乙女ゲームの攻略キャラに転生したけど、他の攻略キャラ達の好感度が上がる一方で……!?

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第一章

6話②焼き菓子いじめ

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 回り込もうとすれば逆方向に逃げられる。撫でられねえ……触れたら癒される気がするのになぁ。そうだ。
「サイフェン」
「ん? 何リリアくん? 何でも言って」
「お菓子とか持ってないか?」
 お菓子作り趣味な奴なら持ってるだろ。
「持ってるよ。いつでもリリアくんが食べられるように!」
 それは怖えけど。
「くれ」
「うん、これは僕の手作りのクッキーだよ! はい、あーん」
 目をキラキラさせて無理やり口の中に入れてこようとしてくる。
「もう俺のもんだろ。そう言うのいいからさっさと寄越せ」
「うん!」
 こいつ俺のこと信用しすぎてほいほい渡しすぎじゃねえ? お金くれって言ってもくれそうじゃねえか。こいつのことは今度から財布くんと呼ぼう。
「ほらほらアップルおいで~クッキーがあるぞ~」
 こう言う可愛い系のキャラは大体女子みたいに甘いものが大好物なんだよ。
「ほらロディム」
 イルサがロディムの顔を覗き込むが、ロディムは首を振る。
「俺はアップルじゃないし。クッキーは好きだけど、暴力者の仲間が作ったクッキーなんていらない」
「いやお前だって俺のこと殴ろうとしてきただろ。正当防衛だ」
「んな!?」
「言われたなロディム。良かったらそのクッキー俺にくれよ」
「イルサ、そんな何が入ってるか分からないもの食べたら危ないよ」
「テメエ大分失礼だぞ。俺はインシュベルンと仲良くなりたいんだ、暑苦しいし邪魔くさいし離れてくれ」
 ガーンと口を開けてショックを受けるロディムを見て哀れに思う。可愛がっているように見えて意外と辛辣だ。いや、これは天然か?
 ちなみにこいつらの好感度と親密度は今こうだ。

イルサ・エラルド
誕生日5/23 年齢16歳 趣味バンド 魔法火魔法 寮???
親密度 11%
好感度 4%

ロディム・トップル
誕生日2/3 年齢16歳 趣味裁縫 魔法回復魔法 寮???
親密度 1%
好感度 0%

 イルサはバンドが趣味なのか。
「イルさんはバンドとか組んでるのか?」
「昔な。今は見に行ったり聞きに行ったりする方。偶に楽器もいじるけど」
「へえ」
「お前の趣味は?」
「それはもちろん喧嘩だ!」
「そういやそうだったな。だからあんなに強いわけだ。イルフォントなんて鍛錬が足りなかったって鍛えなおしてるぜ。そのうち挑んでくるかもな」
 マジかよ! 嬉しい情報だが……クラスメイト殴ったら来世ポイントが減るんだよな。まあそこは善行で補うとして……楽しい喧嘩ができるように周りの奴らを鍛え上げるのも悪くねえな!
 うんうんと頷いていると教室に着く。それぞれの席に着いて、せんやが来るのを待っていると。
「げ、何であいつまで一緒……」
「聞こえてるよヴォンヴァートくん。君のことを説明するんだから私は必要でしょう」
 せんやが現れたと思ったらその後ろにシーシェンを引き連れてきやがった。なんか不機嫌そうだな。
「話があるから。後で保健室に来て」
「え。やだけど」
「薬も渡したいし」
「持ってこいよめんどくせえな」
「それ以上私をイラつかせたら研究室の拘束具に縛り付けていっぱい味のある食事を取らせますよ」
「すみませんでした! 行きます行きます!」
「シーシェン先生。味のある食事ってどう言う意味ですか?」
「ヴォンヴァートくんは例の件で食事や飲料の味を感じられないんです」
「そうだったの?」
 せんやの問いにみんなの視線がこちらに向かう。頷けば、せんやは不思議そうな顔で言った。
「味のある食事が取れるのは嬉しいことじゃない?」
「そうですよね」
 シーシェンはこくりと頷く。シーシェンテメエ。
「ここに味のある焼き菓子を用意してきました。ヴォンヴァートくん、今食べてみて」
「…………っ」
 シーシェンが手提げカバンから菓子を取り出す。俺の机の前までやって来て、焼き菓子を差し出し、見下ろしてくる。
「味の分かる成分がたっぷり入ってるから安心して」
「お、お前……」
 つまりその美味しそうな焼き菓子の中にはシーシェンの唾液がたっぷり……それをみんなの見ている前で俺に食わせようとしているのか。
 ――きっしょ!!!!!
「さあ、ヴォンヴァートくん。この間実験は済ませたでしょう。心配しないで」
 不機嫌そうだし従うしかなさそうだが早くも吐きそうだ。
 誰か助けてくれ。
 きょろきょろとあたりを見渡すと、みんな不思議そうな顔をしているだけで誰も分かっていない。いや分かられたらおしまいだ。
 せめてと吸血鬼だと知っているせんやに助けを求めて目で訴える。見つめ返してきてぽっと頬を赤くするだけである。役立たずめ。
「さあ、はやく食べて」
「う、うう……」
「私を怒らせたらどうなるか、分かったよね?」
「わ、分かったけど……」
 どうしてそんなに怒ってるんだよ……。
「この間直接口の中に入れたでしょう?」
「…………」
 思い出させるな。
 シーシェンとしたチョコレート味のキスのことを思い出すと。必然的に思い出されるものがあった。
「今何を思い出したの?」
「…………別に」
「…………分かりました。食べるのがそんなに難しいなら手伝ってあげるね」
「え?」
 シーシェンは焼き菓子を口の中に入れようとする。
 お前それを教室でしたらダメだろ!?
「あ、ここじゃだめですね。今すぐ保健室に……」
「食べればいいんだろ、食べれば……!」
 シーシェンの手の中にある焼き菓子に、あむっと食いつく。シーシェンはそれをじっと眺める。うう。美味しい……。めちゃくちゃ甘い。
 でも唾液……俺は教室で、みんなの前で美味しそうにシーシェンの唾液を食っている。何だこの状況、地獄かよ。後で口の中に指突っ込もう。
「安心してください。私の魔力さえ取り込めればいいので私の血液を混ぜました」
「早く言え……」
 もう泣きそうだ。
 その後、シーシェンとせんやの説明で俺が闇魔術組織で作られた生命体・吸血鬼であり、薬を飲んでいることや組織に狙われていることがみんなに知らされた。
「君達はまだ実戦に参加できないけど、ヴォンヴァートくんが狙われると言うことは君達にも危険が及ぶってことだから注意して。来週から始まる学年別個人戦は実戦参加権が与えられる試験でもある。実戦に参加できるようになったら俺達はヴォンヴァートくんを護衛する形の仕事が増えるから、実技の授業でもそう言う練習を増やしていこう」
「ヴォンヴァートくんの周りにいると魔法も使えなくなるので、一定の距離をあけて戦わなければなりません。ヴォンヴァートくん自身がとても強いので守る必要もない気がしますが……薬を使われたら終わりだからね。みんなにも言えることだから気を付けて」
「2週間様子を見て、先生達で2・3年の特進科にも伝えるかどうか話し合うよ。2・3年の代表にはある程度説明しておくことになってる。ヴォンヴァートくんは後であいさつに行こうね」
「分かった」
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