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夜の枝豆ナイト再び
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夜。
屋敷の台所には、窓際の小さなテーブルに置かれた二人分の夕食だけ。
侍女は通いなので、夜はいない。
本当に、この場にいるのはメイベルとアドレだけだった。
具沢山のスープ。
新鮮な野菜のサラダ。
塩だけで香ばしく焼いた魚。
「……いただきます」
アドレは短く言って、黙々と食べ始めた。
⸻
これまでの伯爵家の食事といえば、買ってきたパンと薄いスープ程度。
残すほどの量すらなく、ただ“空腹をしのぐだけ”だったという。
だからこそ――今、目の前でアドレが最後のひと口まで食べきった光景は、衝撃だった。
⸻
(……えっ、完食!?
というか……もしかして“足りない”ぐらいじゃ……)
メイベルは思わず魚の皿を見つめ、頬を赤らめた。
「……ごちそうさま」
アドレは無表情のまま告げ、グラスの水を口に運ぶ。
それだけなのに――心の奥が妙に温かくなるのを、メイベルは感じていた。
そして、夜更け。
台所の灯りに照らされ、私はまた枝豆を湯がいていた。
ぐつぐつと鍋が沸き、青い香りが立ちのぼる。
「これこれ……! 一日の終わりはやっぱり枝豆とビールですよねぇ~!」
グラスに注がれた冷えた酒をぐびり。
喉を通る感覚に、思わず肩が落ちる。
そして、ついに出てしまった。
「♪~あ~あ~、わ~たしのぉ~運命はぁ~」
(※妙にこぶしの効いた演歌調)
「……またか」
「ひゃっ!?」
振り返れば、戸口にアドレ。
鉄仮面のまま、じっとこちらを見ている。
「ア、アドレ様!? いつからっ!」
「……最初から」
「ひぃぃぃぃ!」
私は顔を真っ赤にして枝豆の皿を抱きしめる。
だが彼はため息ひとつつかず、無言で腰を下ろした。
枝豆をつまみ、酒を注ぎ、自分のグラスと私のグラスを並べる。
「……歌うなら、最後まで歌え」
「へっ!? えぇぇ!? き、聞きたいんですか!?」
「……せっかく始めたのだろう」
私は固まった。
けれど酒の勢いもあり、つい口を開く。
「♪~こ~いはぁ~、なみだのぉ~居酒屋の~れん~♪」
歌い出す私の横で、アドレは無表情のまま枝豆をつまんでいた。
鉄仮面で相槌も拍手もしない。
けれど静かに酒を注ぎ足し、ただ隣に座っている。
──それだけで、不思議と心が温かくなるのだった。
(翌朝)
朝の光の中、私はベッドに突っ伏して転げ回っていた。
「バカバカバカ! またやってしまったぁぁ!」
演歌……枝豆……酒……そして、アドレ様の前で……!
「うう……家にいるときはひとりだし、耐えられなくなると居酒屋に抜け出してたから……。
ああ、もう、なんで婚約者の前で……っ!」
枕を抱きしめて、床をごろごろ転がる。
そのとき。
「……居酒屋?」
「ひぇっ!?」
顔を上げると、戸口にアドレが立っていた。
鉄仮面のまま、淡々とこちらを見下ろしている。
「……どこだ、それは」
「えっ……あの……いや、その……」
「今夜、案内しろ」
「ふええええええええ!?!?」
私はベッドの上でばたばたと手足を振り回す。
まさか、この鉄仮面が……居酒屋に行きたいなんて……!
屋敷の台所には、窓際の小さなテーブルに置かれた二人分の夕食だけ。
侍女は通いなので、夜はいない。
本当に、この場にいるのはメイベルとアドレだけだった。
具沢山のスープ。
新鮮な野菜のサラダ。
塩だけで香ばしく焼いた魚。
「……いただきます」
アドレは短く言って、黙々と食べ始めた。
⸻
これまでの伯爵家の食事といえば、買ってきたパンと薄いスープ程度。
残すほどの量すらなく、ただ“空腹をしのぐだけ”だったという。
だからこそ――今、目の前でアドレが最後のひと口まで食べきった光景は、衝撃だった。
⸻
(……えっ、完食!?
というか……もしかして“足りない”ぐらいじゃ……)
メイベルは思わず魚の皿を見つめ、頬を赤らめた。
「……ごちそうさま」
アドレは無表情のまま告げ、グラスの水を口に運ぶ。
それだけなのに――心の奥が妙に温かくなるのを、メイベルは感じていた。
そして、夜更け。
台所の灯りに照らされ、私はまた枝豆を湯がいていた。
ぐつぐつと鍋が沸き、青い香りが立ちのぼる。
「これこれ……! 一日の終わりはやっぱり枝豆とビールですよねぇ~!」
グラスに注がれた冷えた酒をぐびり。
喉を通る感覚に、思わず肩が落ちる。
そして、ついに出てしまった。
「♪~あ~あ~、わ~たしのぉ~運命はぁ~」
(※妙にこぶしの効いた演歌調)
「……またか」
「ひゃっ!?」
振り返れば、戸口にアドレ。
鉄仮面のまま、じっとこちらを見ている。
「ア、アドレ様!? いつからっ!」
「……最初から」
「ひぃぃぃぃ!」
私は顔を真っ赤にして枝豆の皿を抱きしめる。
だが彼はため息ひとつつかず、無言で腰を下ろした。
枝豆をつまみ、酒を注ぎ、自分のグラスと私のグラスを並べる。
「……歌うなら、最後まで歌え」
「へっ!? えぇぇ!? き、聞きたいんですか!?」
「……せっかく始めたのだろう」
私は固まった。
けれど酒の勢いもあり、つい口を開く。
「♪~こ~いはぁ~、なみだのぉ~居酒屋の~れん~♪」
歌い出す私の横で、アドレは無表情のまま枝豆をつまんでいた。
鉄仮面で相槌も拍手もしない。
けれど静かに酒を注ぎ足し、ただ隣に座っている。
──それだけで、不思議と心が温かくなるのだった。
(翌朝)
朝の光の中、私はベッドに突っ伏して転げ回っていた。
「バカバカバカ! またやってしまったぁぁ!」
演歌……枝豆……酒……そして、アドレ様の前で……!
「うう……家にいるときはひとりだし、耐えられなくなると居酒屋に抜け出してたから……。
ああ、もう、なんで婚約者の前で……っ!」
枕を抱きしめて、床をごろごろ転がる。
そのとき。
「……居酒屋?」
「ひぇっ!?」
顔を上げると、戸口にアドレが立っていた。
鉄仮面のまま、淡々とこちらを見下ろしている。
「……どこだ、それは」
「えっ……あの……いや、その……」
「今夜、案内しろ」
「ふええええええええ!?!?」
私はベッドの上でばたばたと手足を振り回す。
まさか、この鉄仮面が……居酒屋に行きたいなんて……!
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