君は、その成功体とアルマタクトの人格が融合してる状態なんだ」
「……マジかよ」
そんな複雑だって聞いてねえぞ神。その上俺の前世の人格までプラスされて、ひっちゃかめっちゃかなってんのかよ。
「俺が好きなヴォンヴァートくんは、人格が融合してる君だ。……でも君が君の意思で生涯生きられないなんていやだから……わがままは言わないでおくよ」
「俺のためだって言うのか? 俺はその二つの人格があることを自覚してねえのに、お前はそれを分離させる実験をして欲しいってことか?」
「第一段階は。第二段階は、君をアルマタクトの一部に戻して、成功体の人格を戻して、君が消えることだよ」
「…………お前、俺が消えてもいいのか?」
「いやに決まってるよ」
オロクに背を抱かれて持ち上げれる、顔が近づいてきて唇が触れ合う。
ドクン、ドクンと高鳴る胸を許してやりたくなった。
いつか、オロクがスパイを止める理由は——……俺かもしれねえのか。
「ヴォンヴァートくん、大好きだよ」
ずっと襲ってくる眠気に、意識を奪われる。もう少し、オロクと話していたかったのに……。ねみぃ、これはもう……ダメだ。
オロクはあれから俺に膝枕させてゴロゴロしている。ウォーゼンが俺を殺すと言ったからかまだそれ以上のことはしてこねえ。
「ヴォンヴァートくんを甘やかしたいな」
「——甘やかしてんのは俺だろ」
オロクはのそのそと起き上がって、俺の頭を撫でながら膝へと導く。手の震えを感じて、緊張が伝わってきた。それが少し哀れに感じてされるがままになる。オロクは俺の髪をすいて静かに笑う。
「……お前、なんでスパイなんかやってんだよ」
「俺? 俺はここで生まれたから、仕方なくやってるだけだよ」
「ここで生まれた?」
「両親は組織の研究員なんだ。もういないけど」
「亡くなったってことか? 研究員ってことは人体実験をしてたってことか?」
「そうだよ。両親の仕事場で俺は育ったんだ。研究熱心な二人だったから、俺は研究室が遊び場だったよ」
「人体実験が行われてるのを見てきたってことだろ? そんな残酷なことに協力してることはどうも思わないのか?」
「正直分からない感覚だよ。他人のことを心配するのって。実験対象が身近にいすぎて麻痺してるのかもね」
マジかよ。今まで魔法学園の生徒としてのオロクしか見てこなかったから、普通にショックなんだけど。
「でもキリクゥや君と出会ってからは少しだけ分かるよ。誰かを心配するってこと。君がここにいることが違和感がありすぎて凄く動揺してる」
オロクは泣きそうな顔で俺を見下ろしてる。
「実験は許してるのにか?」
「君が実験で生まれたなら、俺は実験が悪いことだとは思えないんだ」
「…………っ、何だよそれ」
ヴォンヴァートはここで生まれた。実感は湧かねえけど、オロクの温もりを感じていると生まれてこなかったかもしれないことが少しだけ怖い。
闇魔術組織がいなかったら、俺はここにいないんだよな。前世の記憶では当たり前にいた両親も今はいないってことだ。
「お前は良かったな。闇魔術組織とは言え両親がいて」
「君にはシーシェン先生がいるじゃないか」
「……シーシェンはボスだったんだろ? 親って言えるのかねぇ」
「親と言うより、好きな人って感じだったらしいよ」
「——へ?」
思わずオロクと目を合わせる。オロクは相変わらず目尻を赤く染めて今にも泣きそうな顔をしている。頭を撫でてくるオロクの手があったかい、ベッドのシーツもいい匂いでうとうとしてくる。
「ウォーゼンさまが言うには、シーシェン先生の後をいつも着いて回ってたって。あの人と話す時は大体君の話だから」
「……俺は、シーシェンのことなんて」
「ヴォンヴァートくんは複数の人の魔力から生まれたんだ。だから、君の感情はいろんな人へ向けられる」
