『原作者が消えた世界で婚約破棄されましたが、転生者は負ける気しません』

夢窓(ゆめまど)

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あなたが笑うたび、僕の世界が崩れた

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王宮・会議の間。
重く静かな空気の中、国王が静かに告げた。

「ライゼル。
そなたに王位を継がせることは、もはや不可能と判断した」

「……え?」

一瞬、言葉の意味が入ってこなかった。
父の目は、鋼のように冷たい。

「正妃を裏切り、聖女を優遇し、
挙句、王家の信用を失墜させた。
国家の柱には――なれぬ」

周囲が息を呑む中、ライゼルは膝を折るように座り込んだ。



◆ライゼル、崩れた心の中

(……ミキ……)

(ボクの天使だった)

(……一緒に笑ってくれたじゃないか)
(ボクのこと、好きって言ってくれたじゃないか)
(誰よりも“ボクだけ”を見てくれてると思ってた)
(あんなに……優しかったのに……)

(でも、同じ夜に……)

(ボクの側近と。ふたりと。笑って……甘えて……)

(それでも、ボクは信じたかったんだ)

(ミキちゃんは悪くないって)

(でも、でも、でも)

「ボクの天使に、裏切られた」



◆そして浮かぶ、最悪の疑念

(あれって、台本通りだったのか?)
(“偶然”聖女になって、
“偶然”王子と恋に落ちて、
“偶然”国の寵愛を得て……)

(まさか……)

「……“作者”が、ミキを選んだんじゃない……?」

「“作者”が、ボクを落とすためにミキを使ったんじゃ……?」

そして、ひとつの顔が浮かぶ。

王弟・リヴィウス
――38歳。糖尿病持ち。後継ぎなし。
一見どうでもいい存在。
でも、だからこそ“裏でルートを書き換えるには都合がいい”。

(叔父上……まさか、あの人が、“作者”なのか……?)

(ボクを、最初から舞台に上げておいて――
落とすために)

(天使を遣わしたのか……!?)

レースのドレスを揺らしながら、ミキは窓辺に立っていた。
ゆるく結った髪、愛らしい微笑み、いつも通りの聖女の姿。

そこへ、重い足音。

扉が音を立てて開き、ライゼル王子が立ち尽くしていた。
髪は乱れ、目は虚ろ。
何かを失った男の顔だった。

「……ミキ」

「ライゼル様ぁ♡ 会いに来てくれたの? うれし~!」

「……黙って。今日は、笑わないでくれ」

「……え?」

「……答えてほしい」

ミキが、くるりと振り返る。
その仕草まで、完璧に“聖女”だった。

「なになに、なに言ってるの? どうしたの?」

ライゼルの声が、震えていた。

「……ミキ。
ボクのこと……本当に、愛していたのか?」

一瞬、ミキの表情が曇る。
だがすぐに、いつもの微笑みに戻る。

「……ナニ言ってるの? 愛してるに決まってるじゃん?」

「だってライゼル様が“好き”って言ってくれたから、
 わたし……王妃教育も、全部忘れたの♡」

沈黙。

空気が、急激に冷え込む。

「……え?」

ミキは、無邪気に続けた。

「“わたしだけ見てて”って言ってくれたから、
祝詞とか書類とか、むずかしいことはもう、いいって思ったの♡
愛されてるなら、他に何がいるの?」

ライゼルの顔が、みるみる蒼ざめていく。

「……君は、本当に……知らなかったのか?」

「なにを?」

「“王妃教育”って……
“愛されるだけじゃ務まらない”ってこと、
誰にも、教わらなかったのか?」

ミキは、首をかしげてにっこりと笑った。

「だって……そんなの、“作者”が書いてなかったもん♡」

その一言で――

ライゼルは、完全に、壊れた。

彼の中の“愛”も、“信仰”も、“運命”も。
その全てが、音を立てて崩れ落ちた。

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