親しい友達が、みんな幼なじみみたいな厄介さをしっかり持っていたようです。私の安らげる場所は、あの方の側しかなくなりました

珠宮さくら

文字の大きさ
7 / 16

しおりを挟む

「凄くお似合いですね」
「そうだな」
「……」


上から、ディリッパの婚約者でヴィリディアンの友達。ディリッパ、そしてヴィリディアンだ。

ヴィリディアンは、ディリッパより疲れていた。話す気力もないほど、疲れていた。

そんな3人が見てるのは、ラジェスと婚約したディリッパの従姉だ。幸せいっぱいにしている。

お似合いなのは、ヴィリディアンもその通りだと思っている。そこに不満はない。

だが、そうなるまでが大変だった。

何が大変かと言うと……。


「ここはですね」
「……」
「あ、ここか?」
「……」


3人で勉強するはずだったが、ラジェスとディリッパの従姉が2人で話そうとしないため、ヴィリディアンが間に入ることになり、これでは駄目だとディリッパもまじってもらって、4人で勉強しても変わらなかった。変わらないどころか、益々酷くなった。

それを見かねたというか。わかってやったのかはわからないが、ヴィリディアンとディリッパのそれぞれの婚約者が……。


「忙しいのはわかるが、私のことも気にしてくれるか?」

「……お忙しいのはわかりますが、たまには2人で出かけたいです」


そんなことを言ってきたことで、ヴィリディアンたちも婚約者と過ごしたいと思い、ラジェスたちにそれを伝えるとあっさりと2人は話すようになった。


「……」
「私たちの苦労は何だったんだろうか」


ディリッパが、ぽつりとそんなことを言った。ヴィリディアンは、苦笑した。同じことを思っていたが、言葉にする元気がなかった。


「……世話をやきすぎたみたいですね」
「そうか。構いすぎるのもよくなかったわけだな」


そこから、ディリッパとヴィリディアンはお互いの婚約者と楽しく過ごすはずだった。

できたのは、ディリッパだけだった。羨ましいと思う余裕は、ヴィリディアンにはなかった。

ヴィリディアンの方は婚約者の王子のアビシェクが忙しくなってしまい、2人で過ごすのが難しくなってしまっていた。

それだけなら、まだ良かった。

ダブラル子爵家の養子になったラジェスの弟が、養子先に不満がうずまき始めたようで、婚約して幸せそうにしているラジェスたちの邪魔をしようとしたのだ。

元公爵家の三男で、今はヴィリディアンの実の両親である子爵の跡継ぎになっているカマル・ダブラルは、兄が妬ましく思えてならないようだ。他に八つ当たりできる者がいなかったのだろう。

どっかで聞いたことがあるようなことをしようとしていて、ヴィリディアンはそんな子息がラジェスたちの邪魔をさせまいと奮闘していた。

2人をくっつけようとしている時より疲れた。

そして、この日もカマルはやって来た。だが、ヴィリディアンは、この日、今まで以上にくたびれていた。朝から頭痛がしていて、身体も怠かった。

そのため、カマルが2人に近づくのを許してしまったのだが……。


「私の婚約者に何を言うんだ!」
「っ、」


ヴィリディアンは、声を荒げるラジェスの声に反応していた。そちらを見るとカマルがいた。

慌てて、そちらに行こうとするとディリッパに止められた。


「今はやめておけ」
「……」
「ラジェスが、義理の妹に守られているように見える」


ヴィリディアンは、周りを見た。これまでは、カマルとヴィリディアンが話しているだけだったが、今回は違う。

それに気づかなかったことにヴィリディアンは、相当疲れているようだ。

そして、どうなるのかとハラハラして見ていると………。


「元公爵子息……?」
「そうだ!」
「そうですか。ご養子になったのもカウントされるのですね。なら、私は元王女です」
「は?」
「え?」
「私も、養子になったんです。今は侯爵令嬢ですが、前は王女でした」


ヴィリディアンは、それが聞こえてディリッパを見た。彼の婚約者も、びっくりして見ていた。


「あー、従姉の母親が亡くなって、王女でいるより養子になった方が幸せだろうとなったんだ」


そんなことを聞いて、ヴィリディアンたちは再び、カマルたちを見た。


「で?」
「へ?」
「現在、子爵子息のあなたが、公爵子息のラジェス様と侯爵令嬢である私に言うことは?」
「っ、あ、いや、その……」
「あなたがすべきは、謝罪以外ないと思いますが?」
「っ、」


カマルは、それを聞いて慌てて謝ろうとしたが、言われてするような方として、苦情と抗議を家から正式にしてもらうと彼女は言った。

それにカマルは顔を青くしてラジェスに縋っていたが、彼も許す気はないと冷めた目を向けていた。


「……」
「世話をやきすぎていたのではないか?」
「そう、みたいですね」


ヴィリディアンは、それを見てホッとした顔をしたが、その顔色は良くなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘からこうして婚約破棄は成された

桜梅花 空木
恋愛
自分だったらこうするなぁと。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

婚約破棄した王子が見初めた男爵令嬢に王妃教育をさせる様です

Mr.後困る
恋愛
婚約破棄したハワード王子は新しく見初めたメイ男爵令嬢に 王妃教育を施す様に自らの母に頼むのだが・・・

悪役令嬢は断罪されない

竜鳴躍
恋愛
卒業パーティの日。 王太子マクシミリアン=フォン=レッドキングダムは、婚約者である公爵令嬢のミレニア=ブルー=メロディア公爵令嬢の前に立つ。 私は、ミレニア様とお友達の地味で平凡な伯爵令嬢。ミレニアさまが悪役令嬢ですって?ひどいわ、ミレニアさまはそんな方ではないのに!! だが彼は、悪役令嬢を断罪ーーーーーーーーーーしなかった。 おや?王太子と悪役令嬢の様子がおかしいようです。 2021.8.14 順位が上がってきて驚いでいます。うれしいです。ありがとうございます! →続編作りました。ミレニアと騎士団長の娘と王太子とマリーの息子のお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/mypage/content/detail/114529751 →王太子とマリーの息子とミレニアと騎士団長の娘の話 https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/449536459

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。

まりぃべる
恋愛
私は公爵令嬢。 この国の高位貴族であるのだから身分に相応しい振る舞いをしないとね。 ちゃんと立場を理解できていない人には、私が教えて差し上げませんと。 え?口うるさい?婚約破棄!? そうですか…では私は修道院に行って皆様から離れますからどうぞお幸せに。 ☆ あくまでもまりぃべるの世界観です。王道のお話がお好みの方は、合わないかと思われますので、そこのところ理解いただき読んでいただけると幸いです。 ☆★ 全21話です。 出来上がってますので随時更新していきます。 途中、区切れず長い話もあってすみません。 読んで下さるとうれしいです。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

処理中です...