237 / 464
アサギと黒羽(第6話)
しおりを挟む
チーム《ラピュタ》は、害蟲駆除の他、現在はラピュタ特急便として、地方都市に配達も行っている。今回はこのゼルキンス村の村長にお届け物がある。
「《ラピュタ特急便》でーす!お届け物です」
村長宅のベルを鳴らし、カルミナとブラーナが荷物を配達する。
ちなみに、他の3名は村長宅の付近に待機していた。荷物を届けるだけならカルミナ達だけで十分だ。あまりぞろぞろ連れ立って行く必要もないだろう。
特に、黒羽に至っては全身黒ずくめで、かなり怪しい。悪い意味で目立つので、やはり後方で控えていてもらうしかない。
「・・・」
先ほど感じた殺気。
黒羽は、近くで暇を持て余している翔と卓の二人に気が付かれないように、そっと黒い羽根を一つだけ飛ばした。魔力を帯びた黒い羽根は、そのまま二人に気づかれずに、ゼルキンス村の入り口付近まで飛来していく。入り口の門付近の木に、黒い羽根が突き刺さった。
「・・・私の勘違いだといいのですが」
たった今、飛ばした黒い羽根は、強い魔力の波動を放つ者の姿を捉え、術者である黒羽にその映像を投影することができるように細工をしてあるものだ。
これで、何者かがこの村付近に接近してくれば、すぐにその正体がわかるはず・・・。
と、その時ー。
「配達終わり~」
カルミナとブラーナが、村長宅から戻ってきた。
「前は男どもが迷惑かけたからね~、ちょっと都合が悪かったわ・・・」
その男どもは、現在暇を持て余してダレていたところだったりする。かつて、この村で翔と卓の二人が村の若い連中とケンカをして結果村長さんにご迷惑をおかけしてしまったことを言っている。
「だあ、その件はもういいだろ・・・もうやらねえから」
「そもそも、今日はやつらを見かけないしな」
そう言えば、かつてこの村でケンカした相手の姿を見かけない。
「なぁんもない村だから、退屈で出て行っちゃったんじゃない?」
カルミナが周囲を軽く見まわし、欠伸を噛み殺しながら言った。
確かに、カルミナの言う通り、一面の綿花畑以外は何もない村である。これなら、遊びたい盛りの年齢層が生活するには耐えられそうもない。まさに過疎地というしかない場所である。
「案外そうかもな・・・オレがこの村の住民だったら、半日と持たねえよ」
翔は盛大に欠伸しながら、近くの綿花畑を見回した。
・・・絶対に自身がある。この村なら、オレは半日と持たない・・・と。
「まあ、私はむしろ、このような場所が好きですが・・・」
人見知りするタイプの黒羽にとっては、確かに過ごしやすい場所かもしれない。
「黒羽はあまり他人と関わりたがらないからな。確かに人が少ない場所の方がいいかもしれん」
尤も、私の場合は、単に人見知りというだけではないのですが・・・と、誰にも聞き取れないくらいの小声で、黒羽はつぶやいたー。
ーー
「邪術師は、まだ村の中か・・・」
アサギは、村の門付近で様子を窺っていた。邪術師は捨て置けないが、その仲間が4名もいるとあっては、いきなり仕掛けるのは得策ではない。今はまだ様子見を決め込んだ方がいいだろう。
「それにしても、何もないところだな、ここは・・・」
アサギの故郷は東方にある。前文明時代の琉球と呼ばれていた国に近い雰囲気の地域で、その中の田舎が出身地だ。故郷も何もない場所だとは思うが、このゼルキンス村は、綿花畑以外は見事に何も見るものがなかった。
「まあ、平和と言えばそうなんだろうが・・・む?」
今、何かの魔力の波動を一瞬感じた・・・気がした。
まさか、あの邪術師の仕業か・・・?
アサギは、注意深く辺りを見回したー。
「《ラピュタ特急便》でーす!お届け物です」
村長宅のベルを鳴らし、カルミナとブラーナが荷物を配達する。
ちなみに、他の3名は村長宅の付近に待機していた。荷物を届けるだけならカルミナ達だけで十分だ。あまりぞろぞろ連れ立って行く必要もないだろう。
特に、黒羽に至っては全身黒ずくめで、かなり怪しい。悪い意味で目立つので、やはり後方で控えていてもらうしかない。
「・・・」
先ほど感じた殺気。
黒羽は、近くで暇を持て余している翔と卓の二人に気が付かれないように、そっと黒い羽根を一つだけ飛ばした。魔力を帯びた黒い羽根は、そのまま二人に気づかれずに、ゼルキンス村の入り口付近まで飛来していく。入り口の門付近の木に、黒い羽根が突き刺さった。
「・・・私の勘違いだといいのですが」
たった今、飛ばした黒い羽根は、強い魔力の波動を放つ者の姿を捉え、術者である黒羽にその映像を投影することができるように細工をしてあるものだ。
これで、何者かがこの村付近に接近してくれば、すぐにその正体がわかるはず・・・。
と、その時ー。
「配達終わり~」
カルミナとブラーナが、村長宅から戻ってきた。
「前は男どもが迷惑かけたからね~、ちょっと都合が悪かったわ・・・」
その男どもは、現在暇を持て余してダレていたところだったりする。かつて、この村で翔と卓の二人が村の若い連中とケンカをして結果村長さんにご迷惑をおかけしてしまったことを言っている。
「だあ、その件はもういいだろ・・・もうやらねえから」
「そもそも、今日はやつらを見かけないしな」
そう言えば、かつてこの村でケンカした相手の姿を見かけない。
「なぁんもない村だから、退屈で出て行っちゃったんじゃない?」
カルミナが周囲を軽く見まわし、欠伸を噛み殺しながら言った。
確かに、カルミナの言う通り、一面の綿花畑以外は何もない村である。これなら、遊びたい盛りの年齢層が生活するには耐えられそうもない。まさに過疎地というしかない場所である。
「案外そうかもな・・・オレがこの村の住民だったら、半日と持たねえよ」
翔は盛大に欠伸しながら、近くの綿花畑を見回した。
・・・絶対に自身がある。この村なら、オレは半日と持たない・・・と。
「まあ、私はむしろ、このような場所が好きですが・・・」
人見知りするタイプの黒羽にとっては、確かに過ごしやすい場所かもしれない。
「黒羽はあまり他人と関わりたがらないからな。確かに人が少ない場所の方がいいかもしれん」
尤も、私の場合は、単に人見知りというだけではないのですが・・・と、誰にも聞き取れないくらいの小声で、黒羽はつぶやいたー。
ーー
「邪術師は、まだ村の中か・・・」
アサギは、村の門付近で様子を窺っていた。邪術師は捨て置けないが、その仲間が4名もいるとあっては、いきなり仕掛けるのは得策ではない。今はまだ様子見を決め込んだ方がいいだろう。
「それにしても、何もないところだな、ここは・・・」
アサギの故郷は東方にある。前文明時代の琉球と呼ばれていた国に近い雰囲気の地域で、その中の田舎が出身地だ。故郷も何もない場所だとは思うが、このゼルキンス村は、綿花畑以外は見事に何も見るものがなかった。
「まあ、平和と言えばそうなんだろうが・・・む?」
今、何かの魔力の波動を一瞬感じた・・・気がした。
まさか、あの邪術師の仕業か・・・?
アサギは、注意深く辺りを見回したー。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる