【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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21 終わりの始まり

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「……っ、すまないヴィクトリア! 私は、何故あのような言動を取ってしまったのか――」


 毎夜。身体にまとわりつく甘い匂いに引き寄せられるようにロイエは短い悪夢を見る。

 終わりの見えない悪夢は更なる悪夢を呼び、ようやく起きた時には夢の内容は全て、過去に現実に起こったことだと気付く。そこからロイエにとっての本当の悪夢が始まるのだ。

 今やロイエの爽やかな朝は、果てしない後悔と焦りと共に訪れるようになっていた。



 夢で見たあの清楚なドレスはヴィクトリアの母親が着ていたものだ。ヴィクトリアと共に幼い時を過ごしたロイエの記憶の中にも、当然それは色濃く残っている――――筈だった。

 実際、ロイエがヴィクトリアの母親である侯爵夫人を思い出すときは、必ずそのドレスを身に付けているくらいだ。


(――――それなのにっ)


 あの時は何故かそれに気づかなかった。運命の番を手に入れた事に浮かれていた。


 番を騙る女が纏うサイズの合っていない清楚なそれは、豊満な肉体から漂う色香を隠しきれないどころかむしろ増幅して感じさせ、ロイエの中にある何かを大きく刺激した。

 その夜は興奮して女にドレスを着せたまま陸み合い何度も果てた。

 ロイエはヴィクトリアがあのドレスを宝物のように大切にしているのを知っていたはずなのに……。

 あの時のロイエはヴィクトリアが大切にしている形見のドレスを、快楽を追求する道具のように使い捨てることになんの疑問も抱かなかった。

 後になってそれを見たヴィクトリアが何を思うかなど考えもしなかった。


 償うことの出来ない後悔は留まることを知らず、次から次へと押し寄せ、ロイエの精神を苛み続ける。


 悪夢の中で日毎に食欲の無くなっていくヴィクトリア。


 愛している妻の前で番を膝に座らせて給餌を行いながら、その様子を見せつけることに何の罪悪感も抱かなかった。

 どうしてロイエは愛する妻に対し、あそこまで残酷なことが出来たのか。

 それだけじゃない。


 何か、何かとてつもなく重要なことをロイエは忘れている気がする。

 夜毎襲ってくる確かな覚えのある悪夢に思い出せそうな。それ以上思い出すのは怖いような。


 どこか焦りを伴うその感情は常にロイエに付きまとった。




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