少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ

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イヴ視点5

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ある日、ユーリは母親の手伝いをしていた。
重い紙袋を運んでよろけていて、とても危なっかしい。
手伝いの邪魔をしてしまうのは可哀想だから、こうして少し離れた物陰からユーリを見守っている。

転げそうになっていたから、風の魔術でユーリの足元に風を送るとフワッと体が浮いた。
転がる事なく地面に足が付いてホッと一安心した。

ユーリは嬉しそうに、後ろから付いて来ていた母親に話していた。
俺の魔術でユーリはあんなに喜んでくれる…それがとても嬉しい。

ユーリは紙袋を風で浮かせようとしていたが、全然浮いていない。
なんて愛しいんだ、ユーリが望むならどんな魔術でも見せてあげるのに…

俺は足元にあるものを踏みつけながら、ユーリを見守っていた。
ユーリに近付く奴は俺が排除する、だから安心してていいからね。

踏み潰すと、足元に砂が溜まっていて砂は風に乗って何処かに飛んでいった。
毎日ユーリと会う度に魔物がユーリを狙う。
俺のユーリに近付ける存在だとでも思っているのか。

魔物で不快な気分になったが、俺がユーリの笑顔を守るために排除する…それだけだ。

ユーリの嬉しそうな顔だけを思い出して歩き出した。

今日はお姫様の誕生日パーティーだと事前に聞かされていた。
俺にとってどうでもいいが、俺は聖騎士だからエマ様を守らないといけない…歳も近いし、俺が直々に選ばれた。

ユーリに会いにいくには、俺は聖騎士になったままの方が効率がいい。

別にお姫様の騎士になったからといって普段の行動は何も変わらない。

ユーリが俺を変えてくれた、今があるのはユーリのおかげだ。

エマ様は6歳の誕生日を迎えた日だ。
確かいつの日か、ユーリがエマ様と同じ年齢という話をユーリとユーリの母親が話していた事を思い出した。

年齢が同じという者など、沢山いる…そんなの分かっているが…心がどす黒くざわつく。
俺も同じ日、同じ時間に生まれたかったな。

赤ん坊の時からユーリを見守っていたかった…5年以上ユーリを知らなかったなんて、耐えられない。

大丈夫、大丈夫だ…これからユーリとの思い出を作ればいいんだ、俺しか知らないユーリがいるんだ、それでいい。

ユーリの事を考えながら気持ちを落ち着かせた。

ユーリがいなきゃ、俺の心は壊れていたかもしれない。

俺はユーリに生かされている、とても満たされていく。

パーティーでは、父によりいろんな人への挨拶で振り回されていた。
愛想笑いも疲れる、早く終わらないかな。

エマ様にも顔合わせをしたみたいだが、正直覚えていない。
皆俺にとって同じような顔に見えるから…

挨拶が終わると、逃げるように庭に出た。
賑やかな会場内と違い、庭は風により木の葉が揺れる音のみが耳に届いた。

ベンチに腰を下ろして、窮屈なネクタイを緩めた。
誰も見ていないから、このくらいしても大丈夫だろう。

あんな窮屈な箱の中に長時間いたら窒息死してしまう。
ユーリとなら、指一本も動かない箱に閉じ込められても死ぬまで出たくないんだけどな。

「あ、あの…」

ザワザワと、葉の音に混ざり…幼い少女の声が聞こえる。
目線だけ横に向けると、エマ様が遠慮がちに立っていた。

正直、面倒だな……と思ったが、お姫様をぞんざいに扱うわけにはいかない。
たとえお飾りとはいえ、俺は聖騎士でいなきゃいけないから…

ユーリのためなら…俺は完璧な作り笑いでも何でもしてあげる。

ネクタイをすぐに締めて、エマ様に向かって笑いかける。

「どうかなさいましたか?エマ様」

「イヴは聖騎士なの?」

「…そう呼ばれています」

「私の騎士になって!」

突然俺の横に座って、エマ様は目を輝かせていた。

俺はずっと空返事を続けていた。

騎士ね……俺はずっとユーリの騎士だけど、と心の中で思っていた。
何を話したか正直覚えていないが、ずっとユーリの事を考えていたのは覚えている。

明日のユーリはどんな顔を見せてくれるだろうか。
それだけが俺が生きている中で唯一の楽しみだな。

「じゃあ、私…行くね」

「会場まで送ります」

会場から庭への扉は透明なガラスになっていて、会場内から俺のいるところは丸見えだ。

いつから見ていたのか、父と目が合い…エマ様に気付かれないようにこっそりとため息を吐いた。
これは、送らないと後でうるさいだろうな。

両親は聖騎士である実の息子より王族の方が大切だから…

エマ様は嬉しそうにしていて、俺の腕に触れた。
作り笑いが崩れそうだ、早く送って…体調が悪いとか適当な理由で帰ろう。

本当に体調が悪い、吐きそうだ…さっきまでユーリの姿を思い出して気分が良かったのに…

俺はエマ様を会場に送ってから、父のところに急いで向かった。
父はエマ様と仲良くしていた事に喜んでいたが、そんな事より早く帰りたい気持ちでいっぱいだった。

「父さん、体調が優れないので帰ります」

「大丈夫か?グレイグに送らせよう」

「いえ、一人で帰れます」
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