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模様替え
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「こんにちは。遊びに来たよ」
ようやく澄也が来てくれたと思ったら、男連れだった。さすがにそれは想定外だ。
「ホテルにしていいとは言っていないんだが」
「ふうん。後だしすんの? ダッサ」
一嶌はショックを受けて、なにも言い返せなかった。
「おい、いいのかよ」
「いいのいいの」
ふたりは部屋に入っていく。防音はしっかりしているので、澄也の淫らな声が聞こえてきたりはしない。けれどほかの男に抱かれる想像はできてしまった。一嶌は自室に戻り、一人寂しく抜いた。
自分は世界一なさけないアルファかもしれない。汚れた手のひらを見てますます落ち込んだ。
愛する男がほかの男と交合した部屋など保存しても仕方ないので、まとめてリフォームした。すこしムキになっていたのかもしれない。
「模様替えをしたから、今度こそ気にいるかどうか見てくれ」
「まだ懲りてないの!?」
澄也は呆れたが、興味はあるらしい。数日後、一人でふらりとやってきた。一嶌は浮かれて彼を案内する。
「アジアンにしてみたんだ」
バリ、台北、ソウル。人気のリゾート風だ。すると澄也がつぶやいた。
「和風はないんだ」
「いますぐ畳を用意する!」
「冗談だよ。それよりここで写真撮っていい? すごく映えそう」
「もちろん。なんなら衣装もある」
「え!?」
華やかな民族衣装を差し出すと、澄也はパッと顔を輝かせた。それが一瞬で曇る。
「この服からあんたのニオイがすんだけど」
「ああ。しみつけておいた! 持ち帰ってもらっても構わない」
「要らねえよ。けど……」
文句を言いつつも写真は撮りたいらしい。衣装を着てくれた。
「食事の用意もしようか? どの部屋で食べたい? どうせなら本格的なエスニック料理がいいだろうか」
「俺、カライの苦手」
「わかった。伝えておく。甘いものは?」
「好き」
ほかにもいくつか聞き取って、料理ができるまで撮影会だ。
「どうせならこれで撮ろう」
「なんか本格的なの出てきた!」
澄也は一嶌が持ち出した一眼レフを見て笑い転げた。これはなかなかの好感触ではなかろうか。
澄也は料理も喜んでくれた。撮影はほどほどにして温かいうちに食べてくれたし、無防備に頬を緩めるので、見ていてこっちまで幸せになった。『美しいものを手に入れたい』が、『愛らしいからそばにいて欲しい』に変わったのはこの時からだ。
彼といると心が浮き立つ。彼をもっと知りたい。
「ここで撮った写真、SNSに載せたら困る?」
澄也は律義にそう尋ねた。
「私は困らないが、写真なんて載せて大丈夫なのか」
「んー? 顔は入れてねえし」
「あなたは男を渡り歩いているようだし、特定されたら危険じゃないのか」
「安心しろよ。あんたがぶっちぎって危ない男だよ」
「そ、そうかな」
「褒めてねえし。よし、できた! ――じゃあ、そろそろする?」
澄也が首を傾げると、ピアスがしゃらりと揺れた。たいそう可憐だがなんの話だろうか。一嶌はたいした考えもせず「なにを?」と問い返した。
「俺を呼んだってことはそういうことだろ!? 本当は食事の前のほうがいいんだけど……」
澄也が怪しい手つきで自分の腹をなでるので、一嶌はようやく理解した。
「いや誤解だ! 私はあなたの一時(ひととき)が欲しいわけじゃない。叶うならあなたの、ただ一人になりたいんだ! それには、順序が大事だろう?」
「なに常識ぶってんの? こんな部屋まで用意しておいて。それともほかのオメガも招いてんの?」
「まさか! あなただけだ」
「ふうん……」
ようやく澄也が来てくれたと思ったら、男連れだった。さすがにそれは想定外だ。
「ホテルにしていいとは言っていないんだが」
「ふうん。後だしすんの? ダッサ」
一嶌はショックを受けて、なにも言い返せなかった。
「おい、いいのかよ」
「いいのいいの」
ふたりは部屋に入っていく。防音はしっかりしているので、澄也の淫らな声が聞こえてきたりはしない。けれどほかの男に抱かれる想像はできてしまった。一嶌は自室に戻り、一人寂しく抜いた。
自分は世界一なさけないアルファかもしれない。汚れた手のひらを見てますます落ち込んだ。
愛する男がほかの男と交合した部屋など保存しても仕方ないので、まとめてリフォームした。すこしムキになっていたのかもしれない。
「模様替えをしたから、今度こそ気にいるかどうか見てくれ」
「まだ懲りてないの!?」
澄也は呆れたが、興味はあるらしい。数日後、一人でふらりとやってきた。一嶌は浮かれて彼を案内する。
「アジアンにしてみたんだ」
バリ、台北、ソウル。人気のリゾート風だ。すると澄也がつぶやいた。
「和風はないんだ」
「いますぐ畳を用意する!」
「冗談だよ。それよりここで写真撮っていい? すごく映えそう」
「もちろん。なんなら衣装もある」
「え!?」
華やかな民族衣装を差し出すと、澄也はパッと顔を輝かせた。それが一瞬で曇る。
「この服からあんたのニオイがすんだけど」
「ああ。しみつけておいた! 持ち帰ってもらっても構わない」
「要らねえよ。けど……」
文句を言いつつも写真は撮りたいらしい。衣装を着てくれた。
「食事の用意もしようか? どの部屋で食べたい? どうせなら本格的なエスニック料理がいいだろうか」
「俺、カライの苦手」
「わかった。伝えておく。甘いものは?」
「好き」
ほかにもいくつか聞き取って、料理ができるまで撮影会だ。
「どうせならこれで撮ろう」
「なんか本格的なの出てきた!」
澄也は一嶌が持ち出した一眼レフを見て笑い転げた。これはなかなかの好感触ではなかろうか。
澄也は料理も喜んでくれた。撮影はほどほどにして温かいうちに食べてくれたし、無防備に頬を緩めるので、見ていてこっちまで幸せになった。『美しいものを手に入れたい』が、『愛らしいからそばにいて欲しい』に変わったのはこの時からだ。
彼といると心が浮き立つ。彼をもっと知りたい。
「ここで撮った写真、SNSに載せたら困る?」
澄也は律義にそう尋ねた。
「私は困らないが、写真なんて載せて大丈夫なのか」
「んー? 顔は入れてねえし」
「あなたは男を渡り歩いているようだし、特定されたら危険じゃないのか」
「安心しろよ。あんたがぶっちぎって危ない男だよ」
「そ、そうかな」
「褒めてねえし。よし、できた! ――じゃあ、そろそろする?」
澄也が首を傾げると、ピアスがしゃらりと揺れた。たいそう可憐だがなんの話だろうか。一嶌はたいした考えもせず「なにを?」と問い返した。
「俺を呼んだってことはそういうことだろ!? 本当は食事の前のほうがいいんだけど……」
澄也が怪しい手つきで自分の腹をなでるので、一嶌はようやく理解した。
「いや誤解だ! 私はあなたの一時(ひととき)が欲しいわけじゃない。叶うならあなたの、ただ一人になりたいんだ! それには、順序が大事だろう?」
「なに常識ぶってんの? こんな部屋まで用意しておいて。それともほかのオメガも招いてんの?」
「まさか! あなただけだ」
「ふうん……」
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