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第一章
5話 ④ベビードール
シェルターのせんやに用意された部屋で、正座していると、せんやはシャワー室から出てくる。
すけすけふりふりのベビードールを着て……。
こわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。今から何が起こるんだ!
そう思っていたら、せんやが膝の上に座ってくる。首の後ろに腕を回してきて、わざとらしい潤んだ瞳で上目遣いをしてくる。
「レン……」
「せ、せんやさん……?」
顔を近づけてきて、唇を重ねようとしてくるので必死に避ける。とりあえずこいつを膝から降ろそうと立ち上がって、抵抗していると、せんやの足が絡み付こうとしてきて、ごちゃごちゃなってバランスを崩した。
ベッドの上にせんやを押し倒す形になり、せんやの瞳の潤みが増す。やめんか!
せんやは俺の首の後ろに腕を回し、促すように顔を近づけさせる、そして自身も目を瞑り、唇を尖らせ……それを見た俺は大きく手を振りかぶり。
「暴走が過ぎるぞッ!!」
「あいたああああああああああ!」
バチイイイイイイイイインッ――とほっぺたを思いっきり叩いた。
「何するんだ!」
「いやお前が何してるんだ! バカなのか!?」
「だって姫野くんが悪いんじゃないか! アインにあんなにたくさんキスしておいて俺には何もしないとか!」
「するわけねえだろ⁉︎」
「どうしてっ!?」
「ど、どうしてって……」
そんな必死になって聞かれても……。
「俺も姫野くんにキスしてほしい~」
目の潤みは嘘ではなかったらしい、わんわん泣き出したせんやに若干引く。
「落ち着け。とりあえずその姫野くんってのやめてくれ」
「やだやだ~キスしてくれないとやめてあげない~!」
こいつ……。
「姫野くんって呼んでいいからもう関わらないで」
「じょ、冗談! 冗談だからああああ!!」
せんやが落ち着くまでの間、若干距離を取り、服も着替えるのを見届けてから話しかける。
「闇魔術組織はどうなったんだ?」
「捕まえた人達は独房に入ってるよ。彼らに詳しい話を聞くってさ」
「詳しい話って?」
「組織についてならなんでも。今どれだけ人数がいるのか、目的はアルマタクトだけか。アルマタクトを手に入れてどう使おうとしているのか、とか」
「大変なんだな」
「他人事じゃないよ。君だってアルマタクトなんだから」
その時、コンコンとノックの音がした。せんやが立ち上がり、扉へ向かう。しばらくするとせんやと共にシーシェンがやってきた。
「何しに来たんだ?」
「ウォーゼンの件で話したいことがあったんです」
ウォーゼンの件? 自分が闇魔術組織のボスだった件か?
じーっと睨み付けていれば、相手は俺の前に正座してから話し始める。
「ウォーゼンは君がアルマタクトであると知っています。私と一緒に君が逃げてから、君の行方を追っていたはず。居場所が知られたからには闇魔術組織は君のことも狙ってくるでしょう」
「……そうか」
思い出せば、闇魔術組織の基地では魔術実験や身体検査が良く行われていた。それ以外の時間はガラス張りのケースに閉じ込められて機械的な外の景色を眺めるのみ。非常につまらない日常を過ごしていた。そんな時ぬいぐるみを貰ったんだっけ。闇魔術組織に捕まると言うことはあそこに戻ると言うこと、あんなところはもう嫌だ。
そう思っていたらいつの間にか俯いていたらしい、両頬に温かい感触が触れてきて、顔をあげさせられる。
「心配しなくても、君のことは私が守るよ」
近くにあるシーシェンの顔を見て、ああそう言えば、と思い出す。
シーシェンはよく俺の様子を見に来て、ガラスの向こう側からだが話をしてくれた。実験の時も検査の時も必ず話しかけてくれた。
だからこいつの姿を見ると安心するのかもしれない。
「…………」
「…………」
「見つめ合ってないで、ちゃんと最後まで伝えてください、シーシェン先生」
シーシェンの顔が横から伸びてきた手に押しやられ、俺はハッとしてから、不機嫌そうなせんやの顔を見やる。シーシェンは体勢を立て直してから言った。
「……そのことを上に報告したら、とりあえずAクラスのみんなにだけ君の正体を伝えるように言われました」
「伝えていいのか?」
「君が隠していたのは敵のスパイが組織に教えないようにするためでしょう? もう敵組織に知られてしまっているので。言ってもいいよ」
「他のクラスには教えないのか?」
「敵の出方を見てから、必要であれば特進科だけに発表する予定です」
「特進科って、2年や3年にも伝えるってこと?」
「うん。みんな強いから安心してください」
「会ったことはないけど頼りがいはあるな!」
その言葉にせんやが「それだよ」と返事をする。
「会ったことがないから、今度学年代表に会わせてあげるよ」
「学年代表?」
「そう。学年で成績1位の生徒が代表なんだ。1年の代表は現在1位のキリクゥ……くん」
「シロくんって成績1位だったのか!」
「ザイド……くんは必死すぎて空回りしてるし、オロク……くんは手を抜いてるからね」
「そうなのか」
オロクが手を抜く理由って何だろう……。スパイだから目立たないようにしてるとか? って言うかシーシェンはオロクがスパイだって知ってるのか?
せんやにこそっと聞いてみると、本人に聞いてみれば? と返された。
「その……シーシェンは敵組織のスパイが誰なのか知ってるのか?」
「知りません。昔のスパイなら把握してたけど、もう保護されてから何年も経ってるし、ウォーゼンがボスになったのなら新しいスパイが送られてきているでしょう」
つまりオロクはその新しいスパイと言うことか。
「その昔のスパイっているの?」
「特進科3年のSSクラス担任です。私が組織を抜けてから彼は組織に手を貸していないみたいですね。偶に私のサポートをしてくれてるよ」
つまりボスのシーシェンが組織を抜けてからはその担任も組織を裏切ったと考えていいのか。シーシェンのサポートをしていると言うことはシーシェンに忠誠を誓っているんだろう。
「そろそろ戻ろうか。みんなにスケジュールを伝えないといけないし」
「スケジュール?」
「大浴場を使用する時間とか、ご飯の時間とか、消灯時間とか」
「実習で疲れてたからみんな布団に寝ころんでたな……」
ご飯なんて普段食わないから俺も寝る気満々だったし。風呂はシェルターだからないものだと思っていた。シェルターに大浴場あるんだ……。すごいな魔法学園。
「そう言えば、5人くらい生徒がいなかったけど……」
「ああ。そいつらに呼び出されて、みんな俺が殴っといた。今は倉庫の前の廊下で寝てる」
「責任とって君が呼びに行きなさい!」
「え~めんどくさ」
「行きなさい」
笑顔の圧に負けた。
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