【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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22 謝罪と微笑

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 この日は悪夢の連鎖が特に酷かった。


 増えていくばかりの己の罪。それに耐えられなくなったロイエはとにかくその罪悪感から逃れたくて、ヴィクトリアに謝罪した。


「ヴィクトリア本当に、本当にごめん……。あれは、君の大切なドレスだったのに、私はそれを――。…それだけじゃない。君の心を抉り続け、ストレスで食事が摂れなくなるほどまでに君を追い詰めた。私のもとに嫁いできてくれた日に君の決意を聞いていたのに。君に誓ったのに。改めて、君に誓うよ。今度こそ裏切らない。だから――」

 震える声で。絞り出されるように少しずつ紡がれるロイエの言葉に、ヴィクトリアはじっと耳を傾けている。そのことに勇気を貰い、ロイエは許しを求める。


「だからどうか――この先も君と二人でこの帝国を支えていくことを許して欲しい」

「――いいえ許さないわ」


 ヒュ……。


 意識がハッキリとしたあの日から。罪を犯したロイエに対し、責めることなくずっと慈愛のこもった笑顔を見せ続けてくれたヴィクトリア。その、いつもと同じ微笑から発せられる底冷えするような言葉にロイエの喉が鳴る。

 途端にガラガラと、自分の作りあげた世界が壊れていく感覚がしてロイエの意識が遠くなる。


 ダメだ…喪う…喪えない……
 ……何…のため、に……

 ……私……は………………

 …………
 ……


 しかし――。

 完全にその世界が崩壊する前に、いつだって悪夢から救い上げてくれる温かい手がそっとロイエの震える手を掴み、ヴィクトリアの薄い腹へと誘導する。


 そして――――。


「……『二人で』じゃなくて。『家族で』でしょ?」




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