ダークファンタジア番外編

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14部

雷獣の国にて

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「ようやく春だー!!!」
 ここは雷獣の国である。病院にいた雷の巫女ララは、雪が溶けて病院から出ることができた。学校には赤い月が終わってから通うことになっている。ララには二人の女性護衛騎士がつくことになった。世話をする侍女も二人いる。
「私ごときに護衛なんて……」
「御身は今や王族並にこの国にとっては大事な御方ですから」
「おんみ……」
女性騎士は二人とも結構美人で強そうな女性だった。年は100歳過ぎといったところである。
(目の保養にはなるけど……私なんかにもったいない)
「普段は私達二人が交互に護衛いたしますが、外に出る時などは、さらに増えることもありますので」
「さらに!?」
「御身は大事な方ですから」
「はあ……おんみ……」
(みんなマジで言ってるんだからまいっちゃうわ)

ララはちらっと聞いただけだったが、ララが大けがをして、ソルはかなり国王に怒ったようだ。それも事故ではなく故意の事故だったせいである。
「また巫女に何かあったら、もうこの国には来ないからな」
というようなことを言ったらしい。
雷獣の一族が最も得意とするのは雷の魔法である。ソルにそっぽを向かれるなんてシャレにならないし、国外のいい笑いものである。ララの安全はもはや国策になってしまった。
(気持ちは分かるけど、私の自由はなくなったも同然。とほほ)

ララはヒルデリアの神殿内にある部屋で寝泊まりし、そこから学園に通うことになった。学園には寮もあるが、巫女としてのおつとめもあるので、通いになるようだ。ちなみに神殿の中の部屋はララが入院している間に結構豪華になっていた。
ヒルデリアの神殿にて、ララは先輩巫女のムーラに、何度もお見舞いに来てくれたお礼を言った。
「本当に元気になってよかったわ。これからがんばってね」
「はい、あのーところで、ムーラ様には護衛騎士とかいるんですか?」
「いないわよ」
「え?」
「私は自分の身は自分で守れますから。もちろん、外に行く時には騎士が同行したりもするわよ。あなたは魔法の使い方もまだまだだし、まだ子供だもの。窮屈かもしれないけれど、二人とも気さくな性格だから、あまりうっとおしがらずに受け入れてね。ちなみに二人は私が選んだの。もちろんあなたが気に入らなければ、交代も可能よ」
なんと、護衛騎士の二人はムーラが選んだらしい。護衛の二人は頼りになるお姉様、といった感じで、好印象だった。ララ的にはナイスな人選である。
「いえいえ、私などにはもったいないくらいです」
ララは恐縮しならが言っていた。
「あなたを害する一族の者はもういないとは思うけれど、なにがあるやらわからないから」
「はあ……あのーところで、ムーラ様の個人的なことを聞いてもいいですか?」
「なあに?」
「ムーラ様は、第一王子様の恋人だったりするんですか?」
次の王は第一王子に決まっている。その恋人は、王妃候補ということになる。
「私? 私にはすでに恋人がいるわよ。赤い月も彼と過ごすのよ。今度紹介するわね」
「はい」
(ムーラ様の恋人。かなりのイケメン?)
ララは勝手に想像していた。
「次の王妃様に関しては、すでに候補が何人かいるわよ。殿下は赤い月もその方々と過ごすんじゃない? 私はとても嫉妬深いの。彼を独り占めしなきゃ気がすまないタチなのよ。彼にも浮気したら殺すって言ってるくらいよ。うふふ」
物騒な言葉にララの笑いは引きつっていた。
(冗談でもなさそうなところが怖い。でも、王様は妃を最低二人はめとらなきゃだめだしなあ)
世継ぎのため、この国では王妃は二人以上という決まりがある。一番重要なのが魔力であり、顔は二の次だ。体力も重要である。王妃候補は王妃試験というのを受ける必要があり、その項目をクリアできなければ、王妃にはなれない。自由恋愛が許されない王子様は大変だ。ちなみに雷獣の一族は基本的に恋愛は一対一である。相手を複数もてるのは王族くらいである。恋人が浮気してもめたりということも結構ある。女同士で決闘することもある。
「じゃあ、ムーラ様はその彼と結婚するんですか?」
「もし子供ができたら、その時は結婚するつもりよ。でもそうなると巫女を降りることになるのよね。私は巫女の仕事が好きだから、やめたくないって気持ちもあるのよ。他の女の子達は、早く引退しろって思ってるだろうけどね」
噂では、巫女候補も学園で優秀な成績を収めた者や魔力が高い者から選ばれるようだ。

(なんで私が巫女をやってるのか謎だわ)
ララは自分でも思っていたのだった。

「それに、今はあなたもいるし、なんだかこれから楽しそうじゃない? それなのに今引退なんてもったいないでしょう?」
「はあ、私もムーラ様が好きなので、しばらく引退しないでほしいです」
「まあ、ありがとう」
ムーラはうれしそうに微笑んでいた。ララは微笑みながら、(ムーラ様の胸、結構でかくていいんだよねえ)などと男のようなことを思っていた。
(嫉妬深い巨乳美人、いいね)
「あ、そうだ。ムーラ様は、聖地に巡礼はされたんですか? 殿下が、巫女は国のお金で巡礼ができるっておっしゃっていたんですよ」
「ええ。五年に一度は巡礼ができるわよ。いずれは聖地にソル様の神殿もできるといいわね」
「はい! 大人になるのが楽しみです!」
(大人になって聖地巡礼、ガーベラ様の神殿も楽しみ! そして憧れのあのプリンも!)

「そうそう、ラーズ様のお話は聞いた? ラーズ様がアーロンに切り絵を依頼したのよ。そのお礼に、今度のお祭りに降臨してくださるんですって」
「なんですって!?」
「王妃様方は大喜びみたいよ。私も楽しみよ。ラーズ様ってとっても素敵な方ですものね」
「ラーズ様が……お祭りに人が殺到しそうですね」
「そうでしょうね」
「私も楽しみです」

赤い月の期間になった。ララはその間昼間は家庭教師に来てもらって勉強を見てもらうことになった。そして体力回復のために、運動もしている。騎士の屋内訓練所を使わせてもらい、久々に走ったりしたのだが、かなり体力が落ちていた。体力自慢だったために残念である。護衛の二人に付き添ってもらい運動していると、あわてて伝令がやってきた。
「大変です。ソル様が巫女様に会いにいらっしゃいました。急いでお戻りください!」
「ええー?」
これは大変だと、大急ぎで馬車で戻り、もうすでに待たせてしまっていたので、その上からすっぽりローブだけかぶされてソルに会いに行った。ソルとアマンザは、神殿の中の客間のような部屋で待っていた。

「ソル様! お待たせして申し訳ありません」
「突然来てごめんね」
アマンザはちょっと申し訳なさそうだった。
「こんにちは」
ソルは人間の言葉で挨拶してくれた。
「こんにちは」
「どうぞ」
ソルはピンク色の大きな花が二十本ほどある花束を渡してくれた。
「ありがとうございます。とっても綺麗ですね」
「おかあさん、もらった」
「え……ガーベラ様に? 感動です」
ガーベラの神殿の周りに咲いている花なのかと想像し、ララは涙を浮かべるほど感動していた。
「僕はぶどうジュースをもって来たよ」
「ありがとうございます」
「ソルは人の言葉を勉強しているんだ。人と話すとうまくなるのが早いでしょ? だから今日は練習でもあるんだよ」
アマンザが言った。ソルは前髪で目が隠れているので感情がわかりにくいが、うれしそうにも見える。

「えーと、あなたは、なにが、すきですか?」
ソルがたどたどしく話していた。
(ソル様、超かわゆい!)
「今は、ソル様とアマンザ様が大好きです!」
「ほんと? よかった」
「お二人は、兄弟仲が良いんですね」
「最近だよ。最近一緒に遊んでる」
とアマンザ。
ソルにはわからなかったようで、アマンザが通訳すると、ソルはうなずいていた。

「君も、お兄さんと仲よさそうだよね」
アマンザが言った。
「私のお兄さんですか?」
「お兄さんの切り絵、みんな好きだよ」
ララは目をぱちくりさせていた。どうもアーロンのことを言っているようだ。
「私もうれしいです。ラーズ様にも頼まれたそうですよ」
「そうなんだ。実は僕たちもあれから頼んだんだよ」
「楽しみだな」

「お兄さん」のことが気になり、ララはガーベラの話を聞くこともなく、この日は神様二人は帰っていった。
「また来てくださるといいなあ。それにしてもアーロンさんがお兄さん? どういうことだろう。そうだ。お花をお姉様がたにもわけてあげよう」
ララは外で待機していた護衛の二人と侍女の二人とムーラにお花を一本ずつおすそわけをし、残りの半分を王様に献上することにした。そして残りの花を自分の私室に飾った。
(どうしても気になる)
「すいません、二時間ばかり実家に戻っても良いですか? ついでに夕飯も食べてきます」
ララは実家に戻り、
「私のお父さんがカルロス様ってことある?」
と両親にずばり聞いてみた。
「え……どこでそれを聞いたんだい?」
父親はかなりうろたえていた。
「やっぱりそうなの? えーじゃあ、アーロンさんのこと、次からお兄ちゃんって呼んでもいいってこと? お兄ちゃんってあこがれだったんだよねえ。しかもあんなにすごいお兄ちゃんだなんて、最高じゃん」
ララはにやにやしている。
「ララ、あちらはお前が気がついたこと、知らないのかい?」
「まだ知らないんじゃない?」
「じゃあどうやって気がついたんだ?」
「勘?」
「勘ってお前……」
「今度会った時、いきなりパパとか言ってみようかな」
「カルロス様の心臓が止まったらどうするのよ」
母親はカルロスのことを心配していた。
「まあ、お前が恨みに思ってないのはよかったけど、あちらにお前が気がついたって手紙を書くよ」
「ええーせっかくだから驚かせたいんだけど。だめ?」
「だめだよ」
「どうしても? このドッキリは一回しか使えないんだよ?」
「こんなことで驚かしちゃだめだよ」
「つまんないなあ。あ、お母さん、夕食食べていくからよろしく」
「神殿でご馳走が出ているんじゃないの?」
「お母さんの手料理にかなうわけないじゃない」
「この子ったら」
母親はちょっと涙ぐみ、父親はこっそりといなくなり、速攻でカルロスに手紙を書いていたのだった。

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