乙女ゲームの攻略キャラに転生したけど、他の攻略キャラ達の好感度が上がる一方で……!?

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第一章

5話 ⑤アインの兄ちゃん

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 あれ。あいつらどこにもいないじゃん。
 倉庫の前でうろうろしていたら、倉庫から出てきた人とぶつかってしまう。
「おっと」
 相手は布団を一組持っていたらしい。地面に落としてしまう。
「わ、わりい……!」
 駆け寄って手を差し伸べると、相手は驚いた顔をしてこちらを見た。
 ……眩しいくらいの金髪にピンク色の瞳。
「ああ、ごめんね。前見えてなくて」
 差し出した手に捕まり、相手は立ち上がる。
「いや、こっちもウロウロしてたから。それ手伝うよ」
 布団を持とうとしている生徒に伝えると、彼は枕を渡してきた。
「ありがとう。じゃあこれお願い」
「え、これだけ? 掛け布団とか……」
「いいよ。後輩に運ばせたことがばれると恥ずかしいしね」
 相手は布団を持ち上げながらそう言う。
「後輩?」
「君1年だろ? 制服は特進科のAクラスだ、でも見たことがない。特進科は2・3年生が1・2年生の頃から、一緒に行動することもあるから顔は大体覚えてる。俺はちなみに2年」
 SSクラスの赤と黒の制服を着ているから、1年のSSクラスの生徒だと思っていたけど、2年生だったのか。立ち上がると確かに嫌味なくらい背が高い。
「俺はヴォンヴァート・インシュベルン。あんたは?」
「君が入学早々ザイドを倒したって言う子か。俺はアラカ・ロゼルア。よろしく」
「ロゼルアって……まさかアインの!」
「そう、お兄ちゃん。アインと友達なのかい?」
「おう! アイちゃんとは仲良しだ!」
「ぶふっ」
 と突然相手が吹き出す。
「あはははっ、はははっ」
「どうかしたのか?」
「ごめんごめん。ははっ、アイちゃん、あいつアイちゃんって呼ばれてるのか」
 確かに、せんやがチヨって呼ばれてるのと同じで面白いのかもしれない。
「は~笑った笑った」
 布団を持ち上げ、アラカは歩き出す。俺は枕を小脇に抱えそれについていった。
「アインとザイドが幼なじみだから……アインの兄ちゃんはザイドとも知り合いなのか?」
「お兄ちゃんでいいよ」
「じゃあ兄ちゃんで」
「あはは、本当に呼んでくれるとは……!」
 むっとしていると、ごめんごめんと笑いをこらえてから答えてくれる。
「ザイドのことは昔から知ってるよ」
「アイちゃんはどうしてあんなにザイドが好きなんだ!」
「それは王子様だからだよ」
「え、ザイドって王子様なの?」
 そんな設定あったっけ。
「違う違う。アインにとっての王子様。ザイドは理事長の息子だろ? だから小さい頃は学園が遊び場だったんだけど……」
 ザイドって理事長の息子だったのか!? だから有名なわけだ。でも……
「……小さい頃? ザイドって小等部の特進科にはいなかったよな?」
「君は特進科にいたの?」
「俺は小中高特進科だぞ。そう言えば小等部で同じクラスだった生徒もいねえよな。中等部ではちらほらいたんだけど高等部に入ったらもう新顔ばかりだ」
「幼少期に魔法が発動されるのは稀で、だいたいが高等部から覚醒して入学するんだけど。その逆もしかり、高等部に入学する前に魔法の発動がなくなる子や出力が落ちる子がいるんだ。普通科に行くか、魔法学校から転校したんだろう。君みたいにエスカレーター式で特進科を進む方が珍しいんだよ」
「そうなのか」
「ザイドも普通科だったんだけど、小等部の頃は町で家族と一緒に暮らすから、ザイドの場合学園が家だったんだ。父親同士が同期で、アインや俺も学園で遊ばせてもらうことがあったんだ。ある日アインと妹がザイドと一緒にアルマタクトに近づいてね、侵入していた闇魔術組織と鉢合わせして襲われたんだけど、ザイドに庇ってもらってアインは無事だったんだ。代わりにザイドの右腕は魔法が使えなくなってね、アインはザイドを守るって決めたらしい」
「そんなことがあったのか」
 だからアイちゃんはザイドに好き好きモードで話すんだな。ザイドの右腕が魔法を発動できないなんて初耳だ。いや、そう言えばストーリーであったか? 飛ばしたからわからん……。
 俺が魔法を発動させない状況にした時睨まれたり敵視されたりしたのは、そう言う経緯があったからなのか。むやみやたらに敵視していたわけではなかったんだな。
「それからはザイドと結婚するだの、ザイドは王子様だの言いだして」
 えええええ結婚!? 幼い頃だからいいのか?
「ほっぺたにキスしたり、口にキスしたり」
「いやそれもう惚れてる!」
「あはは、子供の頃の話だからね」
 あの二人のファーストキスって……。最近奪われた相手が男な俺も人のこと言えないけど。
「そう言えば、その髪色で思い出したんだけど、ここでオロクくんとキスしてたのって、ヴォンヴァートくん?」
「ぶッ!?」
 今度こそ何も飲んでいないのに噴いていしまった。
「な、ななななななんで」
「ザイドと同じで首席のオロクくんのことは知ってるよ」
「そうじゃなくて! なんで見てんだよッ!!」
「倉庫に布団を取りに来たら君達がいて、いっぱい人倒れてるし、なんか取り込み中だったみたいだから邪魔しない方がいいのかと思って、取りに来なおしたんだ」
 つまり人が倒れてるけどオロクと取り込み中だったからUターンしたと。
「オロクくんとヴォンヴァートくんって――」
「付き合ってない!! あいつが変なんだ!」
「……へえ?」
 なんだその楽しそうな顔は!
「あははは! 顔真っ赤だよ、ヴォンヴァートくん」
 くそおおおお! オロクのやろおおおおおおおおお!!
 2年SSクラスの個室の前へ着き、「ありがとう」とアラカはかがんで、俺の持っていた枕を回収する。
「またねヴォンヴァートくん、楽しかったよ」
「俺は楽しくなかった!」
「そんなこと言わないでよ」
 楽しそうに笑うな!
「じゃあな」
「うん。ザイドとアインによろしく」
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