27 / 52
第一章
5話 ⑤アインの兄ちゃん
しおりを挟むあれ。あいつらどこにもいないじゃん。
倉庫の前でうろうろしていたら、倉庫から出てきた人とぶつかってしまう。
「おっと」
相手は布団を一組持っていたらしい。地面に落としてしまう。
「わ、わりい……!」
駆け寄って手を差し伸べると、相手は驚いた顔をしてこちらを見た。
……眩しいくらいの金髪にピンク色の瞳。
「ああ、ごめんね。前見えてなくて」
差し出した手に捕まり、相手は立ち上がる。
「いや、こっちもウロウロしてたから。それ手伝うよ」
布団を持とうとしている生徒に伝えると、彼は枕を渡してきた。
「ありがとう。じゃあこれお願い」
「え、これだけ? 掛け布団とか……」
「いいよ。後輩に運ばせたことがばれると恥ずかしいしね」
相手は布団を持ち上げながらそう言う。
「後輩?」
「君1年だろ? 制服は特進科のAクラスだ、でも見たことがない。特進科は2・3年生が1・2年生の頃から、一緒に行動することもあるから顔は大体覚えてる。俺はちなみに2年」
SSクラスの赤と黒の制服を着ているから、1年のSSクラスの生徒だと思っていたけど、2年生だったのか。立ち上がると確かに嫌味なくらい背が高い。
「俺はヴォンヴァート・インシュベルン。あんたは?」
「君が入学早々ザイドを倒したって言う子か。俺はアラカ・ロゼルア。よろしく」
「ロゼルアって……まさかアインの!」
「そう、お兄ちゃん。アインと友達なのかい?」
「おう! アイちゃんとは仲良しだ!」
「ぶふっ」
と突然相手が吹き出す。
「あはははっ、はははっ」
「どうかしたのか?」
「ごめんごめん。ははっ、アイちゃん、あいつアイちゃんって呼ばれてるのか」
確かに、せんやがチヨって呼ばれてるのと同じで面白いのかもしれない。
「は~笑った笑った」
布団を持ち上げ、アラカは歩き出す。俺は枕を小脇に抱えそれについていった。
「アインとザイドが幼なじみだから……アインの兄ちゃんはザイドとも知り合いなのか?」
「お兄ちゃんでいいよ」
「じゃあ兄ちゃんで」
「あはは、本当に呼んでくれるとは……!」
むっとしていると、ごめんごめんと笑いをこらえてから答えてくれる。
「ザイドのことは昔から知ってるよ」
「アイちゃんはどうしてあんなにザイドが好きなんだ!」
「それは王子様だからだよ」
「え、ザイドって王子様なの?」
そんな設定あったっけ。
「違う違う。アインにとっての王子様。ザイドは理事長の息子だろ? だから小さい頃は学園が遊び場だったんだけど……」
ザイドって理事長の息子だったのか!? だから有名なわけだ。でも……
「……小さい頃? ザイドって小等部の特進科にはいなかったよな?」
「君は特進科にいたの?」
「俺は小中高特進科だぞ。そう言えば小等部で同じクラスだった生徒もいねえよな。中等部ではちらほらいたんだけど高等部に入ったらもう新顔ばかりだ」
「幼少期に魔法が発動されるのは稀で、だいたいが高等部から覚醒して入学するんだけど。その逆もしかり、高等部に入学する前に魔法の発動がなくなる子や出力が落ちる子がいるんだ。普通科に行くか、魔法学校から転校したんだろう。君みたいにエスカレーター式で特進科を進む方が珍しいんだよ」
「そうなのか」
「ザイドも普通科だったんだけど、小等部の頃は町で家族と一緒に暮らすから、ザイドの場合学園が家だったんだ。父親同士が同期で、アインや俺も学園で遊ばせてもらうことがあったんだ。ある日アインと妹がザイドと一緒にアルマタクトに近づいてね、侵入していた闇魔術組織と鉢合わせして襲われたんだけど、ザイドに庇ってもらってアインは無事だったんだ。代わりにザイドの右腕は魔法が使えなくなってね、アインはザイドを守るって決めたらしい」
「そんなことがあったのか」
だからアイちゃんはザイドに好き好きモードで話すんだな。ザイドの右腕が魔法を発動できないなんて初耳だ。いや、そう言えばストーリーであったか? 飛ばしたからわからん……。
俺が魔法を発動させない状況にした時睨まれたり敵視されたりしたのは、そう言う経緯があったからなのか。むやみやたらに敵視していたわけではなかったんだな。
「それからはザイドと結婚するだの、ザイドは王子様だの言いだして」
えええええ結婚!? 幼い頃だからいいのか?
「ほっぺたにキスしたり、口にキスしたり」
「いやそれもう惚れてる!」
「あはは、子供の頃の話だからね」
あの二人のファーストキスって……。最近奪われた相手が男な俺も人のこと言えないけど。
「そう言えば、その髪色で思い出したんだけど、ここでオロクくんとキスしてたのって、ヴォンヴァートくん?」
「ぶッ!?」
今度こそ何も飲んでいないのに噴いていしまった。
「な、ななななななんで」
「ザイドと同じで首席のオロクくんのことは知ってるよ」
「そうじゃなくて! なんで見てんだよッ!!」
「倉庫に布団を取りに来たら君達がいて、いっぱい人倒れてるし、なんか取り込み中だったみたいだから邪魔しない方がいいのかと思って、取りに来なおしたんだ」
つまり人が倒れてるけどオロクと取り込み中だったからUターンしたと。
「オロクくんとヴォンヴァートくんって――」
「付き合ってない!! あいつが変なんだ!」
「……へえ?」
なんだその楽しそうな顔は!
「あははは! 顔真っ赤だよ、ヴォンヴァートくん」
くそおおおお! オロクのやろおおおおおおおおお!!
2年SSクラスの個室の前へ着き、「ありがとう」とアラカはかがんで、俺の持っていた枕を回収する。
「またねヴォンヴァートくん、楽しかったよ」
「俺は楽しくなかった!」
「そんなこと言わないでよ」
楽しそうに笑うな!
「じゃあな」
「うん。ザイドとアインによろしく」
30
あなたにおすすめの小説
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う
ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。
次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた
オチ決定しました〜☺️
※印はR18です(際どいやつもつけてます)
毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します
メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目
凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日)
訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎
11/24 大変際どかったためR18に移行しました
12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです
悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました
藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。
(あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。
ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。
しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。
気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は──
異世界転生ラブラブコメディです。
ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる