【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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番外編

1 胸騒ぎと哀しき魔物(ヴィクトリア視点)

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 天気が良く、とても気持ちの良い朝だった。

 空は青く海は凪いで、島は平和そのもの。
 それなのに、ヴィクトリアは朝から妙な胸騒ぎがして仕方がなかった

 そんなヴィクトリアの不安な気持ちを後押しするように。島民から魔物の目撃情報があり、夫への討伐依頼が入る。


 しかも、目撃されたのは邪竜。本来こんな海の真ん中にいるような魔物ではないはずなのに。


 邪竜は永遠に番を喪った竜の暴走だとか、叶わぬ愛に惑った妄執が凝り固まって産まれた魔物だとか色々なことが言われているが、その発生メカニズムはいまだ謎だ。

 竜を祖とする竜人が多いドラゴディス帝国周辺には伝承としていくつか残っているが出現例自体が少なく、ヴィクトリアも皇太子妃教育中に文献で読んだだけで実際に見たことはない。

 けれど、目撃した者の証言から得た情報からはそうとしか思えない。聞く者の涙を誘う、胸を引き裂かれるような咆哮は文献に残る哀しき魔物の特徴だ。

 討伐できないことはないが、目撃場所である海上での戦闘は帝国出身者にはいささか分が悪い。ドラゴディス帝国はそのほとんどが内陸に位置している為、泳げぬ者が多いのだ。
 それが、貴族ともなれば尚のこと。

 それに――。


 島の周囲をぐるりと取り囲むように感じる嫌な魔力。

 絶対にそんな筈はないのに、何故か――ヴィクトリアが全てを喪ったあの日のことを思い出す。


 かといって、この島を統治する者として責任を放棄する訳にもいかないし、ヴィクトリアが不安だからと言って島民と共に討伐に向かう夫を引き止めるわけにもいかない。

 ヴィクトリアに出来るのは、いつも通りに書類仕事をしながら皆の無事を祈り、夫の帰りを待つことだけだ。




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