親しい友達が、みんな幼なじみみたいな厄介さをしっかり持っていたようです。私の安らげる場所は、あの方の側しかなくなりました

珠宮さくら

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男爵夫妻が嬉しそうに帰って行った後のことだ。

いつもと変わらないかのように夕食をみんなでとってデザートを食べていた。


「シャルマ伯爵一家より、まずい連中だったのか?」
「……どうでしょう。どちらがと比べると微妙ですが、どちらも関わったら駄目なのはわかりました」
「……疲れてるのは、今回の方が酷そうだが?」
「まともそうに見えたギャップにやられました」


公爵家の跡継ぎの子息であるラジェス・ハーサンは、父がげんなりしているのを見て苦笑しながら、母が輝かんばかりの笑顔でいるのには一切触れようとしなかった。

この笑顔が機嫌がいいからではないことをこの息子はよくわかっているようだ。何があったのかをそこだけ聞こうとしなかった。流石である。

ヴィリディアンがギャップにやられたのは、男爵夫妻だけではないが、そこは言わなかった。言ったら、今後に差し障りがある。絶対にうっかりなんてできない。

だが、母親のちょっとした変化には目ざといが、義妹となったヴィリディアンの変化には疎いようだ。


「あー、ヴィリディアン。疲れているよな」
「いえ、大丈夫です」
「だが」
「なら、彼女に直接勉強を教えてもらっては?」
「っ、いや、それは、その、もう少しできてからがいい」
「私も、全然ですよ。一緒に習う方が断然いいと思いますけど」
「一緒に……? そうか。それなら……」


ラジェスが頑張っている理由は、ディリッパの従姉に一目惚れしたらしく、会話をするにも彼女の母国語が全くわからないらしく、ヴィリディアンは義兄に頼られていた。

そのことは、ディリッパにも伝えてある。ラジェスには内緒にしているが、彼の従姉もラジェスに一目惚れしているらしく、向こうはヴィリディアンにラジェスを紹介してもらえないかと頼もうとしていたのだ。

そのため、ディリッパといきなり2人っきりにするのは無理だろうからとヴィリディアンも入って勉強するという方向にして、そのうち彼女からこちらの言葉をラジェスに教えてもらう方向にディリッパが促すことになっている。

それを悟られずに動こうとしているが、ハーサン公爵夫妻にはバレている気がする。

ヴィリディアンが、チラッと養父母を見るとにこにこしていた。養母の方は、さっきまでと打って変わって穏やかにしていて、微笑ましそうにしているから、兄妹仲がいいと思っているのかもしれない。


「ふふっ、どちらが年上かわからないわね」
「……」
「本当だな。あぁしていると心配にもなるな」
「……」


バレていたようだ。部屋を出て移動しようとしたヴィリディアンは、ピタリと足を止めてしまった。


「ヴィリディアン? どうした?」
「いえ、何でもないです」


ラジェスは、不思議そうにしていて、両親の微笑ましそうな顔にも全く気づいていなかった。

……うん。このくらいの方が、あの令嬢には丁度よいはずだ。

そんなことをヴィリディアンが思っていることにも、ラジェスが気づくことはなかった。彼は、それどころではなかったようだ。

ハーサン公爵家の跡継ぎとしては、ちょっと頼りない気がするし、義兄としても頼りない気がするが、これからだろう。


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