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しおりを挟む男爵令嬢でディリッパの再従妹の方は、クオーラのようなことはなかった。何があったかを知ってすぐに帰国させて、彼女をすぐに修道院にいれたようだ。
ディリッパは、面倒を頼まれていたのに申し訳ないと彼女の両親に謝罪していたようだが、彼女の両親は……。
「面倒も何も語学は堪能だから、面倒を見なくとも問題なかったはずだが?」
「え?」
どうやら、従姉を頼まれていたため、再従妹のこともそうしなければならないとディリッパは勝手に思い込んだようだ。
それを再従妹は利用して、ディリッパと一緒にいたようだ。言葉に疎いとなれば、みんなが優しくしてくれることに味をしめたようでもあった。
あちらから、すっ飛んできた両親は、公爵夫妻とヴィリディアンに丁寧に詫びてくれ、ヴィリディアンがディリッパのことを気にしていると……。
「ヴィリディアン嬢は、優しいのだな」
「ディリッパも、自分が見ていて申し訳ないと言ってくれたのよ。面倒なんてみなくても、語学は堪能だから問題ないのに。まさか、わからないふりをしているとは思わなかったわ」
シャルマ伯爵一家のあとのこともあり、まともな人たちに驚いてしまった。
それこそ、留学させたのも、その辺を直してほしかったようだ。
それに知り合いの婚約が続いて、自分に婚約者ができないことに心が荒んでしまったようで、羨んで婚約者ができるように努力してくれたら、親としては婚約者を見つけようと頑張れるところだが
あの令嬢は、知り合いの婚約をどうにかして駄目にしようとしたようだ。
知り合いもいなければ、流石にしないと思っていたら、クオーラの言い分に共感してこんなことになったようだ。
それを聞いてヴィリディアンは、遠い目をしてしまった。
ハーサン公爵夫妻も、何とも言えない顔をしていた。
そんなのを今度は修道院にいれたのだ。そこが、困ることになるだけのような気がしてならなかったが、目の前の良識人に見える人たちにはその未来が見えていないようだ。
きっと、これだとほとぼりが冷めたら、娘を修道院から呼び戻して同じことを繰り返しそうだ。
修道院の方から、しばらくしたらどうにかしてくれと言われるのではなかろうか。
まぁ、そんなことは簡単に想像ついたが、ヴィリディアンは何も気づかなかったふりをしてやり過ごした。関わりたくないと思ったのは、ハーサン公爵も同じだった。
だが、ハーサン公爵夫人は……。
「あら、修道院なら、とても良いところを知っていますわ」
「?」
ヴィリディアンは、養母がにっこりと輝かんばかりの笑顔で男爵夫妻にすすめたのは、入ったら早々に出て来られないようなところだった。
「何なら、紹介しましょうか?」
「いいのですか?」
「えぇ、とても良いところですから、安心して娘さんを面倒見てくれますよ」
男爵夫妻は、ハーサン公爵夫人自らの紹介に嬉しそうにしていた。
その横にいるハーサン公爵とヴィリディアンは、もう二度と修道院から出て来れないようにしようとしていることに気づいたが、何食わぬ顔をしておいた。
こうして、男爵夫妻は嬉しそうに帰って行くのを見送った。
あちらも、ほとぼりが過ぎたら娘を修道院から出そうとしても、それができないことに気づいても、ハーサン公爵家に何か言ってくることはなかった。
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