『悪役令嬢に仕立て上げられたけど、猫カフェを開いたら辺境伯が通ってきます』

夢窓(ゆめまど)

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ソフィアとバルツアー、結婚するのー?(突然,死にそうになる)

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「ソフィアせんせーと、バルツアーさまって――」

子どもたちのひとりが、ふと思いついたように声を上げた。

「けっこんするのー!?」



\ ごほっ!! /

\ ぶっ!! /

パンを喉に詰まらせたのはバルツアー。
紅茶を思いきり噴いたのはソフィアだった。



バルツアー:「……っ、ごほ、ごほ……っ」
ソフィア:「ちょ、ちょっと待って!? な、なにその質問!?」



「だって~、いっつも一緒にいるし~、パン持ってくるし~、ソフィアせんせー、笑ってるし~」
「それに、“バルさま、だいすきー”って言ったら、バルツアーさま、笑ったー!」
「にやぁ~ってした~!!」

(※大人視点では微動だにしていないつもりでも、子どもは見逃さない)



ロイド:「……ぷっ……ふふ……」
無口な兄が、珍しく肩を揺らして笑いを堪えている。

ソフィア:「ロイド兄まで!? にやにやしないで!」

アラン(真顔で):「……新婚、いいぞ?」

ソフィア:「お兄さまも黙っててくださいー!!」



バルツアーは未だむせながら、手に持ったシナモンロールを見つめていた。

「……詰まりました」

マーサ(おそるおそる):「お、お水お持ちしましょうか……」

シャルル:「にゃー(=バルさま、がんばれ)」

キティ:「にゃっ(=応援してます)」



ソフィアは耳まで真っ赤になって、テーブルに突っ伏した。

「……もう、今日はパンも紅茶も入りません……」



マリーナ:「ふふ♡ じゃあ次はケーキかしら? 甘いの、たくさん用意してるの♡」

アラン:「……そして次は、“婚約のお祝い”メニューだな」

ソフィア:「やめてー!!!!」


ロイドおにいちゃん、結婚まだなの?(子どもたちの無邪気な圧)

パンと紅茶に包まれたアラン邸の午後、
さっきの爆弾発言がようやく落ち着いたと思った矢先。

またしても子どもたちがテーブルの下から顔を出してきた。

「ロイドおにいちゃんと、マーサさんも――けっこんするのー!?」

「いつ? どこで?」

「わたし、ブライスメイドやるー!!」



 ぶっ!!! 
今度はソフィアが思いきり紅茶を吹き出した。

「また!? 飲んでるときにやめてー!!」



マーサ:「えっ、わ、わ、わたし……///」
ロイド:「…………(固まる)」

顔が無表情のまま数秒止まって、耳だけ真っ赤に染まっているロイド。



アラン(大真面目に):「……新婚、いいぞ」
マリーナ:「ねー♡ ふたりも絶対、幸せになれるわよ~♡」
ソフィア:「だから黙ってぇぇ!!」



子どもたちは完全に祝賀モード。

「マーサさん、ドレスは白?」
「ロイドおにいちゃん、タキシードでしょ?」
「猫たちもつれてこうよ!リングキャット!」

キティとシャルル:「にゃ?」



マーサ:「あ、あの、まだ、その、婚約したばかりで……っ」

ロイド(超低音):「……式の準備は……まだ……」

ソフィア(心の声):
(あ、これたぶん“やる気はある”ってことよね!?)



