236 / 464
アサギと黒羽(第5話)
しおりを挟む
ゼルキンス村ー。
綿花栽培で何とか生計を立てている過疎地にありがちな小規模な集落だ。辺り一面の綿花畑と、民家が点在しているという光景は、都会の喧騒に疲れた人にとっては風光明媚な土地にも思えるだろうが、遊びたい盛りの若者たちからしてみれば、ただ退屈なだけの村である。
「黒羽、アンタやっぱりフードは被ったままなんだね・・・」
村の入り口で、カルミナー金色の綺麗な髪をツインテールに結った少女が、黒いローブ姿の少女に声をかける。
「ええ、その方が何かと都合がいいので・・・」
フードを被ったまま、黒羽と呼ばれた黒ずくめの少女が、ちらっとカルミナの方を見上げる。全身黒ずくめで、遠目にはその表情を窺いにくいが、かなり美しい娘だ。特に、その細められた黒い瞳が印象的だった。
「黒羽は可愛いから、素顔を晒すと軟派な奴らに目をつけられるからだろ?」
少し残念そうな顔をしながらではあるが、赤い髪の小柄な少年が、黒羽に代わって補足説明をする。浅井翔ーツメを武器として戦う拳闘士だ。
「まあ、黒羽にちょっかいを出そうとするやつは、オレたちがのしてやるけどな」
今度は、青い髪で長身の少年が白い歯を覗かせ笑みを浮かべながら言った。浅井翔の相棒、朝倉卓だ。棍の使い手で、武術家でもある。
「ああ、はいはい、いきなりもめ事だけは起こさないようにね、二人とも」
呆れ顔になりながら、二人の少年を注意するのは、黒い長髪で眼鏡をかけた、少しお姉さん風な印象を受ける美人ーブラーナと言い、カルミナと主にコンビを組んで活動している。
「ところで、翔・・・アンタ、さっき黒羽が可愛いからって言ったけど」
カルミナが、少し納得がいかなそうな顔つきで翔に向き直った。
「素顔晒してるあたしらにお声がかからなかった場合、あたしらはそんなに可愛くないってことになるわけ?」
半眼になりながら尋ねる。
カルミナもブラーナも、一般的な女性の容貌から比較してみれば美人や美少女の部類に入るだろう。
翔は、多少焦りながら、
「いや、お前らもしょっちゅう声をかけられてるだろ。前は、それでブラーナが切れて軟派野郎どもをボコボコにしただろうが!」
「まあ、そうだな・・・黒羽ばかりではなく、うちのチームの女子はみんなハイレベルだろ」
焦る相棒に、卓は助け舟を出した。
「ていうか、お嬢はナンパされてぇのかよ!!」
「お嬢って言うな!!・・・いや、それはないわね」
きっぱりと否定するカルミナ。何せ、自分には既に心に決めた相手がいるのだ。それ以外の人間など相手にしたくもない。
「ふふふ・・・」
不敵な笑いとともに、ブラーナのメガネがきらっと不気味に光る。
「えっと、あの、ブラーナの姉さん?」
ただならぬブラーナの雰囲気に、冷や汗を流しながら押し黙る男2人。
「わかっているとは思うけど・・・二人とも?」
ブラーナが、翔と卓の肩をガシっと摑まえる。
「うちのカルミナに手を出す輩がいたら、遠慮なくやっちゃっていいからね?」
笑顔がマジで怖い・・・思わず唾を飲み込む二人であった・・・。
「ああもう、ブラーナ、やめて!!ほら、配達行くよ、みんな!!」
ここでブラーナに暴走されても困る・・・5人のリーダー格であるカルミナに促され、本来の業務である配達へと向かうことになった。
ーー
「面妖な・・・あやつら、邪術師と親し気に話しておる・・・」
ゼルキンス村を見下ろす丘の上ー。
アサギは、チーム《ラピュタ》がゼルキンス村の入り口でだべっているのを、嫌悪を交えて確認した。さすがに、会話の詳しい内容までは聞こえないものの、雰囲気は何となくわかる。
「もう少し、あやつらを追跡してみる必要があるな・・・む」
どうやら、5人は何かを届けに村に行くようだ。
「ついでに、この浮遊大陸の状況も確認しておくか」
丘の上から飛び降りると、アサギは体を低くして村の近くまで疾走した。
「待っていろ、邪術師・・・その化けの皮をはがしてやる」
ーー
「・・・!?」
一瞬、悪寒が走ったような感じだった。
黒羽は、今入ってきたばかりの村に入り口の方を見つめた。
・・・殺気か・・・?
自分の能力の特性上、命を狙う者がいてもおかしくはないと、それは常日頃から意識していた。
・・・皆さんにご迷惑はかけられませんね・・・。
この仕事が終わったら、一旦他のみんなと別行動をとった方がよさそうだ。
黒羽は、自身に迫りくる正体不明の相手がいるであろう方角に、鋭いまなざしを向けたー。
綿花栽培で何とか生計を立てている過疎地にありがちな小規模な集落だ。辺り一面の綿花畑と、民家が点在しているという光景は、都会の喧騒に疲れた人にとっては風光明媚な土地にも思えるだろうが、遊びたい盛りの若者たちからしてみれば、ただ退屈なだけの村である。
「黒羽、アンタやっぱりフードは被ったままなんだね・・・」
村の入り口で、カルミナー金色の綺麗な髪をツインテールに結った少女が、黒いローブ姿の少女に声をかける。
「ええ、その方が何かと都合がいいので・・・」
フードを被ったまま、黒羽と呼ばれた黒ずくめの少女が、ちらっとカルミナの方を見上げる。全身黒ずくめで、遠目にはその表情を窺いにくいが、かなり美しい娘だ。特に、その細められた黒い瞳が印象的だった。
「黒羽は可愛いから、素顔を晒すと軟派な奴らに目をつけられるからだろ?」
少し残念そうな顔をしながらではあるが、赤い髪の小柄な少年が、黒羽に代わって補足説明をする。浅井翔ーツメを武器として戦う拳闘士だ。
「まあ、黒羽にちょっかいを出そうとするやつは、オレたちがのしてやるけどな」
今度は、青い髪で長身の少年が白い歯を覗かせ笑みを浮かべながら言った。浅井翔の相棒、朝倉卓だ。棍の使い手で、武術家でもある。
「ああ、はいはい、いきなりもめ事だけは起こさないようにね、二人とも」
呆れ顔になりながら、二人の少年を注意するのは、黒い長髪で眼鏡をかけた、少しお姉さん風な印象を受ける美人ーブラーナと言い、カルミナと主にコンビを組んで活動している。
「ところで、翔・・・アンタ、さっき黒羽が可愛いからって言ったけど」
カルミナが、少し納得がいかなそうな顔つきで翔に向き直った。
「素顔晒してるあたしらにお声がかからなかった場合、あたしらはそんなに可愛くないってことになるわけ?」
半眼になりながら尋ねる。
カルミナもブラーナも、一般的な女性の容貌から比較してみれば美人や美少女の部類に入るだろう。
翔は、多少焦りながら、
「いや、お前らもしょっちゅう声をかけられてるだろ。前は、それでブラーナが切れて軟派野郎どもをボコボコにしただろうが!」
「まあ、そうだな・・・黒羽ばかりではなく、うちのチームの女子はみんなハイレベルだろ」
焦る相棒に、卓は助け舟を出した。
「ていうか、お嬢はナンパされてぇのかよ!!」
「お嬢って言うな!!・・・いや、それはないわね」
きっぱりと否定するカルミナ。何せ、自分には既に心に決めた相手がいるのだ。それ以外の人間など相手にしたくもない。
「ふふふ・・・」
不敵な笑いとともに、ブラーナのメガネがきらっと不気味に光る。
「えっと、あの、ブラーナの姉さん?」
ただならぬブラーナの雰囲気に、冷や汗を流しながら押し黙る男2人。
「わかっているとは思うけど・・・二人とも?」
ブラーナが、翔と卓の肩をガシっと摑まえる。
「うちのカルミナに手を出す輩がいたら、遠慮なくやっちゃっていいからね?」
笑顔がマジで怖い・・・思わず唾を飲み込む二人であった・・・。
「ああもう、ブラーナ、やめて!!ほら、配達行くよ、みんな!!」
ここでブラーナに暴走されても困る・・・5人のリーダー格であるカルミナに促され、本来の業務である配達へと向かうことになった。
ーー
「面妖な・・・あやつら、邪術師と親し気に話しておる・・・」
ゼルキンス村を見下ろす丘の上ー。
アサギは、チーム《ラピュタ》がゼルキンス村の入り口でだべっているのを、嫌悪を交えて確認した。さすがに、会話の詳しい内容までは聞こえないものの、雰囲気は何となくわかる。
「もう少し、あやつらを追跡してみる必要があるな・・・む」
どうやら、5人は何かを届けに村に行くようだ。
「ついでに、この浮遊大陸の状況も確認しておくか」
丘の上から飛び降りると、アサギは体を低くして村の近くまで疾走した。
「待っていろ、邪術師・・・その化けの皮をはがしてやる」
ーー
「・・・!?」
一瞬、悪寒が走ったような感じだった。
黒羽は、今入ってきたばかりの村に入り口の方を見つめた。
・・・殺気か・・・?
自分の能力の特性上、命を狙う者がいてもおかしくはないと、それは常日頃から意識していた。
・・・皆さんにご迷惑はかけられませんね・・・。
この仕事が終わったら、一旦他のみんなと別行動をとった方がよさそうだ。
黒羽は、自身に迫りくる正体不明の相手がいるであろう方角に、鋭いまなざしを向けたー。
0
あなたにおすすめの小説
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~
さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。
全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。
ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。
これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる