世話好きな不死鳥に拾われました!

のは(山端のは)

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「それにしても、ヴェル。モフモフも可愛いけど、その姿も可愛いね」

 ヴェルは視線をそらした。
 以前は『私も可愛いか』などと聞いてきたのに、三、四歳に見える今の姿で言われるのは嫌らしい。
 なんだそれは、余計可愛い。

「服、少し大きいみたいだけど、着替えられないの?」
 ヴェルはちょっと考えて眉を寄せた。
「できないわけではないが、成長が遅くなっては困る。よしておこう」
「ゆっくりでいいのに」

 人間の成長に比べればずいぶん早い。一日で一年分以上大きくなっている。俺としてはもう少しゆっくりヴェルのひな期間を味わいたいところだ。
 だけどヴェルは「ふん」と鼻息を吐いて鳥の姿に戻ってしまった。
 仕方ない、脳内でちょっと想像するだけにとどめよう。

 不埒なことを考えながら、俺はヴェルの頭をなでた。
 不死鳥の姿のときなら、抱き上げても嫌がらない。よくわからないこだわりだ。

 しばらくなでていると、ヴェルは眠ってしまった。
 今のうちに木の実でも集めてこようと思い立ち、こっそりと出口へ向かう。だけど途中で気が付いた。いつの間にかヴェルがくっついてきちゃってる。

 目をショボショボさせていかにも眠たそうなのに、わざわざ引き留めに来たようだ。
 一人で出るなということなのだろう。
 困っていたら、小精霊たちが出かけて行った。

「ヴェル、あの子たちに何か頼んだの?」
 驚いて尋ねると、ヴェルはわずかに首を傾げた。
 
 心配で、巣の中をウロウロしながら帰りを待っていると、ヴェルがくちばしをパカッとあけてあくびをした。
 やがて、小精霊たちが帰ってきた。
 彼らはみっちりくっつきあって雲みたいな形になり、その上に赤い実を乗せていた。
 声は聞こえないはずなのに、俺には彼らが『うんしょうんしょ』と言っているように見えた。

 しかも、ヴェルの前に行ったはいいが、何やら右往左往している。ヴェルはまだ寝てるから、どうやって渡そうか困っているらしい。
 チラッとこっちを見た気がしたので、代わりに俺が受け取る。

「すごいね。ヴェルが喜ぶよ、ありがとう!」

 屈みこんで小精霊たちを褒めていると、ヴェルがのそっと起きだして俺の膝をくちばしでつついた。
「あ、ヴェル。食べる?」

 実はほんのちょっと人型になってくれないかなと期待したのだけど、ヴェルは鳥のまま、俺の手から赤い木の実を食べた。
「ほら、喜んでるよ」
 小精霊に笑いかけたら、ヴェルがまた俺をつついた。
 まさか、こいつらに嫉妬した? いや、単にまだ寄こせってことかな。
 美味しそうに食べているから興味本位で一つ口にしてみたら、俺の舌にはひどく苦かった。慌てて吐き出したら、ヴェルはそれもパクっと食べてしまった。

「ええっ!? ヴェル!」
 驚いちゃったけど、今、鳥だからなあ。



 四日目にもなると、もうヴェルは俺より大きいくらいだった。姿もひならしさが抜け、ほとんど成鳥と変わらないように見える。
 小精霊たちが持ってきてくれた木の実の、最後の一個をヴェルに食べさせる。
 彼は人型のときは俺の世話をしたがったけれど、鳥型のときは大いに甘えてくれる。甘えられることがこんなに嬉しいなんて、今まで知らなかったな。

「そろそろ追加の木の実を取って来ようか?」
 出口に視線をやっただけで、ヴェルはのしかかってきて俺を引き留める。
「もう、ヴェルってば重いよ!」

 笑っていると、ふっと背中が軽くなる。
 不思議に思って振り返ろうとしたところ、熱が俺の横を通り過ぎた。
 羽毛がふわりと髪に変わって、ヴェルは十歳くらいの少年の姿になっていた。炎をまとい、警戒をむき出しにしているのが背中を見ているだけでも分かった。

「ヴェル?」
 洞窟の外で、ガサっと音が聞こえたのはその時だ。
 何か危険なものでも侵入してきたのだろうか。
 ドキッとして胸を押さえる。

 最初に見えたのは手だった。それも、人間の手に見える。

「だ、誰だ!」
「ルアーカ!」

 その声には、すごく聞き覚えがあった。
「え? まさか……イシャズ?」
「ルアーカ、そこにいるんだな!」
「危ないよ、イシャズ!」

 ヴェルの巣は人間が出入りするには危険な高所にある。
 駆け寄って手助けしようとしたら、ヴェルにがっしりと腰を掴まれた。
「ヴェル、離して!」
 こんなに小さいのにすごい力だ。全然動けない。
 
 戸惑っているともう一度俺を呼ぶ声が聞こえて、風にあおられる銀髪と、焦っているような青い瞳が見えた。
 イシャズだ。崖を登ってやってきたのは、本当にイシャズだった。

「それ以上入ってくるな!」
「待ってよヴェル、そこじゃ落ちちゃうよ。岩棚に体を乗せるくらいは許してよ」
「……仕方ないな」

 許しが出たので今度こそ引き上げるのを手伝おうと思ったのだけど、それはダメらしい。
「イシャズ、気を付けて!」

 俺はハラハラしながら、イシャズが登りきるのを見守った。
 ところが彼は、息をつく間もなく叫んだ。

「ルアーカ、そいつから離れろ!」




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