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リリーside
14 お腹の子供に祝福を
しおりを挟むゲームの世界へ戻ってからはシナリオ通りだった。数日後には魔物の大規模な襲撃が始まって、第一王子と共に旅立った。
レベルに不安があったため最短で攻略をすすめていたが、その戦闘の最中にもみるみるレベルが上がっていき、戦いに余裕が出てきた。
そうよ。悪役令嬢と同レベルまでしか上げられなかったとはいえ、既に上限近かった悪役令嬢と違い、ヒロインである自分は周回プレイに対応しているせいか上限値がない。流石にゲームとは違い死んだらそこまでだろうけど、レベルはどこまでも上がるのだ。
少し余裕も出てきたし、ラストイベント中にある恋愛イベントを楽しむのもありかもしれない。戦闘途中、近隣の街に立ち寄ると、恋人たちのための祭り「妖精祭り」があるのだ。暗闇の中、妖精が恋人たちに祝福を与えるために近づき、想いの分だけ二人を照らす――ロマンチックなイベントだ。
ゲームでは過酷な戦いの中、二人してお忍びで出掛けた祭りで妖精の祝福を受け光り輝き、「これじゃバレバレだな」と気持ちのことか、お忍びのことか明言せずに真っ赤になっている王子を堪能できる。
物語終盤の最後の恋愛イベントだ。好感度上げに必要な友情度や信頼度を大幅に補えるので、最後の好感度上げとしてぜひとも参加しておきたい。最近は忙しすぎたせいか少し吐き気や食欲不振などの体調不良をおこすようになっている。少しのんびりするのもありだろう。
戦闘を早めに切り上げて近くの村に移動すると、男女二人の村人が近寄ってきた。
「聖女様、もうすぐ初めての子供が産まれるんです。どうか、祝福を授けてください」
祝福は神官と聖女が使える魔法だ。幸運度を上げられるので安産につながる。地方への討伐イベントではこういったことは見慣れた光景だった。私はあまり討伐には行けなかったから今回が初めてだけど、やり方は知ってる。
魔法をかけるために生命反応を探す。母親と――あった。お腹の子供。
請われた通り祝福を授けると、二人はお互いを気遣いながら帰って行った。
「祝福をいただけて安心したわ。それにもう、つわりもおさまっているから大丈夫。あなたも無理しないで頂戴」
ややふっくらとしたお腹を触りながら去っていく母親の幸せそうな声が聞こえ――身を震わせた。
食欲不振。吐き気。それに何より――こちらに戻って来てから、来るべきものが来ていない。
まさか……妊娠?
不安になっても、科学文明の発展していないこの世界じゃドラッグストアもなければ妊娠検査薬もない。医師の診察を受ければ簡単だろうが、聖女である自分がそんなことを頼めば大騒ぎになる。
そうだ、祝福魔法――。
生命反応を頼りにかけるこの魔法なら、妊娠検査薬がなくとも判別できる。そう思い、自分自身に祝福魔法を発動させれば――。
小さな小さな生命が、お腹の中に宿っていた。
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