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そら豆のフリッターエビ塩掛け
そら豆のフリッターエビ塩掛け3
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「木こりかぁ。そうなると木材の調達も薪の調達も安定するな。村はまだまだやらなきゃならんことがある」
アリシャが頷くのを待って、レオは右後ろに位置する壊れた水車小屋を振り返った。
「あれが直せれば粉挽きは断然早くなるし、なんなら近隣の村から粉挽きに来るであろうから金がとれるようになるだろうよ」
それにだ。と、振り返るのをやめて前を向いた。
「そうやって人が来れば宿屋にくる人も増える。泊まる者もおるだろう。泊まらずとも食事をとっていく者もおるだろう」
確かボリスも水車小屋は直した方がいいと言っていた気がする。こうやって利点を挙げられると確かにそうだとアリシャも納得していた。
「そろそろ本格的に村の中でも物の売買を始める頃かもわからんな」
「お店を作るということでしょうか?」
「いや、それはまだ急がんでいい。互いに提供出来るものを無償提供しておっただろう? それをやめて、小麦粉なら一樽いくらと値をつけるのだ。それをアリシャが買い取り、作った料理に値段をつけて出す」
そうなるとこれまでのようにてんさい糖を贅沢に使って何かを作るのは無理そうだ。アリシャにはそこまでの手持ちはないのだから。
「心配か? そこでな、私は宿屋に部屋を借りようと思うのだ。個室をな」
一泊食事付きで二百銅貨だと事も無げにレオは言う。
「高いですね……」
「君の懐にいく金だぞ」
「え? 私に?」
「宿屋の主はアリシャだからな」
確かに住んでいるのはアリシャだが、レオが住むようになるなら主はレオなのではないかと思った。率直にそう述べるとレオは低く柔らかい笑い声をあげた。
「私は客だな、どちらかと言えば。こうしようではないか。次の春まではアリシャも食料庫の食材をいくらでも使うがいい。ああ、すまん。私の薬と引き換えに手に入れた食材をだな」
食料庫には豊富な食材が保存されているが、レオの物とドク一家の物が今は一緒くたになっている。穀物だけとってもどの樽がどちらの所有物かわからない状態だ。
「私にはレオさんの物なのか、ドクさん達のものなのかわかりませんが……」
「そうだな。今あるものは我らとて線引できん。これからあそこに入れるときは棚や場所をわけるとしよう」
そこで暫し口を閉じて考えると、こうしようと提案する。
「新しく収納する野菜は適量ドクから買い取りなさい。これまであった食材はドクのも使って良いことにして、ドク一家もアリシャへの支払いは来春からでどうだろう?」
どうだろうと聞いてくれるが、それは願ったり叶ったりだ。食材を貰えてそれを金に出来れば、来春からは自分で購入出来る。
「沢山お金を貯めさせていただきます!」
勢い余って前のめりで宣言するが、レオは優しくそれは違うと否定する。
「お金が溜まったらシーツを買いなさい。そして冬までに宿屋らしくしておけば、もっと金が貯まるだろう。もし、春に食材のお金が貯められなくてもツケにしていい」
確か、シーツは百五十銅貨だ。宿屋は一泊食事付きで八十銅貨なのだから、二回で元がとれる。
「そうですね! とにかくシーツを一つ買います。ああ、ベッドを作って取らわなきゃ」
「それは私が作ろう。なんて言ったって個室を春まではタダにして貰うのだからな。ジャンもまだ収入が得られないから食事代代わりに宿屋を整えるのを手伝ってもらえばいい」
ジャンはかなり回復したとはいえ、足はずっと引き摺るとレオが話していた。それでやれるのだろうかと思ったのが伝わったようで「やれるだろう」と、レオは太鼓判を押す。
「鍛冶屋だから力もあるし、ゆっくりなら出来ると本人も言っておった。それにツケが貯まるのは皆嫌なものなのだから、働かしてやってくれ」
アリシャにツケが貯まっているみたいな言い方だが、食材はアリシャの物ではないのだから──などと考えだすとややこしくなる。
レオがここの法律みたいなものだし、レオは間違ったことを言わないと思っているのでアリシャはややこしいことは一先ず考えない事にして、頷いた。
話しているとリリーの店が見えてきて、いつも通りリリーは店で籐のカゴを編んでいた。接客してない時は売り物のカゴを編むのだから、リリーは働き者だ。決して世間話ばかりしているわけではないらしい。
「あらぁ、いらっしゃい。二人で来るなんて珍しいこともあるもんだ」
言いながら編みかけの籐のカゴを置いて、手を陽射しを遮って空を見渡す。
「雨が降りゃしないかい?」
「そこまで珍しくもなかろう。とりあえず薬を持ってきた」
レオは大袈裟なリリーに持ってきたカゴごと手渡した。リリーは受け取るや否や土瓶を棚に並べていく。
「昨日までの分と返却された土瓶を渡すわ。その前に、はい、お待たせべっぴんちゃん」
リリーはアリシャからやはりカゴを受け取り中からベリーパイを取り出した。
「ん? 八、九……一個足らないよ?」
「それが一個エドに食べられてしまいました……」
「あらあら、しっかりお代を貰いなさいよ! あんたのパイは高いんだから」
ブルーのベリーを沢山乗せたベリーパイは籐で作られたドーム型の蓋付のカゴに入れられる。虫が寄ってこない優れ物だ。
「で? もしかして──」
そこまで言いながら、リリーは店舗の奥に一旦姿を晦ませ、直ぐに土瓶を両手に持って出てきた。
「もしかして木こりの話かい?」
アリシャが頷くのを待って、レオは右後ろに位置する壊れた水車小屋を振り返った。
「あれが直せれば粉挽きは断然早くなるし、なんなら近隣の村から粉挽きに来るであろうから金がとれるようになるだろうよ」
それにだ。と、振り返るのをやめて前を向いた。
「そうやって人が来れば宿屋にくる人も増える。泊まる者もおるだろう。泊まらずとも食事をとっていく者もおるだろう」
確かボリスも水車小屋は直した方がいいと言っていた気がする。こうやって利点を挙げられると確かにそうだとアリシャも納得していた。
「そろそろ本格的に村の中でも物の売買を始める頃かもわからんな」
「お店を作るということでしょうか?」
「いや、それはまだ急がんでいい。互いに提供出来るものを無償提供しておっただろう? それをやめて、小麦粉なら一樽いくらと値をつけるのだ。それをアリシャが買い取り、作った料理に値段をつけて出す」
そうなるとこれまでのようにてんさい糖を贅沢に使って何かを作るのは無理そうだ。アリシャにはそこまでの手持ちはないのだから。
「心配か? そこでな、私は宿屋に部屋を借りようと思うのだ。個室をな」
一泊食事付きで二百銅貨だと事も無げにレオは言う。
「高いですね……」
「君の懐にいく金だぞ」
「え? 私に?」
「宿屋の主はアリシャだからな」
確かに住んでいるのはアリシャだが、レオが住むようになるなら主はレオなのではないかと思った。率直にそう述べるとレオは低く柔らかい笑い声をあげた。
「私は客だな、どちらかと言えば。こうしようではないか。次の春まではアリシャも食料庫の食材をいくらでも使うがいい。ああ、すまん。私の薬と引き換えに手に入れた食材をだな」
食料庫には豊富な食材が保存されているが、レオの物とドク一家の物が今は一緒くたになっている。穀物だけとってもどの樽がどちらの所有物かわからない状態だ。
「私にはレオさんの物なのか、ドクさん達のものなのかわかりませんが……」
「そうだな。今あるものは我らとて線引できん。これからあそこに入れるときは棚や場所をわけるとしよう」
そこで暫し口を閉じて考えると、こうしようと提案する。
「新しく収納する野菜は適量ドクから買い取りなさい。これまであった食材はドクのも使って良いことにして、ドク一家もアリシャへの支払いは来春からでどうだろう?」
どうだろうと聞いてくれるが、それは願ったり叶ったりだ。食材を貰えてそれを金に出来れば、来春からは自分で購入出来る。
「沢山お金を貯めさせていただきます!」
勢い余って前のめりで宣言するが、レオは優しくそれは違うと否定する。
「お金が溜まったらシーツを買いなさい。そして冬までに宿屋らしくしておけば、もっと金が貯まるだろう。もし、春に食材のお金が貯められなくてもツケにしていい」
確か、シーツは百五十銅貨だ。宿屋は一泊食事付きで八十銅貨なのだから、二回で元がとれる。
「そうですね! とにかくシーツを一つ買います。ああ、ベッドを作って取らわなきゃ」
「それは私が作ろう。なんて言ったって個室を春まではタダにして貰うのだからな。ジャンもまだ収入が得られないから食事代代わりに宿屋を整えるのを手伝ってもらえばいい」
ジャンはかなり回復したとはいえ、足はずっと引き摺るとレオが話していた。それでやれるのだろうかと思ったのが伝わったようで「やれるだろう」と、レオは太鼓判を押す。
「鍛冶屋だから力もあるし、ゆっくりなら出来ると本人も言っておった。それにツケが貯まるのは皆嫌なものなのだから、働かしてやってくれ」
アリシャにツケが貯まっているみたいな言い方だが、食材はアリシャの物ではないのだから──などと考えだすとややこしくなる。
レオがここの法律みたいなものだし、レオは間違ったことを言わないと思っているのでアリシャはややこしいことは一先ず考えない事にして、頷いた。
話しているとリリーの店が見えてきて、いつも通りリリーは店で籐のカゴを編んでいた。接客してない時は売り物のカゴを編むのだから、リリーは働き者だ。決して世間話ばかりしているわけではないらしい。
「あらぁ、いらっしゃい。二人で来るなんて珍しいこともあるもんだ」
言いながら編みかけの籐のカゴを置いて、手を陽射しを遮って空を見渡す。
「雨が降りゃしないかい?」
「そこまで珍しくもなかろう。とりあえず薬を持ってきた」
レオは大袈裟なリリーに持ってきたカゴごと手渡した。リリーは受け取るや否や土瓶を棚に並べていく。
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リリーはアリシャからやはりカゴを受け取り中からベリーパイを取り出した。
「ん? 八、九……一個足らないよ?」
「それが一個エドに食べられてしまいました……」
「あらあら、しっかりお代を貰いなさいよ! あんたのパイは高いんだから」
ブルーのベリーを沢山乗せたベリーパイは籐で作られたドーム型の蓋付のカゴに入れられる。虫が寄ってこない優れ物だ。
「で? もしかして──」
そこまで言いながら、リリーは店舗の奥に一旦姿を晦ませ、直ぐに土瓶を両手に持って出てきた。
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