【完結】悪役令嬢と自称ヒロインが召喚されてきたけど自称ヒロインの評判がとんでもなく悪い

堀 和三盆

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本編

2 悪役令嬢の世話係

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 自称ヒロインはとにかく評判が悪かった。それはそうだろう。恋人や彼女がいても顔さえ良ければ関係なく引っ付いてくる、そんな習性を持った女が人気者な訳がない。最初こそ愛らしい外見を活かし、クラスのイケメンランキングの上位順に親密になって何組ものカップルを破局に追い込んでいたが、あっという間に孤立した。そんな中、クラスで浮きまくっている姿が忍びなかったのか、恋愛事に興味のない面倒見の良い女子のクラス委員長があれこれ世話をしていたので、必然的に、生徒会長である俺が残った悪役令嬢の方の面倒を見ることになってしまった。

 悪役令嬢は真面目だ。寮の同室の生徒によると、最初こそ着替えも一人でできずに苦労していたようだが、あっと言う間にこちらの生活に馴染んでくれた。掃除の時間も、嫌がらずにやってくれる。隙あらばサボろうとするクラスのギャルどもにも見習って欲しい。

 ただ、この悪役令嬢にも問題はある。授業が終わった後、その日分からなかったところを教室で教えているのだが、育ちがいい悪役令嬢は異性と二人きりになるのを嫌がる。だから、常に廊下側のドアを開けている状態になるのだ。

 そろそろ冬。寒い。

 放課後は暖房も切られてしまうのでエネルギー効率が悪いことこの上ない。とはいえ習慣というものもあるだろう。無理強いするのもよろしくないので、そこは彼女に合わせて寒さ対策に膝掛けを持参することにした。幸い、うちの親は商品に付いてくるおまけや福袋が大好きで、家には使われる予定のない新品のフリース素材の膝掛けが何枚も転がっている。

 俺は持参した膝掛けを広げて足にかけた。うん。暖かい。

「あら、『かわいい』……で合ってますわよね? ふふ、暖かそうですわ」

 可愛らしい絵柄の膝掛けを見て、覚えたての言葉を使う悪役令嬢。いつも通りの完璧な穏やかな笑顔。

「うん。はい、こっちが君の分」
「え」

 絵柄の好き嫌いがあるかとも思ったが、かわいいというからには問題ないだろう。色違いの膝掛けを悪役令嬢に渡すと固まった。

「あ。大丈夫だよ、未使用だから」
「あ、いえその……ありがとうございます」

 袋から膝掛けを出して、俺と同じように足にかける悪役令嬢。心なし、ほっ……とした顔になった気がする。ズボンの俺が寒かったのだ。やはり彼女も今まで無理していたのだろう。自分だけ温まるのもなんだからと、適当に彼女の分も持ってきて良かった。

 勉強後。悪役令嬢が「ありがとうざいました」と、膝掛けを返そうとしてきたので、つい見返して止まってしまった。

「あ、申し訳ございません。洗ってお返しするのが礼儀ですわよね」

「いや、それ君の分って言ったじゃん。あげるために持ってきたんだよ。良かったらそのまま使って」

「あっ……そ、そうでしたの。その……ありがとうございます」

 そう言って、畳んだ膝掛けを両手できゅっと胸のところで抱えた悪役令嬢はいつも通りの笑顔を浮かべたが……心なしか、いつもより少し赤くなっている気がした。



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