275 / 364
275 サクッと消します
しおりを挟む
腹黒さんは巨乳金髪悪役令嬢好き。
――と、思いもよらず偽王子(腹黒)が持つ性癖が判明したことで、今後オススメするゲームを決めるためにも頭の中で今回得た極秘情報の分析を進めていたら。
いつの間にか、ゲームのエンドロールを見ていた筈の腹黒さんが私のすぐ目の前に居た。え!?
あ。腹黒さん、もしかして最後まで見ない派ですか?
……ってか、そのお怒りの表情を見るに、もしや全部聞いていましたかね……?
に~っこり。
ひいっ!
笑みを深める腹黒さんに背筋がぞわっとする。
「……貴女という人は凝りませんね。まあいいでしょう。でも、余計なことはサクッと消させていただきますよ」
笑みを浮かべたまま。獲物をなぶる様に、腹黒さんの手がゆ~っくりと私の方へと伸びる。
――どうやら。
腹黒さんの性癖とか、取り扱いに慎重を要する個人情報をサクッと暴いてしまったことで彼の怒りを買ってしまったらしい。
腹黒さんの手が私の前髪をかき分けて。同時に腹黒さんの年齢不詳なイケメン顔がゆっくりと近づいてくる。あ、コレ覚えがありますね。恐らくまた、妙な魔法をかけられるのだろう……と覚悟を決めてとりあえず眼鏡を眺めていたら、ついでにレンズ越しに腹黒さんと目が合った。
「……。」
――と、何を思ったのか腹黒さんが若干方向を変え、頬に彼の唇が触れた。
(え。そっち!? コレわざわざおでこ晒した意味…あっ……た……??)
と、ツッコミを最後まで入れる間もなく腹黒さんに触れられた頬から温かいものが体中に広がって、急激に眠気が襲ってきた。
……ああもう、腹黒さんたら妙なフェイントかけて。今回は助かったと思ったのに、結局は前回と同じじゃん。
……何よねー…………もう……。
襲ってくる眠気にトロトロと微睡みつつも、頭の中で腹黒さんにぶちぶちと不満を溢していたら。
…ニッコリ……。
完全に意識を失う前に。眼鏡越しに柔らかく目を細めて満足そうに微笑む腹黒さんの姿が見えた。
何を考えているのか分からない背中の寒くなるいつもの笑顔じゃなくて。お気に入りキャラに夢中になっていたさっきまでのように、楽しくゲームでもしている……かの…よう、な……。
ああ、ダメ眠い。あれ? この声って――……。
「意趣返しと言いますか。――ま、馬鹿猫と大男ばかりに構って、このわたくしを仲間はずれにしたことに対するちょっとした嫌がらせですね。いい加減、貴女も少しは警戒心を持たないと、この先大変なことになりますよ。これは置き去りにされたわたくしからの忠告です。これで『彼』がどう動くか……見物ですね。じっくりと楽しませていただきましょうか」
クスクスクス……楽しそうに笑う腹黒さんの声とともに眠りについて。起きた時には彼の姿は部屋から消えていた。
どうやら私が眠っている間に、彼はあちらへと帰ったようだ。
何かにつけて鬼畜仕様の腹黒さんだけど、どうやら帰る前に私にオカ研ローブをかけて行ってくれたらしい。そのおかげで適温状態が保たれて、暖房をつけていなくても凍えたりはしなかった。
贅沢を言うなら起きた時ちょっぴり背中が痛かったのでベッドに運んでおいて欲しかったけど、腹黒さんはあまり身体を動かすのが得意ではなさそうだから、物理的に運べなかったのだろう。
――ま、寝ている間に命をサクッとされなかっただけでもありがたいと思わないと。
それにしても……毎回言ってくるけど、あの『サクッと消す』っていったい何を消すというんだろう?
結局、前もよく分からなかったんだよな。唯一判っているのは、魔法で発言を制限されたことくらい?
ただの嫌がらせの脅し――ってこともありえそうだけど、一応忘れていることがないか確認しておくか。
ええと、一緒におでんを食べてギャルゲーをやって。
何故かバッドエンドまっしぐらなあり得ない選択肢ばっか素で選ぼうとするから、一生懸命脳内でツッコミ入れて正規ルートに導いて……あー、うん。大丈夫覚えている。
アレはアレで変なゲームをしているみたいでちょっと楽しかった。
うん。こうして思い返してみても、特に忘れていることはなさそうだ。
良かった。せっかく得た腹黒さんの貴重な情報、覚えているのといないのとでは、今後、王子の召喚生活を続けていくにあたって私の身の安全にも大きく関わってきますからね。
この際、今回学んだ重要そうな情報はしっかりと心に刻みつけておきましょう。
……せーの。
『腹黒さんは巨乳好き』
――よし! 何一つ忘れてないな!!
――と、思いもよらず偽王子(腹黒)が持つ性癖が判明したことで、今後オススメするゲームを決めるためにも頭の中で今回得た極秘情報の分析を進めていたら。
いつの間にか、ゲームのエンドロールを見ていた筈の腹黒さんが私のすぐ目の前に居た。え!?
あ。腹黒さん、もしかして最後まで見ない派ですか?
……ってか、そのお怒りの表情を見るに、もしや全部聞いていましたかね……?
に~っこり。
ひいっ!
笑みを深める腹黒さんに背筋がぞわっとする。
「……貴女という人は凝りませんね。まあいいでしょう。でも、余計なことはサクッと消させていただきますよ」
笑みを浮かべたまま。獲物をなぶる様に、腹黒さんの手がゆ~っくりと私の方へと伸びる。
――どうやら。
腹黒さんの性癖とか、取り扱いに慎重を要する個人情報をサクッと暴いてしまったことで彼の怒りを買ってしまったらしい。
腹黒さんの手が私の前髪をかき分けて。同時に腹黒さんの年齢不詳なイケメン顔がゆっくりと近づいてくる。あ、コレ覚えがありますね。恐らくまた、妙な魔法をかけられるのだろう……と覚悟を決めてとりあえず眼鏡を眺めていたら、ついでにレンズ越しに腹黒さんと目が合った。
「……。」
――と、何を思ったのか腹黒さんが若干方向を変え、頬に彼の唇が触れた。
(え。そっち!? コレわざわざおでこ晒した意味…あっ……た……??)
と、ツッコミを最後まで入れる間もなく腹黒さんに触れられた頬から温かいものが体中に広がって、急激に眠気が襲ってきた。
……ああもう、腹黒さんたら妙なフェイントかけて。今回は助かったと思ったのに、結局は前回と同じじゃん。
……何よねー…………もう……。
襲ってくる眠気にトロトロと微睡みつつも、頭の中で腹黒さんにぶちぶちと不満を溢していたら。
…ニッコリ……。
完全に意識を失う前に。眼鏡越しに柔らかく目を細めて満足そうに微笑む腹黒さんの姿が見えた。
何を考えているのか分からない背中の寒くなるいつもの笑顔じゃなくて。お気に入りキャラに夢中になっていたさっきまでのように、楽しくゲームでもしている……かの…よう、な……。
ああ、ダメ眠い。あれ? この声って――……。
「意趣返しと言いますか。――ま、馬鹿猫と大男ばかりに構って、このわたくしを仲間はずれにしたことに対するちょっとした嫌がらせですね。いい加減、貴女も少しは警戒心を持たないと、この先大変なことになりますよ。これは置き去りにされたわたくしからの忠告です。これで『彼』がどう動くか……見物ですね。じっくりと楽しませていただきましょうか」
クスクスクス……楽しそうに笑う腹黒さんの声とともに眠りについて。起きた時には彼の姿は部屋から消えていた。
どうやら私が眠っている間に、彼はあちらへと帰ったようだ。
何かにつけて鬼畜仕様の腹黒さんだけど、どうやら帰る前に私にオカ研ローブをかけて行ってくれたらしい。そのおかげで適温状態が保たれて、暖房をつけていなくても凍えたりはしなかった。
贅沢を言うなら起きた時ちょっぴり背中が痛かったのでベッドに運んでおいて欲しかったけど、腹黒さんはあまり身体を動かすのが得意ではなさそうだから、物理的に運べなかったのだろう。
――ま、寝ている間に命をサクッとされなかっただけでもありがたいと思わないと。
それにしても……毎回言ってくるけど、あの『サクッと消す』っていったい何を消すというんだろう?
結局、前もよく分からなかったんだよな。唯一判っているのは、魔法で発言を制限されたことくらい?
ただの嫌がらせの脅し――ってこともありえそうだけど、一応忘れていることがないか確認しておくか。
ええと、一緒におでんを食べてギャルゲーをやって。
何故かバッドエンドまっしぐらなあり得ない選択肢ばっか素で選ぼうとするから、一生懸命脳内でツッコミ入れて正規ルートに導いて……あー、うん。大丈夫覚えている。
アレはアレで変なゲームをしているみたいでちょっと楽しかった。
うん。こうして思い返してみても、特に忘れていることはなさそうだ。
良かった。せっかく得た腹黒さんの貴重な情報、覚えているのといないのとでは、今後、王子の召喚生活を続けていくにあたって私の身の安全にも大きく関わってきますからね。
この際、今回学んだ重要そうな情報はしっかりと心に刻みつけておきましょう。
……せーの。
『腹黒さんは巨乳好き』
――よし! 何一つ忘れてないな!!
24
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。
誰も残らなかった物語
悠十
恋愛
アリシアはこの国の王太子の婚約者である。
しかし、彼との間には愛は無く、将来この国を共に治める同士であった。
そんなある日、王太子は愛する人を見付けた。
アリシアはそれを支援するために奔走するが、上手くいかず、とうとう冤罪を掛けられた。
「嗚呼、可哀そうに……」
彼女の最後の呟きは、誰に向けてのものだったのか。
その呟きは、誰に聞かれる事も無く、断頭台の露へと消えた。
冷遇された聖女の結末
菜花
恋愛
異世界を救う聖女だと冷遇された毛利ラナ。けれど魔力慣らしの旅に出た途端に豹変する同行者達。彼らは同行者の一人のセレスティアを称えラナを貶める。知り合いもいない世界で心がすり減っていくラナ。彼女の迎える結末は――。
本編にプラスしていくつかのifルートがある長編。
カクヨムにも同じ作品を投稿しています。
幸せを望まなかった彼女が、最後に手に入れたのは?
みん
恋愛
1人暮らしをしている秘密の多い訳ありヒロインを、イケメンな騎士が、そのヒロインの心を解かしながらジワジワと攻めて囲っていく─みたいな話です。
❋誤字脱字には気を付けてはいますが、あると思います。すみません。
❋独自設定あります。
❋他視点の話もあります。
明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)
松丹子
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。
平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり……
恋愛、家族愛、友情、部活に進路……
緩やかでほんのり甘い青春模様。
*関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…)
★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。
*関連作品
『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点)
『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)
上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。
(以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)
婚約破棄ですか? 優しい幼馴染がいるので構いませんよ
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のアリスは婚約者のグリンデル侯爵から婚約破棄を言い渡された。
悲しみに暮れるはずの彼女だったが問題はないようだ。
アリスには優しい幼馴染である、大公殿下がいたのだから。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる