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3 情報収集
しおりを挟むおそらく、こういったことは国の恥になると考えているのだろう。周囲の獣人に彼女のことを聞いてものらりくらりとはぐらかされるばかりで、中々詳しい事情を教えてもらえなかった。
しかし、デュナミスが人間であることや外交官として赴任してきたばかりでこの国の事情にあまり詳しくないことを知ると、そのうちの一人が男性陣の交流に使われている休憩室の端っこで少しだけ教えてくれた。
ボロボロのドレスを着た女性はパルフォア・アルテサーノ伯爵夫人。夫のヴィグルー・アルテサーノ伯爵はかなりのやり手で、大陸中に知れ渡るような大商会をいくつも経営しているらしい。
その仕事ぶりはお隣の竜人国からも高く評価されていて、彼はつい最近、妻を迎えたばかり――と、そこまで聞いたところで伯爵本人が部屋に姿を現して、情報提供者だった公爵家の末っ子は逃げるようにその場から姿を消した。
デュナミス自身、祖国では貴族階級の出身だから、身分の違いについては痛いほど理解している。
伯爵家と公爵家。それほどの爵位差があってこの反応ということは、それほど気を遣わねばいけない相手ということだろうか。
人間のデュナミスでは会話の内容までは聞き取れないが、そこかしこからアルテサーノ伯爵の名前が聞こえてくるので、伯爵本人で間違いなさそうだ。
外交官という仕事柄、さりげなく情報を集める訓練は受けている。気付かれないように注意しながら観察をすれば、誰もが整った容姿をしている中でも彼は頭一つ抜きん出ていて、周囲を委縮させてしまうほどの圧倒的な存在感を放っていた。
竜人は容姿が整っている者が多いと聞くから、もしかしたら彼は誰よりもその血が濃いのかもしれない。
そんな伯爵は何をするでもなく鋭い目で広い休憩室をぐるりと見回すと、すぐにその場から姿を消した。途端に張り詰めていた空気が緩んで、部屋には元の活気が戻ってくる。
どうやら周囲の人間もアルテサーノ伯爵に対してはかなり神経質になっているようだ。もしかしたら、あれほど分かりやすい虐待状態にある伯爵夫人に救いの手が届かないのも、そのあたりのことが関係しているのだろうか。
彼が何をしにここへ来たのかは分からないが、今、この瞬間も伯爵夫人はたった一人であの悪意の中に取り残されているのだ。
それを思うと気の毒でならない。
とにかく、デュナミスは先ほどの情報提供者からもう一度話を聞こうと夜会会場に戻って彼の姿を探したが、既に帰ってしまったのか見つけることはできなかった。
結局、この日はほとんど情報を得ることができなかったが、名前を知ったことで更に彼女への同情心が湧いた。
名前が分かって彼女を一人の個人として認識したことも大きいが――これについては外交官になる前の、デュナミス自身の境遇も深く関わっている。
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