バルツアーが静かに紅茶を置いてぽつり。

「式の招待状が届いたら、シャルル用にも席をください」
シャルル:「にゃん♡」



そしてまた、騒がしく、あたたかい午後が続いていった。

パンと紅茶と、
子どもたちと、
結婚式未定の新婚(予備軍)たち。


『結婚って、いつなんだろう?』

カフェ・シャルルの2階。
いつも通りの朝、シャルルが膝に乗ってきたので、今日も平和だなぁ……と思った、はずだった。

でも――
マリーナとアラン兄さんの新居から届いた招待状の写しを見たとき、
ふと胸の奥が、チクリとした。

 

「結婚って、どのタイミングなのかしら……?」

声に出してみた自分に、ちょっと驚く。

 

アラン兄さんとマリーナさんは、もうすぐ“同棲してて、仲良しで、家族に挨拶して、結婚式も完璧”。

しかも幸せそうで、迷いがない。

 

……一方、私たちは?

バルツアー様と私は、
一緒にお茶を飲んで、
一緒に猫の話をして、
たまにパン屋で偶然を装って待ち合わせて(←偶然ではない)……

 

「……居心地が、良すぎるのよね」

心の中でぽそっと言ってみた。

誰かに背中を押されるでもなく、
無理に形を決めるでもなく。

でも――

「このままじゃ……結婚式、逃しそうじゃない?」

言ってから、真っ赤になった。

 

シャルルが「ニャ」と返事をしたような気がしたけれど、たぶん気のせい。

 

「いやぁぁぁ……!」

ソファに倒れ込みながら、クッションで顔を隠す。

何がいやなのか、よくわからないけど、
ただ一つ、分かっているのは――

 

「私、……うまく言えないのよ、バルツアー様には」

言えない。
でも言いたい。
でも、まだ“私たち”って、何なの?

それを聞くのも、なんだか……恥ずかしい。

 

シャルルが膝に乗って、のどを鳴らした。

静かな朝。
でも、心の中だけは、少しだけ騒がしい。


『プロポーズって……いつだ!?』

辺境伯バルツアーは、
軍務報告書を前にして、完全に“手が止まっていた”。

視線は宙。
頭の中は――

 

(……俺は、ソフィアとちゃんと結婚の話をすべきでは?)

 

最近の出来事を思い返す。
アランとマリーナの結婚。
子どもたちの「ソフィアと結婚しないの?」という無邪気な爆弾発言。

 

(“ああいう流れ”になるものなのか?)

彼は、完全に戸惑っていた。

 

「……待て。まず、プロポーズとは……何が必要なんだ?」

ひとりごとが漏れる。
答えてくれる執事はいない。
当然、猫もいない。

 

「指輪は……用意した。だいぶ前から」
→ まだ渡せていない。

「花束……いるのか? いや、ソフィアは花よりパンのほうが喜ぶ気がするが……」

 

「いや、まてまて、そもそも、日にちだ」

パッと立ち上がる。

「プロポーズに適した日……誕生日か!?
ソフィアの誕生日って、いつだ!?」

慌てて手帳をめくる。
ソフィアの誕生日……不明。過去ログにない。兄たちに聞く?いや恥ずかしい。

「……だめだ、俺、彼女の誕生日、知らない……」

小声で凹む。
高身長が椅子に沈む。執事がいたら気絶していた。

 

「じゃあ、記念日か? ……え、何の? 出会った日?
いや、猫が懐いた日? それともパンを半分こした日?」

「……だめだ。全部、覚えてる。どれも記念日に思えてきた……!」

頭を抱えるバルツアー。
冷静沈着な辺境伯が、恋の悩みで完全に機能停止。

 

そしてふと、外の庭で訓練中のアランの声がなぜか、聞こえる。

「プロポーズってのはな、勢いより“誠意と段取り”だって、俺は思ってる!」

(……段取り……)

その言葉が、刺さる。
けれど“段取り”の中身がわからない。

 

「……みんな、どうしてるんだ!」

バルツアー、吠える。
鳥が飛び立つ。使用人がびくつく。
それでも彼は、ただ真剣だった。

ソフィアを笑わせたい。
照れさせたい。
ちゃんと、大切にしたい。

 

「プロポーズに、ふさわしい日を――探そう」

辺境伯バルツアー、人生最大の戦いに突入である。


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