少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました

猫むぎ

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イヴ視点6

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グレイグとは騎士団長の名前だ。
本来なら王族の近衛騎士になっている筈なのに、聖騎士の俺を育てるために屋敷の中にいる時はいつも後ろにいる。

聖騎士の稽古以外での外出の時は付いて来ないからいいけど、暑苦しい……性格とかではなく見た目が汗臭いからな。

俺を稽古するより、本業は騎士団長だから護衛もしたいのだろう。
グレイグなんかと帰ったら、体調が悪化する。

心配されるほど俺は昔ほど弱くはない筈だ。
このくらいなら、自分で何とか出来るくらい力が残っている。

会場を一人で出て、暗い夜道を一歩一歩確かめながら歩く。
行く場所はないけど、外に出てきてしまった。

やっと一人になれたんだ、ユーリの家にでも行こうかな。
俺を癒してくれる安らぎは、ユーリのところだけだ。

俺がユーリの家を知っている理由は単純な事、見たからだ。

毎日外から病室を覗いてユーリを見つめていた。
俺の存在に気付いていないユーリは振り返りはしなかったが、姿をこの目で焼き付けるだけで良かった。

他は望まない、望んだら全て失うかもしれない。

でも、ユーリの世界に俺がいない事が耐えられなかった。
俺の瞳には曇りなく映るのに、彼の瞳には俺はいない。

事情を聞くためとはいえ、見習い騎士がユーリの家に訪れる。
事件に関わる人物だから少しの間、護衛も兼ねている。

俺が直接ユーリを守りたい、他の奴になんて任せられない。

自由に出来ない立場が憎い、見ているだけしか出来ない自分が嫌いだ。

たまたまその時、ユーリが退院するところで家に帰るところを後ろから付いて行った。
寄り道せずに母親と手を繋いでいろんな話をしていた。
それだけだけど、またユーリの事を知れて俺の気持ちは舞い上がっていた。

なにが好きだとか、そんな何でもない話でも俺にとっては宝物だった。
よく周りには感情が分かりにくいと言われているが、ユーリが俺の事を理解してくれるならそれだけでいい。

いつか直接彼と話して聞きたいな、成長すると好みも変わる。
常に最新の情報がほしい、過去の好みは全て知りたいが贈り物をするなら新しいものがいい。

ユーリの家は広場から少し離れた民家だった。
この住宅街は見た事はあるが、来た事がなかった。

この国には三つのエリアが存在する。

ユーリの住む一般家庭が住む平民街と、俺の住む屋敷がある貴族街、そして治安がとても悪い貧困街だ。

大きさとしたら、平民街の方が大きいが貧困街とすぐ隣にあるから心配だ。
でも大丈夫、俺がユーリを守るから…誰が相手だとしても…
この手を穢れた血で濡らしたとしてもユーリの笑顔を守るためなら…

家まで見守って、俺が遠くから守る使命は終わった。
それは終わったが、足は名残惜しくて動かない。

灯りは付いているが、声までは聞こえない。
ちょっと残念に思いながら、ユーリにおやすみと口にした。

ユーリというより家に向かって小さな声で言ったから誰からも返事は来ない。
それでも、毎日のように言う事に意味がある。

いつか、直接ユーリにおやすみを言いたいな。
ユーリはどんな顔で返事をしてくれるのかな。

今のユーリは別の誰かに言っているんだろうな。
それがたとえユーリの両親でも、嫉妬で心が燃えそうだ。

窓に映る自分の顔を見て、無理矢理気持ちを落ち着かせる。

いくらユーリから俺の姿が見えなくても、この顔は向けられない。
元の自分の顔に戻り、家にいるユーリに微笑む。

可愛い可愛い俺のユーリ、また明日来るよ。

俺の吐き気はいつの間にか治っていて、そのまま家に向かった。
毎日来ているから、ユーリの日課を覚えた。

ユーリの朝は家の手伝いで早い、俺も早起きするためにすぐに寝なくてはいけない。
ユーリが起きる前に起きて見守らないと意味がない。

聖騎士になるという意味を、俺はあまり理解していなかった。
いつもと大して変わらないだろうと、そう思っていた。

普段騎士の稽古はしていたが、エマ様の騎士になったせいでより稽古の時間が増えた。
王族を守るという事は、普通の騎士とは違い国と国の戦いにも関わるから、もっと強くならなくてはいけないのは当然だ。

ユーリのためにも繋がるから、手は抜かない。
それだけだったら、俺も悩む事はなかった。

エマ様のところに行かなくていけなくなった。

ユーリとの時間が減っていく、俺にとってそれは苦痛でしかない。
癒しなしでどう生きたらいいのか分からない。

だから、無理矢理時間を使いユーリに会いに行った。
ユーリを魔物から守るために、それだけは譲れない。

今のエマ様は俺がいなくても、騎士団長や他の騎士が大勢護衛している。
俺は最年少だが、歳の近い騎士はいくらでもいる。

俺はエマ様の騎士になったが、守るだけをすればいいんじゃないのか?
なんで話し相手もしなくてはいけないんだ。

俺じゃなくても、話したい騎士はいくらでもいる。
それこそ歳の近い騎士だってエマ様と友達になりたそうだ。

他の護衛が常にいるから、変な事にはならない。

どんな事があっても、俺は常にユーリの傍にいるよ。

それは16歳になると通う事を義務付けられている魔術学校に入学しても変わらない。
俺にとってユーリとの事は既に生活の一部なんだ。

忙しくて日に日にユーリに会う時間は減っていき、とうとう顔を見るのも難しくなった。
それでも、脳内で覚えているユーリの姿を思い出して活力にしている。

なにがあってもそれだけは変わらない、絶対に…
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