「いろんな人……? シーシェンや、せんやが好きだって思うのもか? お前をかわいいって思うのも? シロくんとはもう少し仲良くなりたいし……三人衆はうるせえけど、アインはかわいくて……ウザイドくんはウザい。……これが俺の感情だろ。いろんな人に向けられるのは普通だろ」
「俺のことかわいいって思ってるの? 意外だな」
「うるせえ。最近考えがまとまらねえような気がすんだよ、でもそうしないといけないって思うんだ。シーシェンを拒絶できないと思ったら、せんやが好きだって思ったし、お前に触れられていやじゃねえって思ったんだ。でもせんやだけを好きでいなきゃって思うんだ。あいつを守ってやらねえとって。そしたらお前が攫われて……お前を失うんじゃないかって怖かった。シーシェンがそばにいると安心する、お前の声を聞くと嬉しい……せんやを好きな気持ちと同じなんだ、シーシェンもお前も……たぶん好きなんだ。でもそんなのダメだろ?」
「その気持ち分かるよ。俺が好きなのは君なのか時々分からなくなるんだ」
うとうとしてた目をパチッと見開く。
「どう言う意味だ?」
「さっきも言ったよね? 君はアルマタクトの一部とシーシェン先生を元にした複数人から生まれた。一人はアルマタクト実験最初の成功体、そして研究に関わった俺の両親だ」
「え? りょ、両親って、お前の両親が俺を産んだ実験をしたのか!?」
「そうだよ。俺の両親はその時からアルマタクトに取り憑かれたように実験に夢中になって、数年後にアルマタクトに吸収されて亡くなった」
「そんな……。大丈夫か? オロク? 思い出させてごめんな」
「俺も生まれたばかりだったから、君の実験は見たことがないし、両親が死んだところも見たことないから、大丈夫。気にしないで」
そうは言ってるが両親の話をする時は手が震えていた。
「俺って何も知らないんだな、お前のこと……」
「俺もヴォンヴァートくんのこと、あんまり知らないな。ウォーゼンさまに聞いた話しか。何か覚えてることはない?」
「クマのぬいぐるみ貰ったことだな。誰に貰ったかは分からねえ。シーシェンだった気もするし……ウォーゼンだったのかもしれねえし」
「…………」
「オロク?」
「……実験体がいる研究室で遊んでたって言ったけど、クマのぬいぐるみなら誰かにあげたな」
「え」
「ごめんね、シーシェン先生やウォーゼンさまじゃなくて」
オロクの瞳からやっと涙が溢れ落ちた。俺の顔に振ってくる涙を眺めていたら、俺もいつの間にか泣いていた。
「なんで謝るんだよ」
「アルマタクトには意志があるんだ、アルマタクト実験で生まれた成功体はアルマタクトより強力で、アルマタクトだけの意思で生まれるはずだった君は、その成功体とアルマタクトの人格が融合してる状態なんだ」
「……マジかよ」
そんな複雑だって聞いてねえぞ神。その上俺の前世の人格までプラスされて、ひっちゃかめっちゃかなってんのかよ。
「俺が好きなヴォンヴァートくんは、人格が融合してる君だ。……でも君が君の意思で生涯生きられないなんていやだから……わがままは言わないでおくよ」
「俺のためだって言うのか? 俺はその二つの人格があることを自覚してねえのに、お前はそれを分離させる実験をして欲しいってことか?」
「第一段階は。第二段階は、君をアルマタクトの一部に戻して、成功体の人格を戻して、君が消えることだよ」
「…………お前、俺が消えてもいいのか?」
「いやに決まってるよ」
オロクに背を抱かれて持ち上げれる、顔が近づいてきて唇が触れ合う。
ドクン、ドクンと高鳴る胸を許してやりたくなった。
いつか、オロクがスパイを止める理由は——……俺かもしれねえのか。
「ヴォンヴァートくん、大好きだよ」
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